サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
廃墟となった教会の床には、かつて天使であったものの灰と化した遺骸が散らばっていた。硝煙と血の匂いが焦げた木材の香りと混じり合い、肺を刺す。柱時計の針だけが、破壊された空間で唯一時を刻む規則正しい音を奏でていた。
そこに佇む俺は、戦闘の余韻は皆無。血濡れた服裾は煤で汚れ、掠り傷一つすらない。
そして、その手には先程まで堕天使が手に入れていた神器を手にしながら、眼前にいる悪魔である5人に眼を向ける。
その中で、主だと思われる紅髪の女性がこちらに近づく。
「ごきげんよう」
突然現れた悪魔を名乗るこの人物達。
普通であれば疑問に思う事が普通だと思うのだが。
何故か疑わない。
それ程までに彼女達は強力な敵で……。
「私はリアス・グレモリー。この土地を管理するグレモリー家の当主よ」
静かな声音。しかし芯が通った威厳。そして後ろに控える4人の眷属たちは、微妙な距離感を保ったままこちらを凝視していた。
俺は聖母の微笑を軽く掲げてみせた。緑の宝玉がぼんやりと脈動し、周囲の空気を微かに揺らす。癒しの波動と、堕天使が纏っていた悪意の残滓が入り混じった奇妙な光。
「これは貴殿らの所有物か?」
わざと平淡に問う。
「・・・いいえ、それは、先程、亡くなった子の物よ」
そう、先程亡くなったばかりのシスターに眼を向ける。
それを聞いた後、俺の選択肢は。
「では、これは拙者がこれを貰っても」
呟きに対して、その内の1人が。
「待ってくれっそれはアーシアの遺品で」
「悪いが拙者が、これを貰う理由としては、悪魔である貴殿らがこの神器を悪用しないという信頼がないからだ」
「しっ信頼って」
「拙者がこの堕天使共と戦ったのは、拙者の最も大切な者が狙われた。そして、この街で同じように襲うと考えた為である。聞いた話によれば、貴殿らの陣営においても同じようにしたという話を聞く」
「私達は、そんな事はしないわ」
「貴殿らはだ。だが、貴殿らが所属している陣営がしていないとは限らない」
「だからこそ――」
俺は左手に持っていた聖母の微笑を軽く掲げた。緑色の宝玉が微かに脈打ち、薄い癒しの波動が辺りに漂う。「その神器が貴殿らにとって大切なものなら……まず示すべきであろう?」
「……どういうこと?」
リアスが眉を寄せる。
「悪魔としての信義を試させてもらう。お前らがこの神器を使って悪巧みをしないと証明してもらわなければ、拙者とて簡単に渡すわけにはいかんな」
リアスは一瞬考え込み、やがて毅然と言い放った。
「確かに……堕天使や一部の勢力は神器を道具として利用してきた。でも私たちは違うわ」
彼女の赤い髪が揺れる。
「この子を私たちで守るつもりよ」
その答えに俺は微かに目を細めた。嘘偽りのない瞳だと見抜く。
「ならば――」
聖母の微笑をゆっくりと掌に乗せ、まるで貴石を捧げるように差し出す。
「貴殿が、もしも偽りの場合、切り捨てる」
「・・・わかってる」
それだけ言うと俺は踵を返し、窓枠へと一歩踏み出した。赤い毛皮が揺れ、背中の断絶丸が低い音を立てて鞘に収まる。
「感謝するわ――」
リアスの声が追ってきたが、俺はもう窓から跳躍していた。月夜に溶けるように身を翻し、瓦礫と化した屋根を足場に跳ねていく。
風を切り裂くたびに肩から後ろへたなびく外套。
遠吠えのような風のうなり。
胸の奥では「絶花――待っていてくれ」その想いだけが熱く鼓動していた。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王