サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「サーヴァント……アヴェンジャー……? あなた一体何者なの?」
紅い髪の女性、彼女は警戒心を露わにしながら問いかけた。
その瞳には強い疑念と、僅かな好奇心が混ざっている。
(くそっ、こんな展開になるとは……俺の平和な学園生活は一体どこへ……)
俺はマントの下で小さくため息をついた。ジャンヌ・オルタはそんな俺の様子を知ってか知らずか、不敵な笑みを浮かべたまま彼女達と対峙している。
「ふふっ、私の正体を知りたいの? でもねぇ……そんな簡単に教えてあげるほど優しくないのよ」
ジャンヌ・オルタは旗をクルリと回しながら挑発的に言った。その動作ひとつひとつが、俺には「今は耐えろ」と言っているように感じられた。
(そうだ……焦るな)
(それで、マスターちゃん、まずは何を確かめたいのかしら?)
(・・・まずは彼女達が何者か、探ってくれるか?)
(えぇ、勿論、ただし友好的になる自信はないわよ)
(あぁ、けれど、少なくとも分かっている情報として、彼女達は魔術師じゃない可能性は高い)
サーヴァントという名を聞いて、首を傾げた所を見れば、彼女達が魔術師の知識を持っていない。
つまりは彼女達が魔術師ではない事は理解出来た。
最も、それは、ここが俺達の世界じゃないから当たり前だ。
だが、それを知られていないというのが、こちらの最大のアドバンテージだろ。
俺は深呼吸し、マントの隙間から状況を窺う。
観察する限りでは、俺と同じ駒王学園の制服を身に纏っている事は分かる。
だが、そんな彼女達がなぜここに?
「何より、私の方だけ自己紹介して、そっちは自己紹介しないなんて、常識がなってないんじゃないかしら?」
「っ……」
ジャンヌ・オルタの言葉に、彼女達たちの表情が僅かに歪む。
俺はその反応を見逃さなかった。
(やはり……単なる学生じゃないな)
(当然よねぇ。あの怪物と戦いに来たって言っていたもの。それ相応の力は持っているんでしょうけど)
(……だとしたら、彼らの正体は……)
「分かったわ。私たちはリアス・グレモリーよ」
紅い髪の女性が前に出た。凛とした声が夜の森に響く。
「駒王学園の3年生で、オカルト研究部の部長をしているわ」
(オカルト研究部……?)
その言葉に俺は内心で首を傾げる。その名前は聞いたことがあった。
学園で噂していたのを耳にした覚えがある。
「ふぅん、グレモリーねぇ」
(魔神柱っていう訳じゃなそうね)
(魔神柱だったら、流石に気づく)
(それもそうね)
(でも、魔神柱のような存在がいないって可能性はないでしょう?)
(確かに)
俺はマントの下で小さく頷く。グレモリーという名前自体は珍しいものではないだろう。だが、このタイミングでこの名を名乗るのはあまりにも出来すぎている気がした。
「それで? そのオカルト研究部の部長さんが、こんな夜更けに何の用かしら?」
ジャンヌ・オルタが挑発的に尋ねる。
「……あなたたちが先ほど倒したはぐれ悪魔について調べに来たのよ」
「はぐれ悪魔?」
ジャンヌ・オルタが首を傾げる。その仕草はあくまで演技だろうが、効果は絶大だった。
彼女達たちの表情が一層険しくなる。
「とぼけるつもり?」
紅い髪の女性――リアス・グレモリーの声には明らかな怒気が含まれていた。
「別に、悪魔という程強くなかっただけよ」
ジャンヌ・オルタは軽く肩をすくめながら続ける。
(はぐれ悪魔。つまりはさっきのは悪魔という事で考えて良いわね)
(そして、グレモリー、つまりは悪魔という事は同族狩りという事なのか?)
「でもねぇ……さっきまでここにいた化け物のことなら知ってるわよ?」
その言葉に、リアスの傍らにいた黒髪の少女が一歩前に出た。
「その化け物について話しなさい。そして、あなたたちの目的も」
「目的? そんなものないわよ、私はただ観光していただけ。最も」
それと共にジャンヌ・オルタはリアスたちを睨む。
「危害を加えるつもりだったら、こっちも容赦はしないけどね」
そう、僅かな殺気で脅しをかける。
(マスターちゃん。彼らの目的はおそらく私たちを排除する事だと思うのだけど、どう思うかしら?)
