サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
小猫の特訓を見終わった後、太郎は遠く離れた森で黒歌と話す。
訓練が終わっ後、俺と黒歌は人里離れた深い森の中にいた。夕暮れの赤い光が木々の間を縫って差し込み、鳥たちのさえずりだけが辺りに響いている。
「それで?」
俺は黒歌に向かって問うた。
「こんなところで何を話したいんだ?」
黒歌は木の根元に腰掛け、長い黒髪を指で絡ませながら唇を尖らせた。
「……太郎ってさ、ほんとに何者なん?あの巫女の姉貴といい、アーサー王と言い」
「色々とあったんだよねぇ」
俺は空を見上げながら答える。雲一つない青空はどこまでも続いているように見える。
「太郎が言うとなんか説得力あるにゃ……」
黒歌はため息混じりに呟いた。猫耳がピクピク動く。
「そもそも、あの巫女さんって何者なのさ。あんなの見たことないにゃ」
「そうか。卑弥呼か……」
「そう!あの人!仙術使いとかじゃないっぽいのにあの力……」
黒歌が腕を組みながら首を傾げる。小柄な体型とは裏腹に意外と豊かな胸が強調され、つい視線が奪われる。しかし、猫耳がピクっと反応したことで慌てて視線を逸らす。
「あいつはまあ特別な存在だな」
それらを聞いて、黒歌はため息を吐く。
「ねぇ、太郎」
すると、黒歌は俺の方に尋ねてくる。
「取引をするのはどうかにゃ?」
「取引?まさか、ここで金を稼ぐ仕事でも教えてくれるのか?」
「違うにゃっ!」
そうしながら黒歌は叫んだ。
「私の方から情報を流すにゃ。だから白音を守って欲しいの」
「なるほどね」
確かに合理的な提案ではある。
彼女たち姉妹の立場を考えれば自然な流れだろう。
しかし……。
「いいや」
俺は即座に断った。
黒歌の猫耳がビクリと動く。
「なっ!?ど、どうしてだにゃ!?」
怒りと困惑が混じった表情で俺を見つめてくる。
「お前の取引があろうとなかろうと、彼女の安全は守る。それが王である俺の役目だから。だから、お前の取引は、お前がここに戻ってこられるようにする。それが俺からのお前の取引だ」
俺の言葉に、黒歌は一瞬きょとんとした表情を見せる。猫耳が小刻みに揺れている。驚きと警戒が入り混じった瞳が俺を捉える。
「……にゃっ?どういう意味だにゃ?」
「簡単な話さ。お前がここで情報を流すとしても、それがバレれば組織から命を狙われる。そうなれば、お前は逃げ場を失う。だからこそ、俺はお前がここに戻ってこられる場所を作ると言っている」
「にゃ、にゃんと……!」
黒歌の目が大きく見開かれる。猫耳がピクピクと動き始めた。信じられないという感情が顔に表れている。
「ばっかじゃないの?そんなことしたら太郎だって危ないにゃ!」
「はっ!」
俺は鼻で笑い飛ばす。
「俺は既に世界を救った男だぞ?グランドオーダーを成し遂げた経験があれば、どんな状況にも対応できるさ」
「ぐらんど……何だってにゃ?」
黒歌は首を傾げる。猫耳がさらに激しく動き始める。どうやら理解不能な言葉に対する混乱の表れらしい。
「・・・まぁ、特に気にしなくて良いよ」
そうして、俺は黒歌を落ち着かせる。
「まぁ、それでも太郎が私を助ける気があるのは理解したにゃ」
そうして、黒歌は真剣な表情で俺を見る。
「だったら、一つ約束して欲しいにゃ」
「約束?」
「そう、絶対に白音を守り抜くことだにゃ」
「約束か」
俺は笑みを浮かべる。
「良いだろう。王の名において誓おう」
そして俺は右手を差し出す。
黒歌はしばらく躊躇ったが、やがて小さな手を重ねてきた。
その手は冷たく汗ばんでいた。緊張が伝わってくる。
「これで契約成立だな」
そうして、夏での出来事は終わりを迎える。
激しい戦いはなかった。
けれど、決して無駄ではない。
「さて、黒歌。久し振りに絶花にも会いに行かないとな」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王