サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
薄暗い教会の中は重苦しい緊張に包まれていた。
ステンドグラスから差し込む夕陽が埃っぽい床に奇妙な影を落とす。
「……まさか、ここに来るとはな」
中央の祭壇付近に立つ男――史文恭と名乗った幹部が嗤う。その目は獲物を捕らえた蛇のように細い。
「おっと、これは意外。まさか唯我太郎ご本人直々のご登場とは」
エミヤが太郎の半歩前に出る。白い外套が風もないのに翻った。
「貴様らが『お迎え』の準備をしていたことは把握済みだ」
史文恭の背後に控えていた十数名の構成員が一斉に動き出す。
それぞれが異なる時代の装備を身につけており、明らかに歴史上の英雄の血を引く者たちだった。
「立会人?何の話だ?」
「おいおい、それはないだろ。お前の所の構成員の1人が絶花に決闘を申し込んだ。俺はその立会人を頼まれたからな」
「決闘だと?何を言って「だから」っ」
俺はそのまま周囲にいる奴らを睨む。
「英雄同士の決闘を邪魔する外野を黙らせる。それが王としての務めだろ」
「王だと?」
史文恭が嘲笑う。
「お前の事は噂で聞いてた。だが、まさかそんな馬鹿な事を言う奴が本当にいるとはな」
そう、大声でこちらを笑う。
誰がなんと言われようと、俺は自分の夢を諦めるつもりはない。
まぁ最も。
「それでムカつくかどうかは別問題だけどな、それにお前達の考える英雄よりは十分良いと思うがな」
「・・・貴様」
俺の言葉に対して、史文恭達は完全にきれていた。
それは、同時に戦闘が始まる合図でもあった。
「アーチャー、殺さず、鎮圧しろ」
「了解した、マスター、指示を頼む」
俺からの言葉を聞くと共に、エミヤは瞬時にその両手に武器を生成した。
それと共に史文恭は眼を見開く。
「干将・莫耶っ、だが、本当に中国の英雄なのか」
瞬時にその武器を見て、エミヤの正体が分からずに戸惑う。
だが、それはあまりにも大きすぎる隙だった。
銀閃が宙を舞った。
エミヤの双剣——干将と莫耶——が十字に交差し、最初の敵の突進を弾く。教会の石床を蹴った靴跡が焦げたように煙を上げるほどの加速。敵が反応する暇もなく、エミヤの影が二人目の懐に滑り込んでいた。
「遅い」
冷徹な呟きと共に右腕が唸る。峰打ちの一刀が喉元へ正確に叩き込まれる。倒れる間もなく三人目の槍が脇腹を狙うが——
「ッ!?」
槍先は虚空を貫いた。エミヤの体が螺旋状に捻れ、その軌道を完全に避けつつ左刃で柄を切断。返す刀で膝裏を払う。
「くそ……っ!」
四人目が雷属性の拳を放つ。教会全体が紫電に包まれる中でエミヤの外套だけが逆光に浮かび上がる。
「雷迅槍技・虎牙衝!」
轟音と稲妻が迸る空間で——乾いた金属音がひとつ。干将の刃が拳の寸前で火花を散らしていた。
「……ほう」
感嘆符と共にその刃先は下方へ流れ、肘関節の腱を断つ軌道を描く。致命傷でないが戦闘不能には充分だ。
一方的に蹂躙されていく仲間たち。史文恭が歯噛みする。
「全員まとめて行け!」
五人六人と連続して躍りかかる。斧持ち、弓使い、巨大盾を抱えた巨漢まで——多種多様な武具が乱舞する。
「エミヤ」
「了解した」
刹那——
双剣が炸裂した。
「壊れた幻想」
乾いた破裂音と共に鋼が砕け散る。硝煙と煌めく鉄片が嵐となって前方へ爆散する。斧も盾も弓矢も粉塵の中に埋もれた。
「ガッ……!?」
正面にいた者たちは壁に叩きつけられ呻く。衝撃波だけで意識を刈り取られる者もいる。視界を奪われた背後の射手が盲撃ちするが——
「狙いが甘い」
煙幕を突き破ってきたエミヤの左回し蹴りが正確に脇腹を抉る。
教会内部を占拠していた英雄派の精鋭たちは残りわずか。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王