サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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王と剣士と猫 Ⅵ

「……行くぞ」

 

俺はスマホの画像を最後にチェックし、ゆっくりと歩き出した。

 

背後で絶花が何か言いかけてやめた気配を感じる。心配性だなと思いつつも悪い気はしない。

 

森の境界線上に立つ。

 

教会の尖塔が木々の隙間から見える。静寂に包まれた森の中で、俺の鼓動だけが妙に大きく響く。

 

ポケットから取り出した妖怪ウォッチが夕陽を反射して鈍く光る。

 

ジバニャンのメダルがしっかりとセットされていた。

 

「まずは下準備だ」

 

声を殺して呟くと同時に、妖怪ウォッチを起動する。

 

森の奥から微かな囁きが聞こえた。

 

「ノブ……」

 

「ノブノブ……」

 

「ノォォブゥ……」

 

それはちびノブ達の通信コードだ。

 

俺は視線を巡らせる。枝葉の陰にチラリと見える赤い兜。幹の根元で蠢く小さな影。すでに配置完了のサイン。

 

「準備OKってところか」

 

小さく笑うと同時に右手を高く掲げた。

 

「変身!」『チェーンジ! 妖怪HERO!剣豪紅丸!』

 

ウォッチが閃光を放つ。

 

体内を駆け巡る熱。

 

視界が鮮血のように染まっていく。

 

全身の筋肉が膨れ上がり骨格が再構成される感覚。裂帛の痛みと共に俺は“紅丸”へと変貌していく。

 

赤い毛並みが奔流のように吹き出す。

 

猫耳が頭蓋を突き破って生え、尻尾が2叉に分かれる。

 

足先から爪が伸び、手指が獣じみていく。

 

背中に差した妖刀“断絶丸”の鞘が雷鳴のように唸った。

 

――ガラガラッ――

 

(……来たな)

 

刀身を引き抜く感触で自我を取り戻す。

 

翡翠色の妖炎が刃先に纏わりつき、周囲の空気が蒸発するように揺らぐ。

 

視線を上げると俺は完全な紅丸になっていた。

 

「さて……」

 

腰を低く落とし獲物を前にした獣のように唸る。

 

(アイツのためにも負けられねぇ)

 

脳裏に絶花の怯えた顔が過ぎる。

 

あの娘には平穏な日常を取り戻してやりたい。そのためには堕天使なんてクソどもは邪魔なだけだ。

 

指先で握った断絶丸が熱を持って震える。まるで俺の意思に応えるように。

 

「行くか……」

 

遠くから靴音がかすかに響き始めた。

 

獣の本能が迸る。

 

踏み込んだ刹那──

 

世界が後方へ剥がれ落ちていく。

 

足元の土塊が爆発的に弾け飛び、木の幹が風圧で軋んだ。

 

自分でも驚くほど加速がつく。

 

木々の間を縫うように飛翔する。

 

右脇に迫る枝を寸でのところで回避。左肩を掠めた葉擦れの音さえ置き去りにして。

 

視界の端で揺れる木漏れ日が残像に変わる。

 

──バキッ!

 

前方で教会の戦士の叫びが上がった。

 

「誰だ!?」「侵入者か!」

 

遅ぇよ。

 

それと共に、窓を突き破り、侵入する。

 

次の瞬間には彼らの背後に回り込んでいた。

 

それと共に、蹴り飛ばして、そのまま教会を見渡す。

 

そのまま、周囲の奴らは俺を見つめると共に。

 

「赤く染まったこの身体。お主らの血でさらに赤くなるの巻」

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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