サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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アンケートにて、百鬼夜行の主に決定しました。同時に、募集は行っています。
皆様の応募、お待ちしています。
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月の先輩と最初の獣 Ⅷ

白野の言葉が風に乗って散っていく。魔王の幻影たちがサーヴァントたちに向かって猛攻を仕掛けた──まさにその瞬間だった。

 

ギルガメッシュの王の財宝から放たれた一本の鎖が紅蓮の魔王の剣を受け止めた。老練な銃使いの魔王が放った弾丸は玉藻の前の魔術によって易々と叩き落とされ、氷刃の銀髪魔王の必殺の一撃はアーチャーの投影した鉄甲によって完全に受け止められた。

 

「……おかしい」

 

アザゼル先生の低い声が聞こえた。

 

「生前の連中なら……こんな芸当じゃ止まらない」

 

その言葉にリゼヴィムはハッとした。だがもう遅い。シャルルマーニュの雄叫びと共に強烈な一撃が炎の魔王を吹き飛ばし、アルテラの剣閃が闇の魔王を一刀両断した。

 

衝撃波が大地を削る。爆風の中でリゼヴィムの顔が歪む。

 

「くっ……馬鹿な!これが魔王だぞ!」

 

「サーヴァントとはそういうものよ」

 

白野の冷徹な声が響く。

 

「本体を召喚することは不可能であり、サーヴァントは本体を基に各クラスごとの側面を切り出したコピーのようなものである。

 

ゆえに「英霊としての強さや能力」と、「サーヴァントとしての強さや能力」は必ずしも一致しない」

 

「・・・だとしたら、そんなサーヴァントを引き連れていたのに、そんな弱さを見せない太郎は」

 

「まぁ、サーヴァントにも例外があるし、それをどうにかする方法が色々とあるけどね。最も」

 

そうして、白野は真っ直ぐとリゼヴィムを見つめる。

 

「サーヴァントだけで勝てると思っていた時点で、あなたの負けだけどね」

 

勝利宣言と言える言葉。

 

だが、リゼヴィムは。

 

「ははぁ、だったらさぁ、ようするにマスターもいなくなれば良いんだよなぁ」

 

そうして、リゼヴィムは眼を見開く。

 

リゼヴィムはその瞳を光らせる。

 

それは、これまで明かしていないリゼヴィム自身の能力である神器無効化を発動する合図でもあった。

 

真っ直ぐと白野に向けて魔力が溜まっていく。

 

太郎の持つ神器を無効化する為だった。

 

そして。

 

「チェックメイト」

 

リゼヴィムはその一言と共に瞳を光らせた。リゼヴィムが持つ神器の能力による白野の神器を無効化させる。

 

だが。

 

「残念でした」

 

白野は軽く笑う。

 

「あなたが持つ神器無効化。知ってたよ」

 

「えっ」

 

それに対して、リゼヴィムが驚愕する。

 

「さてと、太郎の方も終わりそうだし」

 

そうして、白野は指を指す。

 

そこはまだ夢の中で戦い続けている太郎の元へと。

 

同時に、白野は自分の学生帽を構えながら、宣言する。

 

「だから、ここで終わらせてあげるよ、私の持つ宝具でね」




そこは、普通の人間が決して見る事がないだろう光景が広がっている。

日本の豪華な屋敷に妖怪達が大勢集まっており、ざわざわとしていて雰囲気としてはヤクザの集会場のような印象を与えてくれる。

だが、そこに集まっているのは、ヤクザではなかった。

「・・・なんというか、これだけ揃うと凄いなぁ」

そう、俺、唯我太郎は特に気にした様子もなく、そのまま出されているお茶を飲む。

「いや、太郎、何、そんなに寛いでいるのっ」

お茶を啜っていたら幼馴染みであり、相棒とも言える宮本絶花が慌てた様子で俺を見ていた。

「なんだ?絶花」

「いや、なんだって、私達・・・なんか色々と大変な感じになっていない?」

絶花は明らかに動揺した様子で周囲を見ては俺を見たりと挙動不審である。

「まあ確かに・・・俺もこんな風な事になっていたなんて知らなかったからな・・・」

正直、俺もこの状況に戸惑っている部分はある。

けれど。

「大変なのは、日常的だからなぁ」

別に驚く事ではない。

これが今の俺の日常だ。

その証拠に目の前にいる妖怪達がざわめいているのも見えたが特に気にせずお茶菓子に手を伸ばした。

しかし。

「太郎」

そんな俺を呼ぶ声があった。

それは一人のお爺さんである。

その人は優しそうな笑みを浮かべていたもののその目には確かな威圧感があった。

もちろん、それに気づかないわけがない。

「どうもー!お久し振りですね。ぬらりひょんのおっちゃん!」

「くくっ、この場で妖怪ばかりの場所なのに、ただの人間なのに変わりない返事をするとはのぅ。相変わらず」

「そう言われましてもねぇ、これだけの方々が集まっていると、緊張しまくって、もぅ喉が渇いてしまってねぇ」

俺はそう言いながらも、周囲を見渡す。

視線に関しては、感じる限りでは2種類。

一つは、俺に対しては友好的な視線として、ぬらりひょんのおっちゃんに八坂さんを初めとして俺と多くの接点がある。

そして、俺に対してかなり敵視をしている視線がもう一つある。

それは、不満と共に殺気も入り交じっている。

それらを含めて、俺はどのような事が起きるのか。

八坂さんはため息をつくように告げる。

「……さて、今日お集まりいただいた理由は他でもありません。唯我太郎様に正式にお願いしたいことがありまして」

「お願い……ですか?」

首を傾げて聞き返すと、八坂さんの瞳が真剣なものに変わる。

「そうです。実はですね、現在の日本における『裏』の代表者……つまり我々妖怪界隈での盟主についてなのですが」

そこで一度言葉を区切り、周囲を見渡す。

他の妖怪たちもざわめきながら注目しているようだった。

「現状、この日本における妖怪の立場が弱まり、日本神話の方でも多くの話し合いが行われました。未だに日本において、力を発揮するが現状、海の外の勢力に日本の領地が支配されている所もあります。そこで」

