サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「見つからない為って」
「まぁ、それは別に良いかな。とりあえず、彼が帰ってくるのを待つだけかな」
そんな呟きと共に白野先輩は眠っている俺を見つめる。
この時の、俺は一体、どの時系列で、どんな戦いを行っていたか分からない。
ムーンセルが見せるもしもの世界は、あまりにも膨大過ぎた。
俺達が得た常識など、まるで通じない事なんて、既に数え切れない。
「それを行う危険性、こいつは分かっているのか。人間に、いや生物が耐えられると思っているのか。それに、そこまでしなくても」
「・・・そうだね、正直に言えば、私もここまでする必要はないと思っている」
「だったら」
「けどね、彼はそれでも止まらないと思う。だって、私もそうすると思うから」
白野先輩の言葉にアザゼル先生が息を飲む。
「そもそもね」
白野先輩は窓際に立つ。西日が彼女の横顔を柔らかく縁取る。
「私も、彼も戦う理由なんてちっぽけなんだよ。生きたい。大切な誰かの為に戦いたいようにね」
「ちっぽけだって」
「だけど、そのちっぽけな理想が積み重なった時。人は神話になる。きっと彼はそれを分かってるから」
窓辺から差す陽光の中で彼女の横顔が黄金に輝く。
「彼と同じ道を進んだ私だからこそ分かる。あの特訓は危険かもしれないけど絶対に裏切らない」
「つまり信用できるってわけか」
「そう。それに……」
そこで白野先輩は言葉を切った。遠い記憶の海を掬うように目を細める。
「この世界の誰よりも脆くて強い彼が選んだ道を、最後まで見届けたい」
その声音には慈愛と決意が滲んでいた。
「それが同じマスターとしての私の願いだから」
ドラコーが不意に呟いた。
「まったく、愛の力が偉大と言うべきか」
彼女の口元に微かな笑みが浮かぶ。
「どうした?」
「いや、見えてきただけだ。騎手よ、貴様の決断が如何にして導かれしものか」
刹那──ガチャリッ! 扉が音を立てて開く。
「太郎!」
現れたのは血相を変えた宮本絶花。
息を切らしながらも目は鋭く、しかし揺らぎなく俺を見据えている。
「絶花ちゃん」
白野先輩が驚きと共に零す。
「ごめんなさい。どうしても嫌な予感がして探してました」
彼女は一歩近づく。俺の手を包むように握った。
「一体、何が」
「特訓をしているかな、生きるか死ぬかね」
「えっ」
白野の、その一言に対して、絶花は驚きを隠せない様子だった。
「えっと、あの子は」
絶花を知らない兵藤は、そのままリアス先輩に聞いてくる。
「確か中等部に最近だけど、転入した子だと聞いたわ。確か」
「太郎の幼馴染みだと聞いたな」
「えぇ!?」
それを聞いた兵藤は驚いた様子だった。
「白野さん、太郎は」
「命懸けの特訓中。たぶん100年分以上の体験をしているかもしれない」
「……っ!」
絶花は言葉を失う。
「太郎先輩って、ホント規格外ですよね」
そんなやりとりを眺めながら呟く一年生部員──
「……でも」
絶花は静かに拳を握りしめる。
「止める事は出来ないですね」
そう、絶花が白野先輩に問いかける。
「そうだね、邪魔はさせないけどね」
白野の、その言葉に嘘はない。
実際に、この場で特訓を行っている俺を止める事は出来ないだろう。
だけど。
「・・・だったら、一つ、お願いがあります」
「何かな?」
白野に、絶花は聞く。
「私も、その特訓に行っても良いですか」
「・・・ほぉ」
絶花の言葉に驚いたのは白野だけでなく周囲の者達も同じだ。
「どういうつもり?」
「ただ太郎の傍に居たいんです」
絶花が毅然と言い放つ。
「……でも死ぬかもしれないよ?」
「構いません。太郎が目指すゴールに辿り着くまで、ずっとそばにいます」
その瞳は鋼のように堅固だった。
次回の王は
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妖怪王
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怪獣王
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幻想王