サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
数ヶ月。
その数ヶ月は、これからの出来事を考えれば準備期間と言っても良かっただろう。
なぜならば、この数ヶ月の間、俺はサーヴァントを厳正に選んだ。
召喚出来るサーヴァントには限度があるのと同時に、かなり影響力のある奴も考えなければならなかった。
だが、そんな俺の意思に反して、勝手に来てしまったサーヴァントもいる。
それによって、現状、15人のサーヴァントがいる状態になった。召喚出来るサーヴァントは多いに越した事はないので良しとする。
そして現在4月。俺はこの駒王街に引っ越してきたばかりだった。
親の都合という事もあり、
この駒王学園は元女子校であったが数年前から共学となり、学力とスポーツの双方において地域有数の進学校なのだ。
俺はそんな駒王学園の高等部にて転校生として入る事になる。
さて、そんな転校生の俺は夜遅くまで出歩いていた。駒王街に慣れるための散歩兼買い出しとしてスーパーマーケットに向かい、食料を買って帰路に着いていた。
すると―――
「ふふふ……ようやく見つけたぞ」
どこからか男の声が響いた。
同時に周囲の気配が一変する。
さっきまでの賑やかな雰囲気はどこへやら。今いるのは、古びた洋館に似た建物の一角だった。しかも外灯一つない。
さっきまで人通りあったよな? どう考えてもおかしいだろ。何か空間が歪んでやがる。
俺は足を止め、声の主を探す。だが姿は見えない。
「貴様の持つ力が我々にとって危険極まりないモノであるのは分かっているはずだ。だからここで貴様には消えてもらう」
男の声は冷たく響く。まるで機械のようだ。
しかし俺は特に慌てる素振りも見せず、ため息をついた。
「はぁ……面倒くさいのが来たなぁ。マジで」
すると男の声が苛立ったように強くなる。
「なんだと?」
俺は肩をすくめながら答えた。
「いやだって、いきなり『消えてもらう』とか言われてもさ。理由も聞かされずに殺されるのはちょっと納得いかないっていうか」
「ほう……恐怖で気が狂ったか? まあいい、死ぬ前に少しだけ教えてやろう」
男がそう言うと同時に、闇の中から一人の男が姿を現した。
そいつは黒い羽根を生やし、顔には仮面のようなものをつけている。そしてその手には、光の槍が握られていた。
「我々は堕天使。貴様のような人間が持つべきではない力を持つ者を排除するのが目的だ。貴様はその危険な力を持っている」
堕天使はそう言うと、光の槍をこちらに向けた。
「さて、理解したか? 理解したなら……死ね」
堕天使が光の槍を投げようとした瞬間――
「あらあら、ずいぶんと物騒な話ね」
突如として俺の隣に炎が吹き溢れ、その中心から一人の少女が現れた。
黒い髪と赤紫の瞳を持つ少女。彼女は右手に黒い旗を携え、左手には鞘に納められた剣を握っていた。
「おやおや、これはこれは。随分と弱そうな相手を狙うなんて、堕天使っていうのも案外小物なのねぇ」
少女――ジャンヌ・オルタは不敵な笑みを浮かべながら堕天使を見据えた。
「なっ……!? き、貴様は……!」
堕天使は突然の乱入者に動揺を隠せない。
「サーヴァント、アヴェンジャー。全く、マスターはこういう事に巻き込まれやすいのかしら」
ジャンヌはそう言うと、手に持っていた旗を大きく振るった。
すると周囲に黒い炎が燃え上がり、堕天使の動きを封じ込める。
「なっ、既に仲間がここまでっ」
堕天使は黒い炎の壁に阻まれ身動きが取れない。
「さあてと……」
ジャンヌはゆっくりと堕天使に近づきながら旗を振りかざす。
「お遊びはここまでにしてあげましょうか? この黒い炎で綺麗に焼かれるか、それとも私の剣で串刺しになるか……どっちがお好みかしら?」
ジャンヌの目が妖しく光る。
「くっ……!」
堕天使は苦悶の表情を浮かべながらも光の槍を投げようとする。
しかし――
「遅いわ」
ジャンヌは一瞬で堕天使の目の前に移動し、旗で光の槍を弾き飛ばした。
「なっ……!?」
「ふん。やはり堕天使っていうのは見た目だけの存在なのね。全く面白くないわ」
