サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
昼下がりのことだった。
ピンポーン♪
「ったく……誰だよこんな時間に」
怠惰な午後を邪魔された俺は苛立ち混じりに玄関を開けた。立っていたのは……
「……」
黒いゴシックドレスに身を包んだ少女。長い黒髪に宝石のような黒い瞳が印象的だ。小学生くらいに見えるが、なぜか大人びた雰囲気を漂わせている。
「なんだ? 迷子か?」
俺の問いに無表情のまま首を振る。
「我がオーフィス」
唐突に名乗り始めたので一瞬思考停止した。この娘が有名な"無限の龍神"だと?
「……冗談きついぞ。新手の宗教勧誘か?」
オーフィスと名乗る少女は眉ひとつ動かさず言った。
「太郎に会いに来た」
「俺に? 何の用だよ」
「興味があった」
簡潔すぎる説明に頭痛がしてきた。そもそもどうやって俺の家を特定したんだ?
「とりあえず中に入れ。寒いし」
「承知した」
オーフィスは玄関に上がると不意に言った。
「この匂い……」
俺の部屋を一瞥してから台所の方へ歩いていく。
「お菓子はある?」
「あるけど……待てよ?お前って食べ物とか食べるのか?」
「我だって食べたい時は食べる」
冷蔵庫を開けようとする。
「あ……」
声に出した時にはもう遅かった。冷蔵庫の扉を開けたままフリーズする俺。
オーフィスの口元には今まさに2個目のプリンが滑り込んでいくところだ。
「ちょっと待て待て待て!」
慌てて手を伸ばすが遅すぎた。彼女は完璧なフォームで最後の一掬いを舌にのせ、「うむ」と頷く。
「おいコラそれ…」
「美味い」
「だから感想いらねえって!」
必死で冷蔵庫の中を確かめる。3つのプリンカップがあったはずが、無惨にも空になった容器が二つ。
「あと一個残ってればなんとか……」
最後の希望にすがる俺の横でオーフィスが最後のプリンに手を伸ばす。
「ちょっ!やめろ!それだけは!それだけは……」
「美味い」
「終わった……」
膝から崩れ落ちる俺。
「やばい……」
冷蔵庫の前で凍りつく俺。廊下から弾むような足音が近づいてくる。
「ふぅ~ん♪ふふん♪」
弾むようなステップとともに現れたのは黒ゴス姿のゴスロリ少女。普段の彼女を知るなら戦慄するほどの破壊力を秘めていると分かる。
「太郎!今日は例のプリン買ってくれたわよね?」
その明るい声に俺は背中に冷や汗が走るのを感じた。目は冷蔵庫に釘付けで、彼女には見えない位置に立っているオーフィスの存在が恐怖に拍車をかける。
「あ、ああ……今日は実は……」
「本当か?じゃあ早速いただくぜ!」
意気揚々と冷蔵庫を開けるゴスロリ少女。次の瞬間、彼女の顔色がみるみる変わる。
「な……な…なんだとぉぉぉぉぉぉっ!?」
絶叫と共に空になったプリンカップ三つが宙を舞う。そのまま彼女は冷蔵庫の前で膝をついた。肩がブルブル震えている。
「俺のプリンが……俺の……」
「ちょ、ちょっと落ち着けよテュフォン」
つい名前を呼んでしまった。彼女がゆっくりと振り返る。黄金の瞳には涙が浮かんでいた。いつもなら高笑いしながら破壊の限りを尽くす彼女だが今日は違う。
「プリン三つ……楽しみにしてたのにぃぃ」
泣き声交じりの弱々しい抗議。いつもとのギャップが凄まじい。
「悪い……実はオーフィスが」
そう言いかけてハッとする。彼女の指が机上のプリン皿に向けられていることに気づいたからだ。
「お前が犯人かぁぁっ!」
衝撃波が走る!部屋の壁にヒビが入る勢いだった。慌てて飛びかかる俺。
「待て!事情を話せば分かってくれるから!」
「うるさい!私の楽しみを奪った罪は重いぞ!」
拳を振り上げるテュフォンを抑えながら必死に弁解する。
「聞いてくれ!オーフィスは初めてうちに来た客人で!」
「関係ないわよ!」
そうしていると、オーフィスはその少女を見て、首を傾げる。
「…不思議?以前、太郎から感じたドラゴンに似ている?けれど、今、近くだと、違う感じ」
それと共に。
「ティフォン!こいつをぶっ倒すわよ!」
次回の王は
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妖怪王
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怪獣王
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幻想王