サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
夜の公園。ベンチに並んで座る俺たち。絶花がぶすっとした顔でブランコを漕いでいる。さっきまでの決闘の熱がまだ頬に残ってるけど、今は完全にグチモードだ。
「ったく……ホント信じられないんだから」
「ん?何が?」
「この駒王学園だよ!初日から遅刻ギリギリで走りまくったし!」
絶花がブランコを大きく揺らす。その姿が妙に子供っぽくて可愛い。
「しかも友達ゼロだし!教室でぼっち飯なんて初めてですよ!?」
「まあ、お前ってあんまり喋るタイプじゃないしな」
「違う!みんな近寄ってくるのは先輩との関係とか聞いてくるだけで……友達として見てないんですよ!」
ふむ。そうなのか?
「しかも!毎日毎日大変な事!」
ブランコが最高潮に達したところで飛び降りた絶花が振り返る。ライトアップされた噴水の光に照らされて、怒った顔がキラキラしてる。
「今日みたいなトラブルじゃなくてマジなやつも増えたし!」
「へぇ……結構大変だったんだな」
肩をポンと叩かれながら言われるけど、なんか妙に距離近いな。
「だいたい!太郎が何だかんだと優遇されるから私も巻き込まれてるんです!責任とってくれませんか?」
「え?なんで俺のせいなの?」
「知らない!!」
ぷいっと顔を背けた絶花。耳まで真っ赤だ。
(あれ?怒ってる顔も結構可愛いな)
そう自分に言い聞かせながらも心臓が高鳴る。
「とにかく!明日からも付き合うって約束してね!」
「おう。いいよ」
絶花の目に一瞬嬉しさが浮かんだけど素早く引っ込んだ。
「なぁ絶花……」
少し迷ってから言葉を続けた。夕暮れのベンチで肩を寄せ合う絶花が一瞬キョトンとした顔をする。
「駒王街に来て後悔してないか?」
その質問に絶花の動きがピタリと止まった。沈黙が流れる。公園灯に照らされた横顔が少しずつ紅潮していくのがわかる。
(あー……また変なこと聞いたかも)
慌ててフォローしようとした瞬間──
「……してないよ」
小さな声だった。俯いたまま両手をもじもじさせている。
「むしろ……毎日すごく楽しい。だって……」
顔を上げた絶花の瞳が潤んでいた。ライトアップされた噴水が背景に輝いている。
「何よりも……太郎がいるから」
心臓が早鐘を打ち始めた。鼓膜の奥で自分の血流がゴーッと鳴る。
(これって……もしかして……?)
でも次の瞬間──
「それに先輩ともお話しできるし!料理研究部の活動も面白いし!」
急に元気いっぱいに付け加えられて拍子抜けした。なんだか肩透かしを喰らった気分。
(……やっぱり気のせいか)
苦笑いしながら頭を掻く。
「そっか。ならよかった」
「うん!」
満面の笑みで頷く絶花。その無邪気な表情に胸がキュッと締め付けられる。
(こんなに近くにいるのに……お互い何も知らないんだな)
ふと思い立って口を開いた。
「俺もさ……」
絶花の耳がぴくんと反応する。
「お前がいるから……もっと楽しくなったよ」
その言葉に絶花の瞳が大きく見開かれた。唇が何かを言いかけて閉じる。夕焼けが彼女の輪郭を黄金色に染めていく。
(……あれ?また何か変なこと言ったかな?)
内心焦っていると──
「……ありがとう」
ぽつりと零れた一言に全身が火照った。
しばらくの間、二人とも黙ったまま空を見上げていた。星がひとつまたひとつと輝き始める。こんな時間は初めてかもしれない。心地よい沈黙が流れる中で確かな温もりだけを感じていた。
「ねぇ太郎……」
「ん?」
「これからも……一緒にいてね」
絶花の指先がそっと俺の袖をつかんだ。
(……もちろん)
言葉にする代わりに強く頷く。
「・・・青春だな」「・・・決闘を終わった後に、まさか、これを見せられるとはな」
そんな俺と絶花をリルベットとエミヤに見られている事に気づかず。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王