サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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龍同士の繋がり Ⅹ

「ん?ザッハークって……誰だ?」

 

隣に立っていた兵藤が首を傾げる。彼はサマエル戦の衝撃からまだ立ち直れていないようだった。

 

「お前は相変わらず知識が偏ってるな」アザゼルがため息をつく。「ザッハークは古代ペルシャの叙事詩『シャー・ナーメ』に出てくる双頭の蛇だ」

 

「え?蛇?」

 

「そうだ。イラクサの草の汁を塗った剣で斬られた時に、そこから現れた双頭の蛇だ。バハマンという名の大王の首の傷から這い出したんだ」

 

アザゼルが指先で自分の首筋をトントンと叩く。

 

「その蛇は育つにつれ異常な食欲を持ち、毎日2人の子供を喰わねば生きられないようになった。そこでバハマンは毎日死刑囚を処刑し、その血肉を蛇に与えたんだ」

 

「……なんだその設定」

 

「物語後半では人々の怨嗟を買ったバハマンは国を離れ、その後を追った英雄ファリードンがついに討伐する。ザッハークは地中深く封印され、最後の審判まで眠り続けるはずだった――」

 

「……だった?」

 

「そう。つまり目の前のこいつは偽物の可能性が高い」

 

アザゼルが鋭い目つきでザッハークを見据える。

 

「そう思いたい所だけど」

 

「あらら~? 聞こえちゃった?」

 

リゼヴィムが両手を広げる。

 

「そうよぉ、目の前のソレはザッハーク。ただしオリジナルじゃないけどねぇ」

 

「なるほど」

 

アザゼルが低く呟く。

 

全身に鳥肌が立つ。本能が警鐘を鳴らしていた。

 

「太郎くんさぁ……そのお手手に刻まれてる令呪。それってサーヴァントと契約してる証拠だよねぇ?」

 

静寂が訪れた。兵藤やリアスたちが困惑した表情で俺を見つめる。

 

「サーヴァント……?」

 

アザゼルの目が細くなる。

 

「そう、本来ならば聖杯を求める戦いでしか呼び出す事が出来ないサーヴァント。その存在はこの世界ではあり得ない!けれど、太郎君はそれを呼び出す事が出来たのはぁ」

 

「別に大した事はない。俺が過去に英霊達と戦った、それだけだ」

 

「そうだねぇ、それも、こんな戦いがお遊びと言えるような戦いを、いや戦争を駆け抜けたマスターならばね」

 

そうして、リゼヴィムは心底面白そうにこちらを見つめる。

 

最も。

 

「それで、お前はどこでそれを知ったんだ」

 

「ふふっ、太郎君ってばぁ、そんなに睨まないでよぉ」

 

「……」

 

兵藤達の顔が強張る。彼の表情に一瞬で恐怖の色が広がるのが分かった。

 

「太郎……お前……」

 

「俺は何も隠していないぞ」

 

俺の声が冷たく響く。

 

兵藤は唇を噛みしめた。

 

「お前にとって戦いとは遊びじゃない。だが俺にとっては日常だ」

 

「あらら~? ちょっと怒っちゃった?」

 

「あらら~? ちょっと怒っちゃった?」

 

リゼヴィムがニヤリと笑う。その顔には嘲笑と憐れみが滲んでいた。

 

「まぁいいや~。今日はもうおしまいにするよ~」

 

彼がパチンと指を鳴らす。するとサマエルの亡骸が光の粒子となり、リゼヴィムの手のひらに吸収されていく。

 

「お前……何を企んでいる?」

 

「何も企んでいないよ~。ただ、君がどれくらい強いのかテストしただけ~」

 

彼の笑みが深まる。

 

「それにしても面白いよね~。サーヴァントっていう使い捨ての駒を使って、こんなにも強くなるなんてさぁ」

 

「使い捨て……だと?」

 

俺の声が低く沈む。

 

リゼヴィムは両手を広げた。

 

「だってそうでしょ~? サーヴァントって結局は『死者の影法師』なんだから~。いくら強くても『本物』じゃないんだよぉ?」

 

その瞬間──

 

「マスター!!!」

 

エファメロスの怒号が空気を切り裂いた!

 

彼女の瞳孔が収縮し、額に青筋が浮かぶ。

 

「テメェ……」

 

イプシロンも拳を握りしめ、爪が掌に食い込む。

 

俺はゆっくりと息を吐き出した。

 

「……言いたいことはそれだけか?」

 

リゼヴィムが片眉を上げる。

 

「ん~?」

 

「俺は確かに『令呪』を宿している」

 

指先で左手の刻印をなぞる。

 

「だがな──俺にとって『サーヴァント』ってのは使い捨ての駒なんかじゃない」

 

周囲の空気が張り詰める。

 

「一緒に未来を目指す『仲間』だ」

 

「・・・」

 

リゼヴィムは呆れたように肩を竦めた。

 

「あ~あ~。やっぱり青臭い理想主義者だったかぁ」

 

彼が踵を返す。

 

「ま、今回は君の顔を立ててあげるよ~。また遊ぼうね~♪」

 

最後にウィンクを残し、リゼヴィムの姿が薄れていく。まるで最初から幻だったかのように──

 

静寂が訪れた。

 

それにより、戦いは一時的に終わった。

 

最も。

 

「・・・さて、候補が山程いるけど」

 

「いや、こっちの方にも説明してくれないか」

 

「説明って?」

 

「・・・以前から英雄を従えているのもそうだが、そもそもサーヴァントってのは一体」

 

「んっ、テュフォン達の事だぞ」

 

「いや、それは分かるけど、お前が、その英霊達と一緒にいるのか」

 

「色々とあった」

 

「その色々を!」

 

そう言うが。

 

「・・・色々あったんだよ、第一、言った所で嘘だと思うような出来事がな」

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
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