サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「……行くぞ」
俺はスマホの画像を最後にチェックし、ゆっくりと歩き出した。
背後で絶花が何か言いかけてやめた気配を感じる。心配性だなと思いつつも悪い気はしない。
森の境界線上に立つ。
教会の尖塔が木々の隙間から見える。静寂に包まれた森の中で、俺の鼓動だけが妙に大きく響く。
ポケットから取り出した妖怪ウォッチが夕陽を反射して鈍く光る。
ジバニャンのメダルがしっかりとセットされていた。
「まずは下準備だ」
声を殺して呟くと同時に、妖怪ウォッチを起動する。
森の奥から微かな囁きが聞こえた。
「ノブ……」
「ノブノブ……」
「ノォォブゥ……」
それはちびノブ達の通信コードだ。
俺は視線を巡らせる。枝葉の陰にチラリと見える赤い兜。幹の根元で蠢く小さな影。すでに配置完了のサイン。
「準備OKってところか」
小さく笑うと同時に右手を高く掲げた。
「変身!」『チェーンジ! 妖怪HERO!剣豪紅丸!』
ウォッチが閃光を放つ。
体内を駆け巡る熱。
視界が鮮血のように染まっていく。
全身の筋肉が膨れ上がり骨格が再構成される感覚。裂帛の痛みと共に俺は“紅丸”へと変貌していく。
赤い毛並みが奔流のように吹き出す。
猫耳が頭蓋を突き破って生え、尻尾が2叉に分かれる。
足先から爪が伸び、手指が獣じみていく。
背中に差した妖刀“断絶丸”の鞘が雷鳴のように唸った。
――ガラガラッ――
(……来たな)
刀身を引き抜く感触で自我を取り戻す。
翡翠色の妖炎が刃先に纏わりつき、周囲の空気が蒸発するように揺らぐ。
視線を上げると俺は完全な紅丸になっていた。
「さて……」
腰を低く落とし獲物を前にした獣のように唸る。
(アイツのためにも負けられねぇ)
脳裏に絶花の怯えた顔が過ぎる。
あの娘には平穏な日常を取り戻してやりたい。そのためには堕天使なんてクソどもは邪魔なだけだ。
指先で握った断絶丸が熱を持って震える。まるで俺の意思に応えるように。
「行くか……」
遠くから靴音がかすかに響き始めた。
獣の本能が迸る。
踏み込んだ刹那──
世界が後方へ剥がれ落ちていく。
足元の土塊が爆発的に弾け飛び、木の幹が風圧で軋んだ。
自分でも驚くほど加速がつく。
木々の間を縫うように飛翔する。
右脇に迫る枝を寸でのところで回避。左肩を掠めた葉擦れの音さえ置き去りにして。
視界の端で揺れる木漏れ日が残像に変わる。
──バキッ!
前方で教会の戦士の叫びが上がった。
「誰だ!?」「侵入者か!」
遅ぇよ。
それと共に、窓を突き破り、侵入する。
次の瞬間には彼らの背後に回り込んでいた。
それと共に、蹴り飛ばして、そのまま教会を見渡す。
そのまま、周囲の奴らは俺を見つめると共に。
「赤く染まったこの身体。お主らの血でさらに赤くなるの巻」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王