サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
シャンデリアの光が大理石の床に反射し、グラスの触れる音が優雅に響く。
名門悪魔一族の主催する晩餐会は、華やかな衣装に身を包んだ紳士淑女で賑わっていた。だが、僕がオーフィスとテュフォンを伴って入場した瞬間——
空気が凍りついた。
皆一様に視線を逸らし、会話が途切れる。給仕はワインを落とし、女主人の扇子が震えている。
「……怖いですね」
テュフォンが小声で呟いた。黒いワンピースをまとった姿は可憐な少女だが、彼女のテュフォンとしての名は勿論だが、それ以外にももう一つのある力。
その力に関しては周囲にはまだ隠している。
オーフィスは気にしていない様子。
彼女たちの存在を知ってか知らずか、周囲の悪魔たちは遠巻きに僕たちを窺っている。中には明らかに聖句を唱えそうな司祭まで混ざっている。
「ふむ。やはり騒ぎになるな」
俺は肩を竦めた。
「帰るか?」
「いえ」
オーフィスが首を振る。
「料理、食べたいから」
「そこにいる奴と同意見なのは、気に食わないけど、その通りね」テュフォンも同意するように頷いた。しかし彼女たちの視線はどこか不安げだ。かつてこの世界で畏怖を集めていた存在が、今や好奇と恐怖の対象となっている事実に傷ついているように見える。
「無理はするなよ」
俺は周囲を見回して言った。
「・・・ふんっ、別に気にしていないわよ」
テュフォンは普段と変わらない態度で返す。
だがその手が僅かに震えている。
「そうか。でも辛くなったら言えよ。すぐに連れて帰るから」
「・・・感謝する」
オーフィスは小さく頷いた。
「マスター、大丈夫だよ。あなたがいれば怖くない」
テュフォンも微笑む。
俺たちはそのまま歩みを進めた。確かに周囲の目は冷たかったが、それ以上に——
俺が彼らと同じように2人を扱わないことが重要だった。
テュフォンはいつも通りの悪戯っぽい笑顔で周囲を牽制している。
オーフィスは黙々と料理を吟味している。
「これが太郎の好きなものか」
彼女はローストビーフのプレートを前に興味津々だ。
「ああ。でもまず俺の分は残してくれよ?」
「・・・善処する」
オーフィスの淡々とした返事に、俺は苦笑するしかない。
こうしてみると本当に普通の女の子だ。
それが恐ろしい力を持っているというのが信じられないほどに。
華やかなディナーの席でオーフィスが珍しくナイフとフォークを使いこなし、テュフォンがケーキを口に含んだ瞬間——
「・・・こんな時に」
「テュフォン」
「敵襲よ、本当に面倒ね」
その一言で、俺はため息を吐きながら、立ち上がる。
次回の王は
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