サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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王と剣士と猫 Ⅱ

屋上の鉄柵に背を預け空を見上げる。青すぎる晴天が目に刺さる。

 

「お~い絶花! トイレ長いぞ!」

 

声を張り上げても反応なし。仕方なく購買で買った惣菜パンの封を開ける。豚カツサンド。油っこくて最高。

 

「……ふむ」

 

唐突な声。振り向くと入口付近に立つ影。

 

高身長の少年が壁に寄りかかっていた。黒髪がさらさらと風に揺れ、切れ長の目がこちらを射抜く。

 

学ラン調の制服姿に覚えがあった。噂の生徒会長――黒江残月だ。

 

「な、なんだよ」

 

「転校生の唯我太郎だな? 経歴は調べさせてもらった」

 

低く澄んだ声で言い放つ。左手には銀色の懐中時計風デバイスが見える。

 

「はぁ? ストーカーかお前」

 

「違うな。駒王学園における治安維持の一環だ」

 

残月はゆっくり歩み寄りながら口を開く。

 

「君が連れている――宮本絶花。彼女の能力は極めて特殊だ。下手に刺激すれば周囲に被害が出る可能性もある」

 

「へっ、絶花のこと知ってんのか?」

 

「ああ」

 

冷たく研ぎ澄まされた視線が突き刺さる。

 

「この学園において君たちの行動はすべて把握しているということだ」

 

思わず拳を握りしめる。コイツ本気で言ってやがる。

 

「随分偉そうだな。それでどうするつもりだ?」

 

「警告しておく。彼女の力を制御できなければ……私が排除する」

 

「お前が絶花に勝てるか?」

 

「さぁな。だが、宮本武蔵の子孫だろうと、それは関係ない」

 

そう、奴は言った。

 

「・・・名前が似ているだけど、武蔵の子孫とは限らないのでは?」

 

「言ったはずだ、既に調べてあると」

 

「・・・あっそう」

 

「あぁだが勘違いするな」

 

「お前はただの生贄でしかない事を」

 

そう言いながら、それをゆっくりと俺の方へと向ける。

 

「駒王学園には悪魔がいる。お前たちも彼らにとってみれば只の糧でしかない事を忘れるな」

 

「悪魔?まるで絶花をそう呼ばないといけないように感じてしまうな」

 

「・・・そんな生易しいのではないのだ」

 

「何?」

 

「お前は知っているか?駒王学園は実は現在、裏では悪魔によって支配されている事を」

 

「・・・へぇ、面白い話だな」

 

「興味があればだがな。あと此処ではもう一つ言っておく」

 

「なんだ?」

 

「この駒王町にある教会の名義となっている教会には堕天使が潜伏しており、この街の人々を襲っている」

 

「へぇ、まるで悪魔だけに留まらず全て滅ぼされたい様に聞こえてしまうな」

 

「あぁ知っていると思うが、教会と言うのは本来十字架が掛けられている事で悪魔除けとなるのは常識だが」

 

「悪魔対策とは言えどもこの街の場合は人間を生贄に捧げる。正しく人間側から見れば敵でしかない」

 

「俺個人的には人間であれ人外であれども俺にとっては皆平等だけどね」

 

「・・・噂はどうやら本当だったようだな」

 

「一応忠告はしたぞ。それと」

 

「なんだ?」

 

こちらを睨む。

 

「私の前で立ちはだかった時には、容赦はしない」

 

「生徒会長の権利か?」

 

「王としての忠告だ」

 

それと共に、去って行った。

 

「・・・俺の前で王を名乗るか」

 

そうかしきりに呟きながら、

 

「だったらお前にはここで負けて貰わないとな。絶花の為にも」

 

そう言いながらも

 

「あれ?太郎」

 

そうしていると絶花が戻ってきた。

 

「ん? どうしたのですか?」

 

「・・・別に絶花は心配することはないよ」

 

それだけ言った。

 

階段を降りながら背後で微かな足音が響いた。振り返らずともわかる。

 

「残月様、ご無事で」

 

艶のある声が背後から届く。視線を合わせないまま低く答えた。

 

「ああ。何の問題もない」

 

「でしたら何故……唯我太郎を止めなかったのですか? 彼こそが日本妖怪に認められた“新たな王候補”と聞き及んでおりますが」

 

“王候補”。その言葉に喉が乾く感覚を覚えた。なるほど、情報収集能力だけは優秀らしい。

 

「理由は簡単だ」

 

立ち止まり、彼女に向き直る。翠の瞳が微かに揺れた。

 

「今の我々には日本の妖怪勢力と全面的に揉める理由が無い。それどころか逆鱗に触れれば学園どころか全国規模の混乱を招く可能性がある」

 

「ですが放置すれば彼は必ず障害になります。駒王町の“裏”を知る者は少ない方が――」

 

「だからこそだ」

 

静かに遮る。

 

「敵対せずにコントロールできる方が得策だと思わないか? ……例えば“共通の敵”を提示してみたりな」

 

翠の瞳が鋭さを増す。

 

「堕天使のことですか」

 

「ああ。堕天使掃討班はいずれ我々の手駒として使える。」

 

淡々と語りながら歩を進める。階段が終わり昇降口へ抜ける光の中でふと思い出す。

 

あの屋上で交わした視線。蒼い虹彩の奥底に眠る熾火のような意思。

 

(唯我太郎……君がどう転ぶかは楽しみではあるが)

 

足音と共に思考が空気へ溶ける。

 

「さて、次は悪魔側の監視だ」

 

「承知いたしました」

 

二人の影が重なり合い、静かに生徒会室へ続く廊下へと伸びていった。




こちらに合わせて、新たな募集を開始しました。
本作の新たな試みとしては、当初からライバルのような存在の登場となります。
妖怪王へと決まった時より、モデルとしていた『妖怪学園Y』においては、宇宙人と戦う設定もありました。その中で、エイリアンウォッチによる変身もあり、これはライバルの存在として出しても良いのではないかと考えました。
なので、本作においては、太郎の対となる存在である黒江残月が暗躍する形で登場します。
また、太郎と同じく、家臣を持っており、これは今作で既に登場した『帝国の駒』となっています。
興味がある方は、ぜひ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=333699&uid=45956

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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