サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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姫君と婚約騒動 Ⅳ

山道を進む足音だけが響く。夏の日差しが木々の隙間から降り注ぎ、額に汗が滲む。

 

でもそんなことは些細な問題だった。俺の手元にある資料の方が遥かに気になる。

 

「……なるほどね」

 

隣で師匠が紙をめくりながらクスリと笑う。蒼いの瞳が細められ、悪戯っぽい光を宿している。

 

「フェニックス家の特徴は、不死身に近い再生能力を活かした持久戦略か。物理攻撃を軽視しがちな傾向も見られる」

 

「まぁ、確かに不死身の能力を持つ奴はそういう傾向があるな」

 

正直言って文字を目で追うのが辛かった。

 

何より山道の揺れが思考を妨げる。

 

「そうだね、確かに君が戦ってきた連中に比べれば可愛いくらいかもしれない」

 

師匠はそう言いながらパラパラとページをめくる。

 

まるで大学図書館の学生が論文を吟味しているようだ。

 

「けれど、だからこそ傲慢だ」

 

その傲慢な戦い方は。

 

「故に勝てる可能性は十全にある。何よりも、この再生能力はこれまで戦ってきた奴らよりも戦いやすいからな」

 

「まぁ」

 

個人の魔力だけで再生している。

 

それは、土地の魔力を利用したり、不死身という概念がある訳ではない。

 

そんな風に感じていた。

 

その言葉を聞き逃さなかったリアス先輩が振り返る。

 

「あなたたちの言う『戦ってきた相手』とは何かしら?」

 

「おっと」

 

師匠はわざとらしく資料を閉じて封筒に戻した。

 

「秘密主義でね。これは我が弟子とかけがえない思い出だからね」

 

「……そう」

 

ようやく山頂の小屋が見えてきた。

 

「はぁはぁ、なんで、太郎達はそんなに疲れていないんだ」

 

「まぁ、色々とあったからな」

 

疲れ果てている兵藤に対して、俺は軽々と言う。

 

「あの小屋が今回の拠点よ」

 

リアス先輩が指さすログハウスは思ったより立派だった。近くには井戸がある。

 

「さて」

 

リアス先輩が荷物を置くと真剣な目つきで俺と師匠を見つめる。

 

「あなたの力を教えてもらいましょうか?」

 

「ふむ」

 

その提案に対して、俺は間違いないと思う。

 

手を組む相手の能力を知っておきたいのは当然だからな。

 

「まずは太郎から聞かせてもらえるかしら?」

 

「俺は……その……普通ですよ。支援魔術くらいしか使えないので」

 

実際のところグランドオーダーで鍛えられた技術は健在だが、それを口にする勇気がない。

 

「ほほう?」

 

横の師匠が楽しそうに首をかしげている。

 

「ふふっ、まぁ我が弟子はまだまだ修行中だからね、まぁここは私の魔術を教えておこうか」

 

そうして、師匠は手に持った試験管を見せる。

 

「試験管?」

 

そのまま、地面に垂らす。

 

すると、そこから流れた水銀が大きな蛇のように蠢き出す。

 

「水銀が、人の形に」

 

「まぁ、これが私の使える手札の一つであるトリムマウだ」

 

そうして、水銀は、そのままメイドへと姿を変えた。

 

「トリムマウ。我が主人の為に使えるものでございます。以後お見知りおきを」

 

「まさか、そういうのを使えるとは、驚きね」

 

そうしながらも、皆は驚いている。

 

最も。

 

(師匠、トリムマウは)

 

(あぁ、あくまでも、私の能力だからね)

 

師匠のもう一つの力を隠す為の代物である事を、俺は察してしまう。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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