サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
目の前ではすでにジャンヌ・オルタと謎の人物とのの激突が始まっていた。
「貴様か、噂の魔術師を護衛している英霊か」
そうして喋ったのは、1人の男がであった。
「あんたがこの1件の裏にいる蝙蝠って事?」
「ただの人間1人が敵うと思うか、このシャルバ・ベルゼブブに」
「舐めないで欲しいわね」
ジャンヌ・オルタは即座に旗を振るい、炎の刃を放つ。
旗先が地面を削り取りながら一直線に伸びる。
シャルバは空中に跳躍しつつ回避するが、炎が触れた箇所は瞬時に炭化した。
「ほう? なかなか面白い技術だな」
空中で悠然と立つシャルバ。
「だが貴様のような小娘に何ができる?」
彼は掌に光球を生成し、それを幾つも分裂させて降り注がせた。
流星群のような光弾がジャンヌ・オルタを襲う。
「遅いわ!」
ジャンヌ・オルタは旗を盾のように回転させながら飛び込む。
炎が渦を巻き、光弾を溶かしていく。
「ちぃ……」
シャルバが舌打ちする間もなく、ジャンヌ・オルタは間合いを詰めた。
「くっ!」
シャルバが慌てて防御結界を展開する。
しかしジャンヌ・オルタの攻撃速度は彼の予測を超えていた。
「お前のその傲慢さこそが弱点よ!」
連続で放たれる炎の斬撃が結界を激しく叩き割る。
火花と光が入り混じる中、シャルバの顔から余裕が消え去っていた。
「魔王と呼ばれた我が身が、このような侮辱を受けようとは……!」
怒りに震えながら叫ぶシャルバ。しかしジャンヌ・オルタは冷淡に言い放つ。
「あら?まだ自分が偉大な王様気取りなの?」
冷徹な瞳を細め、さらに炎を膨張させていく。
「くだらないわ」
地面が溶け始め、赤熱の光が空間全体を照らす。
シャルバは後方へ退避しようとするが――。
「逃がさないって言ってるでしょうが!!」
ジャンヌ・オルタの怒号と共に炎の槍が形成された。
その槍がシャルバへと突進する。
「っぐううう!?」
直撃を受けて吹き飛ばされたシャルバは壁に激突し、瓦礫の中に埋もれた。
「マスター」
ジャンヌ・オルタは軽く息を整えながら振り返る。
その瞳には明らかな冷酷さがあった。
「さっきからずっと黙っているけど、こういう場合って指示出さないの?」
挑発的な口調で訊ねるジャンヌ・オルタに、俺は肩をすくめた。
「お前の好きにすればいいよ。何よりもこの空間は壊れても問題ないだろ」
「あらそう?」
微笑を浮かべて再びシャルバに向き直るジャンヌ・オルタ。
既に瓦礫の下から這い出してきたシャルバが憤怒の表情を浮かべていた。
「よくも魔王たる我を愚弄したな!」
叫びと共に放たれる巨大な魔力の奔流。
ジャンヌ・オルタはそれを真正面から受け止め、あざ笑う。
「魔王だの王だの――」
炎の盾を作りつつ呟く。
「本当の王ならこんな場面で冷静に構えてるはずだけどねぇ?」
その言葉に反応したシャルバの顔はさらに醜悪になった。
「貴様っ! 我の地位を貶めるか!!」
怒号と共に再び魔法陣が展開される。今度は数段威力が上がっているようだった。
しかしジャンヌ・オルタは動じない。寧ろ楽しげに嗤った。
「王気取りねぇ……」
そう呟いた瞬間、俺の方にちらりと目を向けたジャンヌ・オルタ。
「こんな偽物に本気出す必要なんてないけど――」
炎の旗が再び翻る。
「あんたみたいなのがいるとマスターの理想の王道を邪魔するからね!」
高らかに宣言し、ジャンヌ・オルタは更なる炎の嵐を呼び起こす。
その咆哮に呼応して周囲の温度が急上昇し始めた。
「ならば、そのマスターごと、そこにいる奴らを始末してやろう!!」
シャルバ・ベルゼブブは最後の賭けに出たように、巨大な魔法陣を展開する。
光と闇が混じり合った禍々しいエネルギーが迸る。
「ちっ、私は無事でも後ろにいる奴らは耐えられないわね」
シャルバ・ベルゼブブが放つ巨大な光と闇のエネルギーが我々に向かって一直線に襲い掛かる。
「ちっ……!」
俺の直感が危険信号を発していた。あの攻撃は間違いなく致命的だ。
「マスター! 来るわよ!」
ジャンヌ・オルタが警告を発する。しかし彼女自身も防ぎきれるかどうか分からないほどの威力を帯びていることが見て取れた。
咄嗟に俺は左腕を掲げる。令呪の模様が煌々と輝き始めた。
「令呪を以て命ずる――」
「えっ、ちょっとマスター!? ここで!?」
驚くジャンヌ・オルタを尻目に、俺は躊躇うことなく次の言葉を続ける。
「令呪をもって命ずる!アヴェンジャー……いや――ジャンヌ・ダルク、ルーラーとしてその力を貸せ!」
「……!?」
一瞬の静寂の後、ジャンヌ・オルタの身体を金色の光が包み込んだ。
彼女の黒い軍服風の衣装は変わらないものの、特徴的だった髪は膝まで伸びる金色の三つ編みへと変わっていった。鋭い眼光だった赤紫の瞳も今は穏やかな慈愛を湛えた金色に輝いている。
「な……何だこれは……!?」
驚愕するシャルバ。その眼前で新たな姿を得た女性は凛とした立ち姿で旗を握り締めていた。まさに聖女の威厳を纏っている。
「……これが令呪の力なのね」
ジャンヌ・オルタ——否、現在はルーラーとして顕現したジャンヌ・ダルクが呟く。
