サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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月の先輩と最初の獣 Ⅳ

「見つからない為って」

 

「まぁ、それは別に良いかな。とりあえず、彼が帰ってくるのを待つだけかな」

 

そんな呟きと共に白野先輩は眠っている俺を見つめる。

 

この時の、俺は一体、どの時系列で、どんな戦いを行っていたか分からない。

 

ムーンセルが見せるもしもの世界は、あまりにも膨大過ぎた。

 

俺達が得た常識など、まるで通じない事なんて、既に数え切れない。

 

「それを行う危険性、こいつは分かっているのか。人間に、いや生物が耐えられると思っているのか。それに、そこまでしなくても」

 

「・・・そうだね、正直に言えば、私もここまでする必要はないと思っている」

 

「だったら」

 

「けどね、彼はそれでも止まらないと思う。だって、私もそうすると思うから」

 

白野先輩の言葉にアザゼル先生が息を飲む。

 

「そもそもね」

 

 白野先輩は窓際に立つ。西日が彼女の横顔を柔らかく縁取る。

 

「私も、彼も戦う理由なんてちっぽけなんだよ。生きたい。大切な誰かの為に戦いたいようにね」

 

「ちっぽけだって」

 

「だけど、そのちっぽけな理想が積み重なった時。人は神話になる。きっと彼はそれを分かってるから」

 

窓辺から差す陽光の中で彼女の横顔が黄金に輝く。

 

「彼と同じ道を進んだ私だからこそ分かる。あの特訓は危険かもしれないけど絶対に裏切らない」

 

「つまり信用できるってわけか」

 

「そう。それに……」

 

そこで白野先輩は言葉を切った。遠い記憶の海を掬うように目を細める。

 

「この世界の誰よりも脆くて強い彼が選んだ道を、最後まで見届けたい」

 

その声音には慈愛と決意が滲んでいた。

 

「それが同じマスターとしての私の願いだから」

 

ドラコーが不意に呟いた。

 

「まったく、愛の力が偉大と言うべきか」

 

彼女の口元に微かな笑みが浮かぶ。

 

「どうした?」

 

「いや、見えてきただけだ。騎手よ、貴様の決断が如何にして導かれしものか」

 

刹那──ガチャリッ! 扉が音を立てて開く。

 

「太郎!」

 

現れたのは血相を変えた宮本絶花。

 

息を切らしながらも目は鋭く、しかし揺らぎなく俺を見据えている。

 

「絶花ちゃん」

 

白野先輩が驚きと共に零す。

 

「ごめんなさい。どうしても嫌な予感がして探してました」

 

彼女は一歩近づく。俺の手を包むように握った。

 

「一体、何が」

 

「特訓をしているかな、生きるか死ぬかね」

 

「えっ」

 

白野の、その一言に対して、絶花は驚きを隠せない様子だった。

 

「えっと、あの子は」

 

絶花を知らない兵藤は、そのままリアス先輩に聞いてくる。

 

「確か中等部に最近だけど、転入した子だと聞いたわ。確か」

 

「太郎の幼馴染みだと聞いたな」

 

「えぇ!?」

 

それを聞いた兵藤は驚いた様子だった。

 

「白野さん、太郎は」

 

「命懸けの特訓中。たぶん100年分以上の体験をしているかもしれない」

 

「……っ!」

 

絶花は言葉を失う。

 

「太郎先輩って、ホント規格外ですよね」

 

そんなやりとりを眺めながら呟く一年生部員──

 

「……でも」

 

絶花は静かに拳を握りしめる。

 

「止める事は出来ないですね」

 

そう、絶花が白野先輩に問いかける。

 

「そうだね、邪魔はさせないけどね」

 

白野の、その言葉に嘘はない。

 

実際に、この場で特訓を行っている俺を止める事は出来ないだろう。

 

だけど。

 

「・・・だったら、一つ、お願いがあります」

 

「何かな?」

 

白野に、絶花は聞く。

 

「私も、その特訓に行っても良いですか」

 

「・・・ほぉ」

 

絶花の言葉に驚いたのは白野だけでなく周囲の者達も同じだ。

 

「どういうつもり?」

 

「ただ太郎の傍に居たいんです」

 

絶花が毅然と言い放つ。

 

「……でも死ぬかもしれないよ?」

 

「構いません。太郎が目指すゴールに辿り着くまで、ずっとそばにいます」

 

その瞳は鋼のように堅固だった。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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