(そうだな・・・もし敵意があるなら、先に攻撃してくるはずだが、そうしないということは)
(私たちの情報を探っているのね)
(そういう事だ。だからこそ下手に動くのは得策じゃない)
(あらあら、マスターちゃんも分かってきているじゃないの)
(馬鹿にされている気がするけど、とにかく様子見だ)
(了解)
「ふん。あなたたちが何者なのかは知らないけど、こんな夜中に森の中にいるなんて普通じゃないわね」
彼女達たちのリーダーらしき紅い髪の女性――リアス・グレモリーが冷静に分析するような口調で言った。
(普通じゃないねぇ……まぁ否定はできないわね)
ジャンヌ・オルタの軽い呟きに内心で同意する。
(そもそも俺たちの世界観とこの世界観が違うんだからな……)
(そういう事ね。でも、彼らは私たちが何か特殊な存在だと気づいているみたいだけど)
(ああ、どうやら俺たちを警戒している。というか疑っているみたいだな)
「そっちこそ、なんでここにいるのよ?」
ジャンヌ・オルタが切り返す。
「この森にはぐれ悪魔が出たという情報を得たからよ」
リアスの言葉に、ジャンヌ・オルタが小さく笑う。
「はぐれ悪魔ねぇ……あの変な生き物のこと?」
「そうよ。そのはぐれ悪魔を討伐するのがこの土地を預かる者の役目よ」
リアスの言葉には迷いがない。まるでそれが当然のことのように語っている。
「へぇ……討伐ねぇ」
(マスターちゃん。彼らは何か特殊な力を持っているみたいね)
(ああ。さっきの怪物を倒しに来たって言うんだから、普通じゃない力を持っているんだろうな)
(もしかしたら魔術師なのかも?)
(……魔術師とは違う気がする。もっと異質なものを感じる)
(なるほどね……でも、今はまだ確定できないわね、それで、どうする?)
(・・・本当だったら、もっと情報を欲しいけど、魔神柱との繋がりの可能性がある以上は、迂闊に接触は危険だ。だからこそ)
(撤退ね、逃げるようで嫌になるけど、仕方ないわね)
「もう飽きたし、帰らせて貰うわ」
ジャンヌ・オルタがそう呟いた瞬間だった。
「!?」
彼女達たちの目に危険な光が宿る。警戒心から明確な敵意へと変わる。リアス・グレモリーが左手を掲げると同時に、彼女達が一斉に動いた。
(マスターちゃん、逃げる準備をして!)
(ああ、だが……)
(ん?)
(なるべく怪我はさせないようにしてくれ)
(はぁ!?)
ジャンヌ・オルタの念話が驚きに満ちる。
(あなたね……状況わかってるの? 相手は明確な敵意を向けてきたのよ?)
(それでもだ。敵対が確実じゃないのに、やる訳にはいかない。それに……)
(それに?)
(ジャンヌ・オルタだったら、それぐらい楽勝だろ)
ジャンヌ・オルタは、一瞬だけ驚くが。
(まったく、マスターちゃんは……)
(何だよ)
(わかったわよ。ただし……)
(ただし?)
(少しは痛い目は見てもらうわよ。自分達の実力不足を知るのも教育だしね)
(それぐらいなら許容範囲だ)
俺の念話が終わるか終わらないかの瞬間。
「木場!」
リアスの声と共に、男子生徒――木場祐斗が音もなく俺たちの前に躍り出た。その手には何も握られていないように見えたが、次の瞬間には薄く光る日本刀が握られていた。
(魔力で編んだ剣か……!)
木場の動きは速かった。まさに閃光のような速さでジャンヌ・オルタの懐に潜り込み、剣を薙ぎ払う。
だが。
ガキンッ!
