サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
硝煙が漂う廃墟同然の部屋。倒れた機械生命体の残骸を踏み越えながら、赤と青の着物姿の少女――朱音が静かに口を開いた。
「未来は変えなきゃいけない。お前がここで死ねば……もっとひどいことになる」
俺は埃まみれの床に尻餅をついたまま呆然と彼女を見上げた。
「未来……?俺が死ぬと?」
「そう」
朱音の琥珀色の瞳がまっすぐ俺を射抜く。
「でも本当は会う予定じゃなかった」
ぽつりと零れた言葉に首を傾げた。
「どういう意味だ?」
「関わると……過去が変わるから」
歯切れの悪い言い方に違和感を覚えつつも追及できずにいると、突然青子の声が割って入った。
「なるほどね。だから黙ってたわけか」
青子は袖で額の汗を拭いながら、しかし確信に満ちた口調で続けた。
「アンタから感じる魔力の流れ。不自然な歪みがあるわ。時間を超えてきた痕跡よ」
朱音の眉がかすかに動いた。
(やはり)
俺の中で点と点がつながる。朱音の立ち振る舞い。絶花と同じ剣捌き。そして――
「なぁ朱音」
ゆっくりと立ち上がって俺は問いかけた。
「お前って、もしかして……絶花の娘か?」
沈黙。朱音の睫毛がわずかに伏せられる。
「……答えないってことは肯定とみなすぜ?」
「……」
なおも沈黙を選ぶ朱音だったが、その仕草ひとつとっても既視感があった。例えば俯く角度。戦闘後の呼吸の整え方。どれも絶花と瓜二つだ。
「やっぱりな」
俺は苦笑交じりに呟いた。
「道理で俺を知ってるわけだ。未来では俺の娘になってるってことか」
朱音は口を閉ざしたまま微かに肩を震わせた。否定しないということは――認めたも同然だ。
硝煙立ち込める室内。ついに正体を看破された朱音だったが――その反応は意外にも。
「…………」
まるで氷像のように表情を変えぬまま立ち尽くしていた。
(え?あれ?)
俺と青子は顔を見合わせた。拍子抜けするくらい無反応だ。怒るでもなければ照れるでもなく、ただそこに佇んでいる。
しかし――
「おい……震えてるぞ?」
俺が指摘するとピクリと肩が跳ねた。よく見ればその拳は微かに震えているし、袴の裾も微動している。そして極めつけは――
「……ふーっ……ふーっ……」
深く吐き出される吐息。明らかに緊張を抑え込んでいる音だ。
「アンタ意外と分かりやすいわね……」
青子が呆れたようにため息をつく。その視線の先では朱音が無表情のまま頬に冷や汗を垂らしている。クールな雰囲気とは裏腹の明らかな動揺っぷりに思わず苦笑いが漏れた。
「まぁ要するにだ」
俺は埃まみれの床に胡坐をかきながらまとめた。
「お前は絶花の娘で、未来から俺を守りに来た。だけど過去干渉は厳禁だから極力関わらないつもりだった。そんなとこか?」
沈黙。そして――
「……」
朱音がぎこちなく首を縦に振る。その仕草があまりにも幼くて、普段の凛とした態度とのギャップに笑いを堪えるのに必死だった。
「ったく。クールぶっちゃって……本当はポンコツなのね?」
青子がニヤニヤしながら追い打ちをかける。朱音の耳がみるみるうちに赤くなった。
「うぅ、だから会いたくなかった、お父さんって、こういう所が鋭すぎるからっ!というよりも、この時から」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王