サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
黒煙が晴れる前に次が来る。
「マスター!右だ!」
青子の警告で俺は慌てて飛び退いた。コンマ一秒前まで自分がいた空間を機械生命体の刃が掠めていく。
(早い……!)
空中で身を捻りながら体制を整える。さっきまでリビングだった場所は既に廃墟同然だ。ソファは切断されテーブルは粉砕され、壁には無数の亀裂。
「青子!距離とって狙撃!俺を盾にするなよ!」
「言われなくてもわかってる!」
彼女は跳躍し天井の梁に取りつくと掌を掲げた。紫の光粒が収束し――
**ズガァンッ!!**
高出力魔力弾が炸裂。だが機械生命体は異常な反射神経でこれを回避。
「ちっ……避けたか!」
着地した青子が悔しげに舌打ちする。俺も改めて観察。あの刃……金属を加工してるんじゃなく液状の何かで形成されてる。
(液体金属兵器かよ!しかも自己再生機能つき)
「青子!連射しろ!アイツ再生能力ある!」
「了解!」
青子が再び紫光を放つ。今度は断続的な射撃。光弾が雨霰と降り注ぎ――
硝子細工のように機械生命体の甲殻が剥がれ落ちる。
(よし、効いてる)
しかしこちらも消耗戦。青子の額に汗が滲み始めたところで――
「マスター、弾切れ近いわ」
「わかった……って待て!」
目の端で捕捉。二体目が奇襲。鋸状の刃が唸りながら青子の死角へ迫る。
(間に合わん!)
叫ぼうとした刹那――
ギィィンッ!!
金属音が炸裂。視界の隅で人影が翻る。
「……!」
長い黒髪が風に靡き、二刀流の刀が交叉する。刃を弾き返した少女の袖から舞う布地――それは赤と青の和装。まるで舞台衣装のような華やかさ。
そして、俺はそれを見た事がある
「武蔵ちゃん」
かつて、俺を幾度となく救ってくれた人物。
そして、縁という意味では最も深い宮本武蔵。
彼女と同じ武器を持っている。
「お前は……」
思わず呆然とする俺をよそに少女は低く呟いた。
「無駄口叩かないで。集中して」
鋭利な声音。振り向いた横顔に絶花の面影。
だが――違和感。
絶花にしては落ち着きすぎてる。そしてあの赤青の装束。まるで彼岸花と桜を溶かしたような色彩が少女の輪郭を縁取っていた。
「絶花……じゃないのか?」
問いかけに少女は目もくれず戦闘態勢に入った。刀の鞘から引き抜かれた刃が妖しく光る。
「説明はあと。来るよ」
少女が軽くステップを踏むと――地面を蹴り一気に加速。機械生命体が放つ幾筋もの触手を踊るように回避しながら懐へ潜り込んだ。
ザシュッ!
一刀。少女の踏み込みと共に甲殻が裂ける。噴出する油液を浴びる前に跳躍――続けて二刀目が閃光となって縦断。
ズガァァン!!
爆ぜる金属の断面。機械生命体が機能停止に陥る。残骸が崩れ落ちる中――少女は煤けた廊下に立つ俺達へ向き直った。
「おせえぞ……」
呆れたような青子の声に少女は無表情で返す。
「これ以上犠牲増やすつもりだった?」
「ぐっ……」
悔しげに顔を背ける青子。俺は喉仏を上下させながら訊いた。
「君は……誰なんだ?」
少女は初めてまともに俺を見据えた。その瞳――深い琥珀色。絶花と同じ色彩。
「――朱音」
次回の王は
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妖怪王
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怪獣王
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幻想王