サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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マシュと絶花

「……はぁ……はぁ……」

 

「……っ…けほっ……」

 

激しい模擬戦が終わり、採石場には二人の荒い息遣いだけが響いていた。

 

マシュと絶花は互いに数メートル離れた場所で仰向けに倒れている。

 

全力を出し切った結果だった。

 

マシュは夕焼けに染まる空を見上げながら、静かに息を整えていた。

 

(やはり……この世界での私は完全ではない……)

 

カルデアでのマシュ・キリエライトの強さと比べれば明らかに弱体化している、

 

さらに英霊としての本来の力も完全には発揮できていない。

 

(それでも……)

 

マシュは唇を噛みしめる。

 

(それでも、私は絶花さんに勝てなかった……)

 

太郎が絶賛するその強さを肌で感じた。彼女の剣技は流麗かつ力強く、二刀流による攻撃と防御の切り替えが絶妙だった。そして何より、その瞳に宿る闘志。武蔵の血を引く剣士としての誇りと、太郎への深い想いが彼女を強くしていた。

 

(先輩が語っていた通りの方だった……)

 

マシュの胸中には複雑な感情が渦巻いていた。嫉妬と憧れ。そして……ある種の納得感。

 

「やっぱり絶花は最強だし、マシュは最高のサーヴァントだな」

 

突然、太郎の声が響いた。ドラコーと並んで立つ太郎が、満足げな笑みを浮かべながら二人を見下ろしている。

 

マシュはハッとして顔を上げた。

 

「えっ?」

 

「もぅ太郎は……」

 

絶花がゆっくりと身を起こし、困ったような、それでいてどこか嬉しそうな複雑な表情を浮かべて太郎を見た。そして俺の方を見て苦笑いを浮かべる。

 

「あんたね……もう少し言い方ってもんがあるでしょ?」

 

「え?なんで?」

 

「なんでも何も……引き分けた相手に『最強』って……褒めてるのか貶してるのかわかんないわよ」

 

絶花が小さくため息をつく。その顔には疲労の色が濃いが、どこかスッキリしたような表情も浮かんでいた。

 

一方のマシュも、ゆっくりと上体を起こす。

 

「私も……最高のサーヴァント……ですか?」

 

「もちろん!」

 

太郎が力強く頷く。

 

「マシュだって最初から最高だったけど、カルデアで一緒に戦ってきてますます強くなったし、頼れる仲間になった。それがこの世界でも変わらないってことが分かって、俺は嬉しいんだ!」

 

太郎は屈託のない笑顔でそう言った。

 

「この世界では本調子じゃないって分かってるけど、それでも十分すぎるほど強くてカッコいい。マシュは間違いなく俺の自慢のサーヴァントだよ」

 

太郎の真っ直ぐな言葉に、マシュの心の奥が温かくなった。

 

(先輩は……本当にそう思ってくださっているんだ……)

 

絶花に対する嫉妬。憧れ。それらはまだ胸の奥に残っている。

 

だがそれ以上に、太郎が自分を「最高のサーヴァント」「自慢の仲間」と言ってくれたことが、何よりも大きな喜びだった。

 

自分は確かに太郎にとって特別な存在なのだと、その言葉が証明してくれた気がした。

 

「……ありがとうございます、先輩」

 

マシュは心からの感謝を込めて微笑んだ。

 

その笑顔は、これまでのどんな瞬間よりも穏やかで、そしてどこか誇らしげだった。

 

太郎はその笑顔を見て満足そうに頷き、今度は絶花に視線を移した。

 

「絶花もさっきの模擬戦すごかったじゃないか!マシュ相手にあそこまで食らいつけるなんて、やっぱ最強だよ」

 

「もぅ……太郎ったら……」

 

絶花は顔を赤らめて俯いた。太郎の「最強」という言葉は彼女にとって特別な意味を持つ。それは幼い頃から太郎が自分に向けてくれた最大の褒め言葉だからだ。

 

「まぁ……その……ありがとう」

 

絶花は小さく呟いた。

 

その素直な反応に、太郎は目を細めて笑う。

 

「二人とも本当によく戦ったな。ドラコーも見ていて退屈しなかったみたいだぞ?」

 

太郎がドラコーの方を示すと、竜の魔女は腕を組んでニヤニヤしながら頷いていた。

 

「ふん、まぁまぁ見応えのある戦いだったぞ。特に娘よ、お前の剣術はなかなかだった。余の炎に耐えるだけの胆力もあるようだしな」

 

「ど、どうも……」

 

絶花はドラコーの評価に少しだけ戸惑ったような顔をした。

 

マシュもその様子を見て、小さく微笑む。

 

(この世界での私の戦いは……まだ始まったばかり)

 

マシュは心の中で静かに決意を新たにした。

 

太郎の力になるために。そしていつか、絶花のような強さをこの身で証明するために。

 

まずはこの世界でできる範囲で力を磨いていこう。

 

「それで、その、絶花さんと先輩は、恋人関係でしょうか?」

 

「こっ恋人っ!?何を言っているの、マシュさん!」

 

その言葉に絶花は顔を真っ赤にして否定したが、耳まで赤く染まりその否定を全く信用させていなかった。

 

「あはは……絶花と恋人関係には見えないか?」

 

太郎は少しからかうような口調で絶花に尋ねた。彼の目は好奇心と少しの意地悪さが混ざっていた。

 

「もぅ……太郎は……」

 

絶花は目を逸らしながらも頬を膨らませ、恥ずかしさと苛立ちが混ざった複雑な表情を浮かべていた。

 

それを見れば。

 

「・・・だったら、私にも、まだ」

次回の王は

  • 妖怪王
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