サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
夜空を切り裂く鋼鉄の咆哮。
三つ首の龍機、テュフォンの装甲表面を紫電が這い回る。サマエルの放つ聖なる雷霆魔法が容赦なく降り注ぎ、俺たちの機体を幾度となく撫でていく。コクピット内では警告ランプが狂ったように点滅し、アラームが耳を劈く。
「くそっ……!」
歯を食いしばりながら前方を見据える。テュフォンの操縦桿代わりとなる魔力結晶が握り潰さんばかりに締め上げられていた。彼女の呼吸が荒い。当然だ。このサイズでこれほどの高出力機動を継続するのは相当な負担のはずだ。
「マスター!奴の攻撃頻度が上がって――!」
エファメロスの叫びと同時だった。サマエルの咆哮と共に天空が白く染まり、数百の魔力弾が雨のように降り注ぐ!テュフォンは咄嗟に急降下。擦過寸前の高度で疾走する。
ゴオオオオオン!!
谷間に着弾した魔法弾が岩塊を吹き飛ばし、火柱と粉塵が渦を巻く。それでもテュフォンは止まらない。左右に揺さぶりながらS字を描くように滑翔する。腹の底を抉るようなGが何度も押し寄せ、俺は胃の内容物が逆流しそうになるのを懸命に堪えた。
コクピットスクリーン越しに見るサマエルの姿は未だ健在だ。あの堕天使の翼がばさりと広がり、さらに強力な魔法陣を展開している。
「っ!」
再びサマエルの巨体が動いた。奴の腹部に浮かぶ禍々しい魔法陣が七色に明滅し、螺旋状に伸びる光の帯が夜空に広がる。次の瞬間、空間そのものが歪んだ。避けなければ即死だ!
「マスター!」
「任せろ!」
俺はとっさにテュフォンの回避操作を補助する術式を起動させた。青白い軌跡を引いて三つ首の巨体が急上昇する。真下を通過した光の奔流が大地を焼き尽くし、森羅万象を蒸発させた。振り返る暇もない。
(だが……)
奇妙な違和感が胸をよぎる。先ほどから微かに感じるのだ。サマエルの魔法発動前――奴の巨体が微妙に重心移動を行う一瞬。その刹那に……
「……見えた!」
その攻撃を避けられた。
それだけではない。
「時間は十分よねぇ!」
サマエルに対して、まるで宣言するように言う。
「ここからは、私達が一方的にやらせて貰うわよ!」
サマエルの巨体が怒号と共に動いた。堕天使の上半身が猛然とこちらを向く。その眼光は憎悪に燃えており、無数の魔力弾が虚空から生まれては放たれる。
「マスター!来るわよ!」
エファメロスの警告と同時だった。閃光が夜空を埋め尽くす。
「構わん!全速で突破する!」
俺の叫びと共にテュフォンの機体が光を切り裂く。その瞬間、先ほどまでの回避行動とは全く質が変わっていた。
サマエルの攻撃が……まったく届かない。
相手の表情に明らかな困惑が浮かんでいるのがわかる。巨体の動きが一瞬鈍る。
(読めている……奴の攻撃タイミングも軌道も全て!)
「面白いだろう?」
そう告げてやった。サマエルの咆哮が天地を震わせるが、もはや威嚇にすらならない。
「マスター……今ならいけるわね?」
「当然だ」
「観測は十分に終わったからね」
それと共に、俺達が見つめた先に。
「「イプシロン!」」
「勿論です!」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王