サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
戦場に静寂が戻った。
リアスが最初に口を開いた。
「……あ、あなたたちって……」
その声には明らかな畏怖が混ざっていた。
イッセーが震える手で自分の胸を押さえる。
「あんなデカブツを一撃で……?」
ティアマトがゆっくりと生命の海に戻っていく中、太郎は平然と立っていた。
汗ひとつかいていない。表情には一片の緊張もない。
まるで「当然だ」と言わんばかりの態度だった。
「…………」
リアスが口を閉ざしたのは、その態度こそが最大の衝撃だったからだ。
(まるで恐怖を感じていなかった)
戦いの最中も、スルトとイヴァンが共に襲いかかる瞬間も。
太郎は一切の動揺を見せなかった。
ただ計算し、指示し、そして決着させた。
それは――慣れだった。
幾度となく死線を超え、人知を超えた怪物たちと対峙してきた者の余裕。
「お疲れさん」
太郎がティアマトに労いの言葉をかける。その声にさえ緊張感はない。
それを目の当たりにしたリアスが喉を鳴らした。
(私たちが震えあがっていた間……彼は“いつもの作業”くらいにしか思っていなかった)
アーシアがポツリと漏らす。
「……やっぱり……太郎さんは……普通の人じゃありませんね」
その言葉に一同が無言で頷いた。
(太郎にとって、あの二柱すら日常の延長線上に過ぎないのか)
イッセーがごくりと唾を飲んだ。
「これからも……こんな戦いを続けていくつもりか?」
太郎は答えなかった。
代わりにわずかに肩をすくめる。
「戦うかどうかは、そいつ次第だ」
その言葉に込められた無数の経験と犠牲を感じ取り――
リアスたちはようやく理解した。
太郎は命を懸ける者ではなく、“命を秤に載せて扱う者”なのだ、と。
そして同時に知った。
自分たちの知っている「死」や「敗北」とは次元の異なる領域があることを。
(私たちはまだ……“甘い”)
その認識が全員の胸に重く沈み込む中――
太郎は涼しい顔で空を見上げていた。
まるで次の嵐が来るのを待ち構えるように。
ティアマトが戦場から離れ、俺たちの前には巨大な二体の遺骸だけが残された。誰もが安堵のため息を吐いた瞬間――
「これはこれは随分と、とんでもないねぇ、後輩」
軽薄な声が響いた。紫の冥界の空気が凍り付く。振り返ると、一人の男が瓦礫の上に腰掛けていた。
ベリル・ガット――最も警戒していた男が。
若いギャングのような服装は汚れひとつなく整えられている。しかし、そのリーゼント風の前髪と薄い顎鬚が妙な威圧感を醸し出していた。一見すれば軽薄なチャラ男にしか見えない。だが俺にはわかる。
奴の目に浮かぶ侮蔑と残忍さは紛れもない捕食者のそれだ。
「おやおや、みなさん固まっちゃって。そんなに怖いですか~?」
ベリルはニヤリと笑い、周囲を見渡す。リアス先輩が警戒心を露わにする。
「あなた……まさか彼が?」
「ああ」
俺は低く答えた。
「奴こそが――」
「はいはーい!ご推察通り!俺こそが今回の『犯人』ってやつさ」
ベリルがひらひらと手を振る。その動きにすら隙がない。俺は油断なく観察する。奴が現れたのは予想外だが、これで確信した――リゼヴィムとこいつは裏でつながっている。
「それにしても後輩」
ベリルが立ち上がり、一歩踏み出した。
「随分と成長したようじゃないの、あの時よりもますます化け物のような精神じゃないか」
「・・・そういう先輩こそ、マシュに振られて落ち込んでいると思っていたが」
「はっ」
それに対して、ベリルは楽しそうに笑う。
「いやぁ、やっぱりお前は最高だなぁ。久しぶりに会ってこんなにも愉快な気分になれるとはなぁ」
「・・・それで」
そうして、俺は淡々と尋ねる。
「ここで現れたって事は俺に会いたくなったのか?」
「当然だろう、まぁ、色々と事情があってな。リゼヴィムの奴を追い詰める準備も出来ている最中なんだがな」
それと共に。
「今度こそ、後輩にはぜひとも俺にマシュを渡して欲しいと思ってな」
「断る」
「そうかそうか、だったら死ね」
それと同時にティアマトが放った一撃。
だが、それは既に防がれた。
それだけではない。
「なっ」
それは、他の面々が見ても驚きだろう。
それは、ベリルが全くの別人へと姿を変えていた。
見た目は、先程までの若々しい姿からまるで老人のような姿に。
だが、アザゼル先生がその名を言う。
「オーフィスだとっ、一体、なぜ」
「えっ、けれど、オーフィスって」
「あの姿は俺も最近知ったが、オーフィスは特定の姿を持っていない。あれは以前、俺が会った時の姿だが、どういう」
「ベリルは、霊基を取り込んでその能力を使用する事が出来る魔術を持つ。おそらくは、オーフィスの欠片を持ったんだろうな」
「そういう事。いやぁ、それにしても、この世界って案外騙しやすい奴らが多くて助かったよ。おかげで色々と準備は出来たからな」
「・・・」
「だから、楽しみにしてろ。そして、お前を徹底的に苦しめて、殺す」
それを最後に、ベリルは消えていった。
「あれが、本当に人間なの」
その状況に、その場にいる面々は、呟く。
次回の王は
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