サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
庭先に設置された訓練スペースに、重々しい空気が漂う。中央には二つの影。
「それじゃ、始めようかぁ!」
そう、卑弥呼は準備運動をしながら呟く。
その姿は、巫女服でありながらも動きやすい恰好となっている。
一方の小猫は、真剣な眼差しで対峙する。
「お願いします」
その声には、迷いがない。決意が漲っている。
そうして、卑弥呼と黒歌は互いに見つめ合っている。
その様子を、俺と黒歌は見ている。
「・・・本当に大丈夫なの、あの脳天気そうな人に任せて」
頭の上で、猫の姿となっている黒歌は不安げに呟く。
「・・・まぁ、心配になる気持ちは分かるけど、信じても良いんじゃないか?」
俺はそう答える。
その言葉を聞いた黒歌は、少しムッとしたように唸る。
「信じるとかじゃないにゃ。あの娘の将来がかかっているんだから、慎重に選ばないとダメにゃ」
そうして呟きながら、小猫を見つめる。
「はいはい、それじゃ行くよぉ」
卑弥呼が構える。
「それじゃ、行きますね」
そうして、小猫はゆっくりと息を吸う。
まるで、これまでずっと自分から離れていた事を自ら行うように。そうして、彼女が持つ魔力が膨れ上がる。
それはまさに、猫又としての力。これまでの力よりも遥かに強く、禍々しい妖力だ。
そして、小猫は力を解放した。
その圧倒的な妖力を浴びて、小猫は徐々に変わっていく。
「にゃっまさか仙術を」
小猫を襲っているのは、おそらくは強すぎる魔力が体内で暴走している状態だろう。体中に巡る莫大な量の魔力によって肉体が耐えきれず崩壊しかけていた。それはもう限界を超えている証拠だ。
「うわぁ、凄いね」
卑弥呼が平然と呟く。その様子に黒歌が愕然とする。
「太郎」
「大丈夫。彼女なら問題ないさ」
俺は確信を持って言った。
そして彼女が妖力を解放した瞬間——
卑弥呼の目が金色に輝き始めた。
全身から溢れる神威のような光が周囲を包み込む。
彼女の全身から発せられるエネルギーにより周囲一帯が浄化されていく。
大地が鳴動し草木が騒めき空気が震えている。
それはまるで世界そのものが喜んでいるかのようだった。
小猫は目を閉じたまま微動だにしない。まるで眠っているかのように安らかな表情をしている。
しかし同時に苦悶の色も見えていた。
彼女は苦しんでいた。自らの持つ力によって心が壊れかけていたのだ。
「白音!」
黒歌が叫ぶ。しかしその声は届かない。
今や二人を隔てる距離は数十メートルどころではない。数百メートルはあるだろう。
だが。
「大丈夫、小猫ちゃん?」
「はいっ」
そうしながら、なんとか立ち上がる小猫。
だが、その表情は怯えている。
それは、自分の力を使って恐怖しているのだ。また同じ事にならないか。
そんな小猫に対して、卑弥呼は頭を撫でる。
「確かに怖いよ、けどね大丈夫。私はどんな時でも傍にいてあげるからね」
そう言いながら彼女の頭を優しく抱きしめる。
「・・・うっ」
そうして涙ぐむ小猫に、優しく微笑む。
「絶対に見逃さないから」
同時に、その心は暖かい。
その光景を、黒歌は複雑な表情で見つめていた。太郎もまた静かに微笑みながら見守っていた。
「・・・太郎が信じていただけの事はあるにゃ」
「だろ」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王