それと共に、俺へと話が振られる。

「これまで日本の、世界の危機を救ってきた者を代表として、唯我太郎様を新たな百鬼夜行の主と、日本の妖怪の代表にして欲しいのです」

それは、その場にいる全員が驚くべき内容だった。

だって、俺はただの中学生なんだぞ?

だけど……。

「なるほどねえ……つまりこういうことかい?」

俺は思わず苦笑いを浮かべてしまう。

「世界中に知られている英雄になってもらおうっていうわけかよ」

そう言ってみると八坂さんが微笑んだ。

どうやら察しがついたらしい。

とはいえ、それでも驚かないわけがない。

しかし同時に疑問も湧いてくるのだ。

「でもなんで俺なんかを選ぶ必要があったんですか?」

純粋な疑問として尋ねると、今度は彼女が答える番となった。

どうやら俺を選んだ理由についてはいくつかあるようだ。

八坂さんの柔らかながらも重厚な声音が部屋に響く。

「まず第一に、唯我太郎様は過去に何度も世界的な危機を救われた実績があります。その勇敢さと冷静さはもはや誰もが認めるところでしょう」

続けてぬらりひょんが低い声で付け加える。

「第二に、各地の妖怪たちだけでなく神々からも支持されておる。そなたの名は広く知られておる故にこそ、諸外国との交渉にも影響力を持つだろう」

二人の説明に納得しかけた矢先──

「待てぃ!」

鋭い怒号が飛んだ。

視線を向ければ、狐耳の女性が立ち上がっている。尻尾が不機嫌そうに揺れていた。

「人間ごときが我々を束ねるなど片腹痛いわ! いくら功績があろうとも妖異の頂点は妖異でなければならぬ!」

彼女の背後には同じ色の装束をまとった連中が控えている。

なるほど、「人間排除派」とでも呼ぼうか。筋は通ってる。

「そもそも──」

次の抗議が始まろうとした瞬間だった。

「まあまあ待ってくれよぉ」

俺は湯呑みをテーブルに戻しながら割って入る。

「そもそも俺も最近まで普通に学校行ってた一般人だし? いきなり“代表”とか荷が重すぎるって思わない?」

「それは、重々承知しております。確かに今すぐではありません」

「まぁ、ワシも引退を考えても、まだ先じゃからな」

二人の返答に少し安心する。

「じゃあ結局は──“勧誘”って形でいいわけ?」

確認すると八坂さんが微笑みを深めた。

「ええ。まずは顔合わせ。ゆくゆくはこの国の安寧を担う上で、貴方の協力が不可欠だと考えております」

ぬらりひょんもゆっくりとうなずく。

「時間はある。ゆっくり決断すればよい」

部屋中の視線が再び俺に向く。

そして、会議が終わった後、俺と絶花は2人だけの帰り道。

夕暮れの街並みを歩きながら、絶花が隣でぽつりとつぶやいた。

「……で? 結局どうするの?」

「んー?」

俺が首を傾げると、呆れた視線が刺さる。

「あの話よ。日本妖怪の代表とかいうやつ」

「ああ、あれな。まぁ気が向いたら考えるけど……とりあえず今日の晩飯の方が気になるわ」

「のっ脳天気の」

絶花が溜息をつきつつ髪をかきあげる仕草に、俺はニヤリと笑い返す。

「絶花だって興味あったんじゃないのか? 俺が妖怪たちの親玉になったら」

「バカ言わないでよ。私はただ──」

そこで一瞬言葉を詰まらせたあと、小さく続けた。

「……普通に太郎と一緒に過ごしたいだけだから」

「ほうほう?」

茶化すように返すと肘打ちが飛んでくる。

「ってぇ……冗談だよ」

痛みに悶えながらも空を見上げれば、妖怪たちの会議場で見た荘厳な光景とは打って変わって平凡な夕焼けが広がっていた。

(妖怪の王サマねぇ……)

想像しようとしてもピンとこない。むしろ――

「絶花は?」

「……何が?」

「もし俺が本当にそういう立場になったら……ついてくるか?」

絶花の足が止まった。長い影が地面に伸びていく。

「・・・まぁ、幼馴染みで、友達だからね」

「・・・そうか、それだったら嬉しいな」

絶花からの言葉を聞いて、俺は穏やかに微笑む。彼女の素直じゃない言葉に込められた想いを受け止めつつも、どこか照れ臭くて視線を逸らしたくなる衝動を抑え込みながら続けることにした。

「まぁ、どちらにしても、俺は1人じゃないからな」

そうして、俺は、自分の腕にある妖怪ウォッチを見つめながら、呟く。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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