サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
山道を進む足音だけが響く。夏の日差しが木々の隙間から降り注ぎ、額に汗が滲む。
でもそんなことは些細な問題だった。俺の手元にある資料の方が遥かに気になる。
「……なるほどね」
隣で師匠が紙をめくりながらクスリと笑う。蒼いの瞳が細められ、悪戯っぽい光を宿している。
「フェニックス家の特徴は、不死身に近い再生能力を活かした持久戦略か。物理攻撃を軽視しがちな傾向も見られる」
「まぁ、確かに不死身の能力を持つ奴はそういう傾向があるな」
正直言って文字を目で追うのが辛かった。
何より山道の揺れが思考を妨げる。
「そうだね、確かに君が戦ってきた連中に比べれば可愛いくらいかもしれない」
師匠はそう言いながらパラパラとページをめくる。
まるで大学図書館の学生が論文を吟味しているようだ。
「けれど、だからこそ傲慢だ」
その傲慢な戦い方は。
「故に勝てる可能性は十全にある。何よりも、この再生能力はこれまで戦ってきた奴らよりも戦いやすいからな」
「まぁ」
個人の魔力だけで再生している。
それは、土地の魔力を利用したり、不死身という概念がある訳ではない。
そんな風に感じていた。
その言葉を聞き逃さなかったリアス先輩が振り返る。
「あなたたちの言う『戦ってきた相手』とは何かしら?」
「おっと」
師匠はわざとらしく資料を閉じて封筒に戻した。
「秘密主義でね。これは我が弟子とかけがえない思い出だからね」
「……そう」
ようやく山頂の小屋が見えてきた。
「はぁはぁ、なんで、太郎達はそんなに疲れていないんだ」
「まぁ、色々とあったからな」
疲れ果てている兵藤に対して、俺は軽々と言う。
「あの小屋が今回の拠点よ」
リアス先輩が指さすログハウスは思ったより立派だった。近くには井戸がある。
「さて」
リアス先輩が荷物を置くと真剣な目つきで俺と師匠を見つめる。
「あなたの力を教えてもらいましょうか?」
「ふむ」
その提案に対して、俺は間違いないと思う。
手を組む相手の能力を知っておきたいのは当然だからな。
「まずは太郎から聞かせてもらえるかしら?」
「俺は……その……普通ですよ。支援魔術くらいしか使えないので」
実際のところグランドオーダーで鍛えられた技術は健在だが、それを口にする勇気がない。
「ほほう?」
横の師匠が楽しそうに首をかしげている。
「ふふっ、まぁ我が弟子はまだまだ修行中だからね、まぁここは私の魔術を教えておこうか」
そうして、師匠は手に持った試験管を見せる。
「試験管?」
そのまま、地面に垂らす。
すると、そこから流れた水銀が大きな蛇のように蠢き出す。
「水銀が、人の形に」
「まぁ、これが私の使える手札の一つであるトリムマウだ」
そうして、水銀は、そのままメイドへと姿を変えた。
「トリムマウ。我が主人の為に使えるものでございます。以後お見知りおきを」
「まさか、そういうのを使えるとは、驚きね」
そうしながらも、皆は驚いている。
最も。
(師匠、トリムマウは)
(あぁ、あくまでも、私の能力だからね)
師匠のもう一つの力を隠す為の代物である事を、俺は察してしまう。
次回の王は
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