サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
グレモリーとの接触から数日が経った。
俺とジャンヌ・オルタは街のあちこちを歩き回りながら情報収集と警戒を続けていた。
他のサーヴァントを呼ぶことも考えたが、各々が忙しい為に、現状担当してくれている。
「やはりアヴェンジャーである私が護衛が適任よ」
ジャンヌ・オルタはそう言いながらも、常に周囲を警戒していた。
「マスターちゃん」
ある住宅街を歩いていると、ジャンヌ・オルタが突然立ち止まった。彼女の視線は一軒の民家に向けられている。
「どうした?」
「あの家……おかしいわ」
俺もその民家を見る。特に変わったところは見当たらない普通の家だ。だがジャンヌ・オルタは鋭い視線で家の奥を凝視している。
「何か感じるのか?」
「……気配が歪んでいるわ。通常の人間の気配じゃない。何か……別のものが混ざっている」
その言葉に俺も警戒する。魔神柱に関係する何かか? それともグレモリー眷属の関係者か?
「ちょっと調べてくるわ」
そう言うとジャンヌ・オルタは霊体化し、民家へと入り込んでいった。
俺はその場で待機する。数分後……
突然、その民家から黒い炎が噴き上がった。ジャンヌ・オルタの炎だ。
「なっ……!?」
炎は一瞬で家全体を包み込み、夜空を焦がすように燃え上がった。
(おい! 何があったんだ!?)
念話で問いかけた直後、ジャンヌ・オルタが民家から飛び出してきた。
彼女の腕の中には……
「……女の子?」
年齢は十代前半といったところか。気を失っているようだが、怪我をしている様子はない。
「ちょっとマスターちゃん」
ジャンヌ・オルタは少女を俺に押し付けるように渡してきた。
「うわっ!? お、おい!」
慌てて少女を受け止める。その身体は驚くほど軽かった。
「何がおったの?」
「・・・さぁ、よく分からないわ」
「えぇ」
ジャンヌ・オルタはまるで説明する気はなかった。
ただ。
「とにかくここを離れるわよ。堕天使がこっちに向かってる」
ジャンヌ・オルタの言葉に背筋が凍る。堕天使? またあの異形の存在か? しかも複数!?
「おいおい、待てよ! この子はどうするんだ?」
俺は腕の中の少女を見下ろす。気を失ったままの彼女は、シスター服を身に纏っているが。
「連れていくに決まってるでしょ。あの家にいたら確実に死んでたわよ」
ジャンヌ・オルタはそう言いながらも周囲を警戒している。その視線が一瞬上空へ向いた。
「ちっ……思ったより早いわね」
「何が?」
「空から来てるって言ってるでしょ! マスターちゃんは鈍いわね!」
ジャンヌ・オルタは苛立ちを隠さずに叫ぶと、左手に持った黒い旗を空へと掲げた。次の瞬間、旗の軌跡に沿って黒い炎が螺旋を描きながら上昇し、夜空を貫いた。
(信号弾……みたいなもんか?)
炎の槍は夜空の一点に炸裂し、一瞬だけ辺りを赤く照らす。まるで花火のような光景だったが、ジャンヌ・オルタの表情は険しいままだ。
「あれで少しは時間稼ぎできるわ。急いで!」
「わかった!」
俺は少女をしっかりと抱き直し、ジャンヌ・オルタの後に続いて走り出した。足元の瓦礫や燃え盛る家の残骸が熱気を放っている。背後では崩れ落ちる音が響いていた。
(この子……一体何者なんだ?)
腕の中の少女は微かに身じろぎするだけで目を覚ます気配はない。シスター服ということは教会関係者か? だとすれば、あの燃えた家は一体何だったんだ? ジャンヌ・オルタが「何か別のものが混ざっている」と言っていたのは……?
「マスターちゃん、集中して!」
鋭い叱責の声に我に返る。見れば、前方に路地が見えていた。
「あそこを曲がるわよ!」
ジャンヌ・オルタが路地に飛び込み、俺もそれに続く。狭い路地を抜けると、裏通りに出た。人通りはほとんどなく、街灯の光だけが頼りだ。
「ふぅ……ここまで来れば少しは安全かしら」
ジャンヌ・オルタはようやく足を止め、肩で息をしながら周囲を見回した。その額には汗が滲んでいる。
「それにしても、何が起きてるんだ? この子は一体……」
俺は改めて少女を見下ろす。シスター服の胸元には小さな銀の十字架が光っている。普通のシスターなのだろうか? それとも……
「さぁね。でもあの家で見つけた時は胸糞悪い光景が広がってたわよ」
ジャンヌ・オルタの声には珍しく苦々しさが混じっていた。
「胸糞悪い?」
「詳しく聞きたい?」
ジャンヌ・オルタはニヤリと笑ったが、その目は笑っていなかった。
「いや……やめておく」
俺は首を横に振る。彼女の表情から察するに、聞くべきではない何かがあったのだろう。それにしても……
(グランドオーダーを夢だと思ってた……でも今は現実だ)
この奇妙な状況も、ジャンヌ・オルタという存在も、全て現実だ。あの悪夢のような戦いは本当にあったのだ。
「・・・どちらにしても、この子から聞いた方が良いかもしれないな」
「あら、意外と冷静なのね」
「ただの野次馬根性だよ」
「ふぅん? まぁいいわ」
ジャンヌ・オルタは肩をすくめたが、その瞳には僅かな敬意のようなものが浮かんでいる気がした。気のせいかもしれないが。
「とりあえず、安全な場所に連れて行くのが先決ね。この子が目覚めたら話を聞けるでしょ」
「ああ」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王