サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
障壁を破り、俺たちが辿り着いたのは禁忌の領域だった。
「……!」
テュフォンが着陸するより早く、機体から放たれる警報が耳を劈いた。目の前に聳えるのは、禍々しい祭壇。その頂点には――巨大な漆黒の聖杯が鎮座している。
ガラス越しに見えるそれは、生きているかのように脈動していた。
表面は血のような黒い液体に覆われ、滴り落ちる雫が石畳に触れると腐食し、黒煙を上げながら溶解していく。聖杯自体が生物兵器のようだ。無数の人間や悪魔の怨念が凝縮されたかのような黒霧が渦巻き、触れた空間そのものを歪ませている。光どころか時間すらも飲み込むような深淵の色だ。
「……これが聖杯?」
声が震える。美しき少女の瞳に恐怖の色が宿った。
「違う……これは呪詛の塊だ」
が魔力探知の札を掲げるが、瞬時に黒ずんで灰になる。
「……マスター」
白野先輩が警告を発する。
「近づけば精神が侵される。慎重に」
祭壇の階段を悠然と登る男が一人。ベリル・ガット。
目の前に現れた男——かつてのベリル・ガットは、もはや人間の形を留めていなかった。
「来たか……」
嗤うその顔には悪魔の翼が蠢いている。顔は辛うじて人間の原型を保っていたが、皮膚は漆黒の瘴気に侵食されていた。
(取り込んだのは悪魔だけじゃない)
俺の直感が告げる。奴の体内には無数の魂が蠢いている。
悪魔と魔術師の融合体——神話級の邪悪だ。
「ふん……」
奴の右手に握られた黄昏の聖槍が黒紫の雷を纏う。
「・・・本当に、色々と取り込み過ぎじゃないんですか?」
「そうだねぇ、けれどさ、この世界の人間も悪魔もさ、結構騙しやすいんだよねぇ、後輩。いや、少し違うか」
そうして、ベリルは不敵な笑みを浮かべながら。
「あの場所の悪意があまりにも強すぎたからだねぇ、この場合は」
「悪意?一体、どういう意味?」
「・・・ブリテン異聞帯。かつて、ベリルが管理していた場所であり、俺にとっては」
その時の出来事を思い出し、俺は手に強く握り締める。
多くの戦いを乗り越えたが、俺にとっては辛い別れもあった。
「おいおい、後輩、こんな所で油断していると、駄目だぜぇ!」
そうしていると、ベリルの言葉と共に、聖杯の泥。
そこから出てきたのは、不気味な何か。
「あれって」
「・・・聖杯という事で予想はしていたけど、ティアマトにある生命の海か」
「まぁ、それと似た要素だな。まぁ、この場合は、材料は神器持ちの人間だけどね」
「まさかっ」
「そういう事、いやぁ、彼らは役に立ったよ、この軍団を造り出してくれるね」
そうして、聖杯の泥、そこから次々と現れたのは、神器の中に封印されていた魂は、その肉体を、俺にとっては覚えのある存在となって現れる。
「・・・ラフムか」
そう、俺にとっては、記憶に残る二つが合わさる事があるとは、思いもしなかった。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王