ジャンヌはそう言うと、旗を振り回し黒い炎を放った。
「ぐわあああああっ!!」
黒い炎に包まれた堕天使は悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
「さて、これで終わりかしら?」
ジャンヌは旗を担ぎながら俺の方を振り返った。
「いや、まだだ。アイツ、逃げる気だぞ」
俺が指差す方向を見ると、堕天使は翼を広げ空へと逃げ出そうとしていた。
「あらあら、往生際が悪いわねぇ」
ジャンヌは小さく笑うと、手に持っていた剣を引き抜こうとした。
「アヴェンジャー、殺すな」
「ええー?」
「情報が欲しいし、ここで事を荒立てるのは避けたい」
俺の言葉にジャンヌは露骨に不満そうな顔をしたが、すぐにいつものニヒルな笑みに戻った。
「まあいいわ。マスターの命令ですものね」
ジャンヌは剣を鞘に納めると、黒い旗を再び大きく振るった。
すると周囲に渦巻いていた黒い炎が一点に集まり、巨大な火球となって堕天使を追いかけた。
「うおおっ!?」
堕天使は驚愕の声を上げながらも翼を羽ばたかせて必死に逃げようとするが、黒い炎の火球は正確に追尾していく。
そして――
「がああああっ!!」
ついに追いついた火球が堕天使を直撃し、そのまま地面へと叩き落とした。
堕天使はピクリとも動かず倒れ伏している。
「……死んだ?」
「さあ? 知らないわ。そんなことより、マスターは無事かしら?」
ジャンヌは肩をすくめると、俺の方に近づいてきた。
「ああ、おかげさまで。助かったよ」
「ふん。マスターが死んだら私が困る以上、当然のことをしただけよ」
ジャンヌはそっぽを向きながら答えた。
だがその声には少しだけ安堵の色が混じっているように聞こえた。
「さてと……とりあえずコイツをどうするかだな」
俺は倒れている堕天使を見下ろした。
「情報が欲しいって言ってたわよね。だったら適当に縛り上げて、後で尋問でもすればいいんじゃない?」
ジャンヌが提案する。
「そうだな。とりあえず縛って」
その時、堕天使が別の光の槍に貫かれる。
それを見たジャンヌは、俺の前に出た。
「・・・仲間を陰で殺して、そのまま立ち去る。全く人間と変わらないわね」
そう言いながら堕天使の姿は消えて行く。
ジャンヌ・オルタはため息をついた。
「はぁ。全くつまらないわ。もう少し骨のある奴かと思ったらただの雑魚だったわね」
「まあ、結果オーライだろ」
俺は肩をすくめながら答えた。
「それにしてもさすがアヴェンジャーだな。助かったよ」
「ふん。マスターを守るのは当然の義務よ」
ジャンヌは腕を組みながらそっぽを向く。
「それにしても、ここら辺は危ないのか? さっきの奴の口ぶりからすると俺を狙ってる奴が他にもいそうだ」
「でしょうね。マスターはちょっと特別な存在らしいし」
ジャンヌは俺の顔をじっと見つめた。
「まぁ、いいわ。何かあったら私が守ってあげる。感謝しなさい」
「ああ、ありがとう」
俺は素直に感謝の言葉を口にする。
「ふんっ……」
ジャンヌは少しだけ頬を赤らめながらもすぐにいつもの不敵な笑みに戻った。
「それにしても……」
俺は周囲を見渡しながら呟いた。
「なんだか急に静かになったな」
さっきまで聞こえていた喧騒も今は嘘のように静まり返っている。
まるで時間が止まってしまったかのようだ。
「あれ?」
俺は思わず声を漏らした。
さっきまで洋館に似た建物の一角にいたはずなのに、気づけば元の夜道に立っていたのだ。
周囲にはちゃんと通行人の姿も見える。
「一体どうなってるんだ……?」
「さあね。私たちがやるべきことはやったんだから、後はどうでもいいわよ」
ジャンヌはそう言うと、黒い旗を担いで歩き出した。
「さてと、帰るわよマスター。明日は学校なんでしょ?」
「ああ、そうだな」
俺は頷くと、ジャンヌの後に続いて家路についた。
(まあ、何にしてもこっちでも面倒な事件が起きそうだな)
次回の王は
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