鈍い金属音と共に、木場の剣は止められていた。ジャンヌ・オルタがいつの間にか抜いていた黒い剣が、木場の剣を受け止めていたのだ。
「あらあら……蚊にしては早かったわね」
「なっ……!?」
木場の顔に驚愕が浮かぶ。彼の剣が防がれるとは思っていなかったのだろう。そして、ジャンヌ・オルタの口元に浮かぶのは挑発的な笑みだ。
(マスターちゃんの指示通り、怪我はさせないわよ。でも……)
ジャンヌ・オルタが僅かに重心を移す。その動きは滑らかで、まるで氷上の舞のように軽やかだ。
「ぐっ……!」
次の瞬間、木場の身体が宙を舞っていた。ジャンヌ・オルタの蹴りが彼の腹部を捉えたのだ。木場は数メートル吹き飛び、地面に叩きつけられる。
「祐斗!」
リアスの叫び声が上がる。
しかし、ジャンヌ・オルタの動きは止まらない。木場の背後に控えていた小柄な少女――塔城小猫がいつの間にかジャンヌ・オルタの側面に回り込んでいた。彼女の拳がジャンヌ・オルタの顔面を狙って放たれる。
「悪いけどね」
ジャンヌ・オルタがその拳を掴む。まるで虫を捕まえるかのように。
「こっちも、ちょっとは力には自信があるのよ」
彼女の手が僅かに震える。そして。
「っ……!」
小猫の身体もまた宙を舞い、木場が倒れている場所へと放り投げられた。
「な、なんなの……あの人……!」
「強すぎる……!」
彼女達たちが動揺する。その間に、別の生徒――姫島朱乃が掲げていた。彼女の周囲に青白い光が集まり始める。
「消し飛んでちょうだい!」
朱乃の叫びと共に、杖から強烈な雷撃が放たれた。その雷撃は真っ直ぐに俺たちを貫かんと迫る。
だが。
ジャンヌ・オルタが黒い旗を振るった。旗の軌跡に沿って黒い炎が噴き出し、朱乃の雷撃と激突する。
二つの異なる力が空中で火花を散らし、爆音と共に掻き消えた。
「炎で雷撃を打ち消すなんて……!」
朱乃が驚愕の声を上げる。
「さて、そろそろお遊びは終わりにして」
ジャンヌ・オルタが呟く。その声には明確な殺意が込められていた。彼女が手にした黒い旗を構え直す。
先程の炎を放つ為に。それと共に炎が巨大化していく。
「全員……地獄に落ちなさい」
「っ……!」
彼女達たちが咄嗟に防御の構えを取る。木場と小猫がリアスの前に立ち塞がり、朱乃が更なる魔法を紡ごうとする。
だが、ジャンヌ・オルタの標的は彼らではなかった。
「なんてね」
次の瞬間、俺の身体はジャンヌ・オルタに担ぎ上げられていた。そして――
「帰らせて貰うわ!」
ジャンヌ・オルタが咆哮と共に炎を放つ。だがそれは彼女達を攻撃するためのものではない。炎は俺たちの前方の地面へと叩きつけられ、爆発的な火柱を上げた。
「なっ……!?」
炎の壁に視界を遮られた彼女達たちが一瞬戸惑う。その隙を突いて、ジャンヌ・オルタが疾風のように駆け出した。
俺の抗議は風に乗って消えていく。ジャンヌ・オルタの足は驚くほど速く、彼女達の追跡を完全に振り切る。
しばらく走った後、ようやく速度が緩み始めた。
「ふぅ……流石に撒けたかしら?」
ジャンヌ・オルタは俺を地面に降ろすと、周囲を警戒するように見渡した。
(な、何するんだよ……急に)
(だってマスターちゃんが怪我させないようにって言うから、逃げるしかなかったじゃない?)
(いや……確かにそうだけど……もうちょっとスマートなやり方はなかったのか?)
(スマートねぇ…殺さなかっただけでも感謝して欲しいわ)
(ぐっ……)
それと共に、俺達は立ち上がる。
「それにしても、魔神柱なのか、それとも」
「どちらにしても、今後は面倒になるわねぇ、いちいち戦うのは面倒だし」
それと共に、俺の方を見つめるジャンヌ・オルタ。
「なんか奢りなさい」
「えぇ、まぁ良いけど」
次回の王は
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