サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「……宮本武蔵だと?」
ベリルの顔が歪む。背中の切り裂かれた翼から黒血が滴る。
「冗談きついぜ後輩。こんな小娘が剣聖の真似事なんざ──」
絶花が一歩踏み出した。
「──!!」
ベリルの頬に冷や汗が流れる。
その構えは紛れもなく二天一流。
ただし現代の少女の体格で繰り出される双刀は尋常の殺気を放っている。
「なるほど……」
ベリルが舌打ちする。
「融合した魂が弱点になり得るわけか」
絶花の二刀流。
それは、本来、彼女自身が持つ神器である天聖と対となる刀があって、初めて完成する。
だが、彼女が、今、握っているもう一つの刀。
それは、かつて、俺と一緒に戦ってくれた武蔵ちゃんの刀であり、5本目の刀、村正。
とある戦いにおいて、地獄の名を持つサーヴァント達を切り裂いたその刀は、現在のベリルにとっては、まさしく天敵と言えるだろう。
絶花の天聖と村正が閃光のように交差する。ベリルの黄昏の聖槍が振られるが──
「遅い!」
武蔵直伝の円転滑脱の構え。攻防一体の剣術がベリルの動きを完全に読み切る。
「お前が魂を集めれば集めるほど……」
絶花の瞳に炎が宿る。
「私は強くなる」
ベリル・ガットは暗殺者であり、武術の達人ではない。
実戦経験も本来ならばベリルの方が上で、少し前までのベリルならば絶花に勝てる可能性はあった。
だが。
「私も経験したから」
皮肉にも、俺と同じ特訓を行った結果、絶花は本来ならば出会う事のなかった様々な剣士と出会う事が出来た。
彼ら、彼女らとの戦いは、本来ならば極める事のなかった剣術を極限まで鍛える事が出来た。
故に。
「今の絶花は、冠位英霊と言われても、可笑しくない力を持つ」
そうして、絶花の一撃は、ベリルを徐々に追い込んでいく。
その凄まじい剣戟の嵐は、まさに暴風だった。絶花の双刀が稲妻のごとく閃き、地面を抉るたびに粉塵が舞い上がる。
ベリルの黄昏の聖槍が必死に防戦するも、その防御は徐々に崩されつつあった。腕の動きに明らかな疲労が見え始めている。
「ちっ……」
ベリルが舌打ちする。聖槍を構える腕が震えている。
だがここで引けば致命的な隙を晒すことになる。
一方で絶花はまったく速度を落とさない。
武蔵から継承した二天一流の妙技を惜しげもなく披露し続ける。
上段から薙ぎ払い、
下段から突き上げ、
体ごと回転させて周囲を薙ぎ払う。
動きは流麗だが動作ごとに必ずベリルの体勢を崩す要所を突いてくる。
まるで熟練の棋士が一手指すごとに王手へと近づくような精緻さだ。
ベリルの顔には初めて焦燥の色が浮かぶ。
今までどんな窮地でも余裕を失わなかった狡猾な殺し屋が──。
「くそっ……こんなはずじゃ……!」
愚痴る間も与えない。
絶花が瞬時に間合いを詰め直刀の柄でベリルの鳩尾を強打する。
「ぐぼっ……」
ベリルが喀血しながら膝をつく。
それでもなお聖槍を杖代わりにして立ち上がろうとする執念深い男へ、絶花は冷酷な宣告を投げつけた。
「終わりよ」
双刀を交差させて鬼神のごとき咆哮とともに振り下ろす。
ベリル・ガットは崩れ落ちた。
絶花の二つの刃が肩口から胸にかけて斜めに裂いた傷は致命的だ。
それでも黄昏の聖槍を手放さない辺りは最後まで暗殺者の矜持を見せつけるようだった。
「……はは……まさか……こんなガキに……」
苦悶の表情で掠れた声を漏らすベリル。
意識が薄れていく中、薄目を開けて敵対者を見上げる。
そこには──
絶花が立っていた。
天聖と村正の刀身が陽光を反射して禍々しく輝いている。
両手で構える姿はまるで一枚の水墨画のようで、とても戦場の中心とは思えない静謐さを感じさせた。
「けれど、俺を止められた所で、聖杯は止まらない。そうなるようにしていたからな」
そう、ベリルは後ろにある聖杯を眼に向ける。
「この場にいるサーヴァントはラフムと戦い、火力を出せない!ならば、この場において、俺を倒せても、これを止めなければ意味はないだろ!」
そう、確かにそうだ。
けれど。
「分かっているさ。だからこそ、切札を用意したんだよ」
「えっ」
その言葉と共に、マシュは既に構えていた。
次回の王は
-
妖怪王
-
機械王
-
怪獣王
-
幻想王