「皆様をお守りします」
その言葉と共に彼女の旗が大きく翻る。その旗先からは暖かな光が広がっていく。シャルバの攻撃を防ぐ準備だ。
「させるかっ! 貴様ごとき聖女の加護など通じるはずがない!」
シャルバがさらなる力を込め、魔法陣からエネルギー波を放つ。漆黒の閃光が迫ってくる。
しかしジャンヌ・ダルクは全く怯まずに旗を構えた。その双眸は強固な意志で燃えている。
「主の御業をここに! 我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!」
彼女の宣言とともに巨大な金色の旗幕が展開され、眼前に広がった。
「リュミノジテ・エテルネッル!」
黄金の光壁が出現し、シャルバの攻撃を迎え撃つ。衝突音と共に凄まじい衝撃波が周囲を揺るがせた。
だが光壁は微動だにしない。ジャンヌ・ダルクの旗が放つ聖なる光は、まるで全てを包み込む聖母の如く我々を守護していた。
それと共に、シャルバの放った攻撃は全てが無効になった。
「ジャンヌ・ダルク、それってまさか聖女のっ」
その名前を聞いて、驚きを隠せないアーシアにゼノヴィア。
「ジャンヌ・ダルクって、漫画とかでは知っているけど」
「たぶん、イッセー君が考えている人物と同じだよ、けれど、確かに戸惑うのも無理ないけど」
そうしながら、俺は魔力の消費が激しい。
「マスターは本当にこういう無茶をするんだからぁ!」
そうして、徐福が俺に文句を言いつつも、魔力を回復させようと周囲から吸収させる。
「まったくぅ」
「文句を言うなって」
その会話をしていると。
「マスター!」「分かっている令呪をもって命ずる!再びアヴェンジャーへ!」
黄金の光が霧散し、ジャンヌ・ダルクの姿が消えていく。その代わりに現れたのは——長い漆黒のロングヘアを靡かせた赤紫の瞳の少女。
「……ったく」
ジャンヌ・オルタは忌々しげに舌打ちを漏らした。その表情には疲労と怒りが交錯している。
「マスター? 一体どういうつもりなの?」
鋭い視線が俺に突き刺さる。しかし今はそれを気にしている暇はない。
シャルバ・ベルゼブブは完全に狼狽していた。だがまだ諦めてはいないらしい。怒りに震える指先でまた別の魔法陣を描き始めた。
「まだやる気かよ!」
俺が叫ぶと同時にジャンヌ・オルタが前に出て旗を掲げる。
「うっさいわね! もういい加減終わらせるわよ!」
彼女の声には明確な苛立ちが含まれていた。そしてその瞬間、旗先から凄まじい炎が噴出した。
「全ての邪悪を此処に……!」
ジャンヌ・オルタの目が真紅に輝く。彼女の周囲に渦巻く炎がさらに巨大化していく。
「剣は憎悪、竜は復讐、炎は応報! 刺し貫くは――何もかも!」
詠唱と共に地面が砕け散った。シャルバの足元に無数の炎の槍が突き出す。
「なっ……これはっ……!」
シャルバが悲鳴にも似た声を上げる。しかしもう遅い。ジャンヌ・オルタは既に最終段階へと踏み出していた。
「『吼え立てよ、我が憤怒』!」
刹那――シャルバを取り囲む炎の柱が炸裂する! 紅蓮の火柱の中で、シャルバの断末魔が響き渡った。
黒い槍が次々と彼の身体を穿ち、最後には凄まじい爆発が全てを飲み込む。
爆風と煙が晴れた後には何も残されていなかった。ただ荒廃した空間だけがそこにあった。
「終わったわね」
ジャンヌ・オルタが冷静に呟く。しかしその口調には一抹の満足感が滲んでいる。
そのまま、ジャンヌ・オルタは、そのまま戻ってくる。
同時に。
「あっあの、本当に、ジャンヌ様なんですか?」
「・・・様付けとかどうでも良いわ、確かにジャンヌっていうのは間違いないわよ」
そうしながらも、ジャンヌ・オルタは心底嫌そうな顔をしていた。
「本当に聖女なのか」
「そういうのは勝手に呼んだだけよ、それに私には関係ない話だから」
「いや、自分の話では」
「・・・まぁ、色々とあったからねぇ」「本当に色々とあったからねぇ」
ジャンヌ・オルタの事情を知っている俺と徐福はそれ以上は言えずにいた。
「はぁ、とにかく、どっちにしろ私の生前なんてどうでも良いし、そんな名も今はどうでも良いの」
「そうなんですか」
そうしながらも、ジャンヌ・オルタは見つめる。
「それじゃ、聞くけど、あんたは聖女だった時と今の時。どっちが楽しいの?」
「ぇっそれは」
「私には、生きていた頃にはそういう機会はなかったわ。だからこそ、あんたを見ているとムカつくのはそういう訳よ」
それだけ言って、ジャンヌ・オルタは。
「だから、とりあえずは幸せ、噛み締めなさいよ」
そう言った彼女の言葉に、アーシアは。
「はいっ!」
そう明るく呟く。
そうして、ジャンヌ・オルタが会話をしている間に、俺と徐福は。
「それで、こいつどうするの?」「とりあえずは、あの人に連絡だな」
生き残っているディオドラの今後についてを密談していた。
幸い、ジャンヌ・オルタのおかげで、こちらの会話は聞かれずに済んだ。
最も。
「・・・面白い巡り合わせしている」
こちらを見ていた存在の気配に気づかなかった。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王