サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
翌朝。
俺はアルトリアと共に駒王学園の敷地を後にした。昨晩のうちに師匠(ライネス)と連絡を取り合い、ある程度の探索範囲を絞ってある。フリードが潜伏しそうな場所——人目につきにくい廃墟や裏路地を中心に当たる予定だ。
「さてと……まずは東地区の廃ビル群から当たってみるか」
黒いフード付きジャケットに身を包んだアルトリアが隣を歩く。いつも通り感情の起伏が少ない横顔だ。
「了解した、マスター。目標はあくまでフリードの拘束。可能であればあの紛い物……いや、贋作のエクスカリバーも回収するのが望ましいか」
「ああ。それに……コカビエルって野郎の手がかりもな」
俺はポケットの中でスマートフォンを操作し、師匠から送られてきたデータを確認する。
コカビエルに関連するであろう人物リストとその動向。
昨日のゼノヴィア達の話では、コカビエルは今回の聖剣強奪とフリードへの提供に関与している。目的は不明だが、それが「戦争」への布石である可能性が高かった。
「マスター。昨晩の仮説だが」
アルトリアが前を向いたまま言う。
「『三勢力が全面戦争を起こす可能性が高い』……と断定したな」
「ああ」
俺は頷く。
「悪魔と天使と堕天使。長年バランスをとっていたこの街で、堕天使幹部が聖剣を使って問題を起こす。……火種としてこれ以上ないだろ」
「ふむ。合理的な推測だ。だが」
アルトリアがちらりと俺を見る。
「そのような大規模な戦争を起こすメリットがコカビエルにあるとは思えない。あの男は戦狂いではあったが、組織の破滅を望むようなタイプではないはずだが?」
「・・・鬱憤が溜まっていたのかもな」
「鬱憤」
俺は、少なくとも、そう思える。
「あの旅を通して、分かったけど、他の奴らからしたら馬鹿馬鹿しい理由でも、本人にとっては重要な事って結構ある」
「確かにそれは否定しない。しかし」
「それに」
俺はさらに続ける。
「そもそも悪魔や天使がいる時点で異常だって考えた事は」
「・・・それも確かだな」
「だろ」
その一言と共に俺達は目的地へと歩みを進める。
周囲はまだ早朝の静けさに包まれており、人の往来もほとんどない。
「それにしても」
ふとアルトリアが呟く。
「さっきから、こっちをつけている奴、出てこい」
アルトリアの低い声が閑静な住宅街に響き渡る。
俺は内心焦った。全く気づかなかった。この女騎士、感覚器官が尋常じゃない。
「気づいてたの?」
塀の陰から出てきたのは、木場だ。
整った顔立ちに穏やかな微笑み。だが、その瞳の奥に宿る暗い光は見逃せなかった。
「木場?何してるんだこんな時間に」
俺の問いかけに、木場は肩をすくめた。
「唯我君とセイバーさんに挨拶しようと思ってね。昨日はバタバタしていて碌に話せなかったし」
アルトリアが竹刀袋を無造作に地面に立てると、両手を腰に当てて仁王立ちになる。
「ほう。挨拶の割には殺気がダダ洩れだったが?」
ギクリ、と木場の身体が硬直する。
その瞬間だった。
「・・・なるほど、聖剣か」
アルトリアが呟く。
「マスター。彼が私達を尾行した理由は明白だ。おそらく聖剣に関する何らかの情報を求めていたのだろう」
木場の表情が引きつる。
俺もすぐに察した。彼が昨日からずっと複雑な表情を浮かべていたのはそのためか。
「・・・・・・バレたら仕方ない。そうなんだ」
木場は観念したようにため息をつき、拳を握り締めた。
「僕は聖剣が憎い。聖剣を生み出した者を許せない」
「ふむ。それで?私達から情報を得ようとしたと」
アルトリアが腕を組む。
俺は慌てて二人の間に入った。
「おいおい、落ち着けって。俺達は今フリードを探してる最中で—」
「フリード?」
木場の眉が上がる。
「あの悪趣味なエクソシストか。彼も聖剣を持ってるのかい?」
「ああ。しかも複製品だ」
「・・・・・・なるほど。それで君達は彼を追っているのか」
木場はしばらく考え込んでいたが、やがて強い意志のこもった目で俺を見据えた。
「僕も同行させてもらえないだろうか?もしフリードを捕らえられるチャンスがあるなら」
「断る。貴様がいたとしても戦力になるとは思えん。むしろ、お前という不確定要素でマスターが危険に晒されるだけだ」
アルトリアが冷たく言い放つ。
「いや。木場の同行を認める」
「マスター!?」
アルトリアが驚愕の声を上げる。その目には明確な抗議の色があった。
「冗談じゃない! この男を連れて行ったら計画が台無しになる! 聖剣への憎しみが判断を狂わせるに決まってる!」
俺はため息をつきながら言った。
「……セイバー。確かに彼の憎しみは危険だ。でもな」
俺は木場をまっすぐ見据える。
「このまま見捨てたら、目覚めが悪いからだ」
「・・・それだけか?」
「それだけだ」
俺はそ宇言う。
「だから、同行する以上、絶対に死ぬ事は許さない。分かったか」
「・・・分かった」
木場は強く頷いた。
「ありがとう。必ず役に立つ」
「役に立つかどうかじゃなくて、死なないこと。それが条件」
「むぅ」
木場は不服そうな顔をしたが、今は文句を言わない方が賢明だと判断したようだ。
「マスター。本当にこの男を連れて行くつもりか?」
アルトリアが疑わしげに睨んでくる。
「ああ」
「私には理解できない」
「これはマスター命令だ」
「・・・」
渋々引き下がるアルトリアを見て、俺は内心安堵のため息をつく。
(よし。ひとまず木場は仲間に出来た。あとは・・・)
「・・・で?具体的にどうするんだ?唯我君の作戦はあるんだろうね?」
木場が期待半分不安半分の表情で聞いてくる。
俺はポケットからスマホを取り出し、昨夜師匠が送ってきたデータを表示させた。
「まずは師匠の分析結果を基にフリードの拠点を特定する。次に・・・」
そこで俺はわざと咳払いをして視線をそらした。
「あー。でもその前に腹減ったなぁ〜」
「・・・・・・え?」
「昼飯だよ昼飯! 街中を探し回るんだからエネルギー補給は必須だろ!」
「こんな状況で食事を?」
木場があきれたような表情をする。一方アルトリアは腕を組んで考え込んでいる。
「・・・確かに。マスターの脳の活性化には糖分摂取が必要不可欠だ。承認する」
木場が目を剥いた。
「当たり前だろ木場。腹が減っては戦ができぬって言うじゃないか!」
俺は得意げに胸を張る。
「とりあえず、近くのファミレスに行くか」
次回の王は
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