サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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月の先輩と最初の獣 Ⅸ

リゼヴィムの瞳が眩く光る。神器無効化能力だ。無防備になった白野の魂魄そのものが干渉されようとする瞬間——

 

「それは無駄よ」

 

白野の口元に薄い笑みが浮かんだ。彼女の両腕が広がり、虚空を掴むような動作をする。

 

「月のレガリア、その証を」

 

低く紡がれた詠唱が夜気に溶けていく。彼女の肌の上で紫電が奔り、血管のように脈打つ。空気が震え、世界そのものが息を潜めた。

 

「量子樹齢、解読——因果演算、全結果並列一致」

 

白野の瞳が透き通った蒼色に変わる。遥か高空——白金色に輝く満月から一条の光束が落ちてくる。それは幾何学模様を描く無数の光の筋となって白野の頭上に収束しはじめた。

 

「此処に事象は確定した。照らせ!」

 

彼女の指先が高く掲げられる。

 

「『記録せよ、読み手なき月の柩』」

 

静寂の中に爆ぜる雷霆。

 

月光の奔流がリゼヴィムと魔王の幻影たちを飲み込む。眩い光が真空を割り、大気中の分子が灼熱してプラズマへと昇華する。雷鳴のような破裂音が続き、衝撃波が校舎の窓を粉砕した。

 

リゼヴィムは白目を剥きながらも本能的に魔術障壁を展開したが——

 

「……くそぉっ!」

 

光に触れた瞬間、障壁は霧散した。そのまま彼の身体が宙に浮く。四肢が痙攣し、思考が停止する。目に映るのは崩壊寸前の魔王たちの亡骸。肉体ではない“情報”そのものが分解されていくさまを——

 

リゼヴィムは最後の一瞥で認識した。

 

光の奔流が止む。月光が消え去った後に残ったのは倒れ伏す魔王の幻影たちと——膝をつき、昏倒したリゼヴィムだった。

 

ドサリッ。

 

リゼヴィムが床に転がった音とともに、一同は安堵の吐息を漏らす。空気が弛緩し、緊張の糸が切れかかる——その時。

 

「終わったわけじゃない」

 

白野が静かに告げた。

 

「こいつを放置すると厄介よ。とりあえず拘束するわ」

 

そう言いながら彼女は片手を挙げ、無数の電子コードのような帯が出現する。それらは素早くリゼヴィムの四肢に絡まり、手枷のように固定した。

 

アザゼルが近づき、リゼヴィムの脈を確認する。

 

「生きてる。だが意識レベルはほぼゼロ、今のは」

 

「ムーンセルにある情報。その情報をそのまま攻撃にした。それが私の宝具だから」

 

「・・・情報をそのまま攻撃ってのは、なかなかにとんでもないな」

 

アザゼルが軽く苦笑いを浮かべる一方で、白野は再び月を見上げた。白い光が雲間から差し込み、まるで舞台照明のように彼女を照らす。

 

「さぁ……次は君の番だよ、後輩」

 

その目は眠る少年の方へと向けられていた。夢の中でなお戦い続けている彼の——確かな鼓動を感じ取るように。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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