サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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復讐者と共に初開拓 Ⅸ

「アヴェンジャー」

 

俺の声は乾いていた。

 

「なんだか分かってきたわよ。あんたが何を考えているか」

 

堕天使が放った光の矢が壁に突き刺さる音を聞きながら、俺は拳を握りしめた。グランドオーダーで学んだことは、多くの場合——特に時間を超越した局面では——結果は変えられないことが多いということだ.

 

俺達ができることは限られている。

 

そうしている間にも、こちらに神父達が襲いかかってきていた。

 

「ほらっ!」

 

ジャンヌ・オルタは黒炎を展開するも、それすらも無慈悲に押しつぶそうとしてくる神父達。

 

「マスターっ!」

 

「わかってる!」

 

俺は無造作に地面に落ちていた祭具を拾い上げた。

 

(ダメージを与えられなくても構わない。今は時間が必要だ)

 

奥で行われている儀式の進行が早くなっている。

 

だからこそ、ジャンヌ・オルタが呟いた。

 

「あれはもう取り返しがつかない」

 

そう、この状況が既に「終わった後」の事態であること。

 

俺は理解していた。

 

グランドオーダーで何度も遭遇したパターンだ。

 

俺の思考はそこで停止した。奥の祭壇で必死にアーシアに呼びかけるグレモリー眷属たちの姿が目に入った。

 

男性が涙を浮かべ、唇を噛みしめている。

 

かつての自分や仲間達が見せた表情に酷似していた。

 

「マスター!」

 

ジャンヌ・オルタが警告の声を上げる。

 

「わかってる……俺たちができることは限られている」

 

どんなに、力があっても、全てを救えない。

 

俺達が出来る事なんて、限られている。

 

だからこそ。

 

「アヴェンジャー!」

 

俺は即座に決断を下した。

 

「宝具を使え!」

 

「!? マスターっそれはっ」

 

ジャンヌ・オルタの顔が強張った。当然だ。この世界では魔力が稀薄だしカルデアのバックアップもない。宝具解放には令呪の消費が必要なのだ。

 

「良いんだ。これ以上あいつらの邪魔をさせたくない」

 

祭壇で必死に祈るグレモリー眷属たちを指差す。特にあの男性——泣きながらアーシアに語りかけていた青年の姿が目に焼き付いていた。

 

(かつての俺たちと同じだ……)

 

グランドオーダーで幾度も経験した喪失の瞬間。仲間を救えなかった無念。それが今、眼前に広がっている。

 

ジャンヌ・オルタは一瞬だけ躊躇したが、すぐに鋭い眼差しで応えた。

 

「……命令ね?」

 

「ああ。最後まで見届けさせてやるんだ」

 

「ふん……了解したわ!」

 

黒い旗が妖しい輝きを帯びる。同時に俺の左手に刻まれた令呪が熱を持ち始める。

 

俺の右手甲に刻まれた三画の紋章——令呪が灼熱の痛みを伴って一画を削った。

 

「ッ……!」

 

筋肉が引き裂かれるような感覚。血液が逆流する錯覚。視界が一瞬揺らぐ。グランドオーダーでも何度か味わった“代償”だが、今回は特にキツい。この世界の魔力環境が悪すぎるのか?

 

だが、そんな弱音を吐く余裕はない。

 

「アヴェンジャー!」

 

彼女の名を呼んだ瞬間、周囲の温度が急降下した。

 

祭壇に集中していた堕天使と神父たちがようやく異変に気づいたが——遅すぎた。

 

「全ての邪悪をここに、報復の時は来た!」

 

それと共に、ジャンヌ・オルタの全身が黒炎に包まれた。

 

彼女の持つ黒い旗が禍々しい光を放ち、空間が歪む。

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……」

 

詠唱が始まった。今までの戦いでは決して聞かなかった“本気”の気配だ。その場にいる全員が凍りついた。

 

「『吼え立てよ、我が憤怒』!」

 

黒旗が天高く掲げられると同時に——世界が染まった。

 

教会全体が漆黒の焔に呑み込まれた。

 

神父たちの悲鳴。堕天使の甲高い叫び。何もかもが灰燼に帰す灼熱の嵐。壁も天井も家具も、一切合切を焼き尽くす。

 

そして。

 

「なっ何がっきゃぁぁ!!」

 

それと共に堕天使の悲鳴が聞こえた。

 

見ると、どうやら空を飛んで逃げようとしていたらしい。

 

しかし、ジャンヌ・オルタの放った宝具の熱風が堕天使を吹き飛ばし壁に叩きつけたのだ。

 

それだけでなく周りにいた神父たちにも被害が及び次々と倒れていく。

 

ジャンヌ・オルタはそれを見届けると不敵に笑う。

 

(やっぱりやり過ぎだろ……)

 

そう思ったが口には出さない。

 

俺も相当疲弊していた。令呪を使った反動が大きいせいだ。

 

(令呪一個でここまで消耗するか……)

 

カルデアでのサポートなしで使うとこんなにも辛いとは思わなかった。

 

だが成果は確かにあった。

 

「まさか、あなたにこれ程の力があるとは」

 

「あらあら、大将さんは部下に押しつけてようやく出てくるなんてね」

 

その戦いの終わりに、何時の間にかリアス・グレモリーが立っていた。

 

「・・・色々と気になるけど、あなた達の目的って、あの子の神器なのかしら」

 

「別に、ただ私は文句を言うつもりだったわ」

 

そう、既に死んでいる彼女を、アーシアを見つめる。

 

「・・・もう文句は言えない以上はね」

 

「・・・まだ、話せるわよ」

 

それと共にリアスは笑みを浮かべる。

 

「・・・なんですって」

次回の王は

  • 妖怪王
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