サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
放課後の校門を抜けた瞬間、俺はようやく深呼吸した。
さっきまでの騒ぎ――例の怪異との戦闘で全身くたびれてる。
絶花が横で髪を束ねながら言う。
「……今日も結局バタバタだったね、太郎」
「俺がいる限り、大抵の問題は華麗に解決するからな。慣れておけ、絶花」
「いや、慣れたくはないんだけど……」
絶花が冷ややかにため息をついたちょうどその時だった。
「――あっ、太郎くん! 絶花ちゃん!」
明るい声が背中に飛んできて振り返ると、夕日に照らされたアヴィ先輩が手を振っていた。
相変わらず圧倒的テンションだ。なぜか俺を見る目がキラキラしている。
「やあ、アヴィ先輩。俺に会いたくて走ってきたのか?」
「うん! というか、毎日会いたいよ! 太郎くんは私の太陽だからね!」
「誉められ慣れているが、そこまで言われると照れるな。もっと言ってもいいぞ」
「本当に図太いわねあんた……」
絶花が眉を寄せて俺の腕を小突く。
その光景を見たアヴィ先輩が「むむむ」と頬を膨らませた。
嫌な予感しかしない。
「ねぇ太郎くん。今日のお昼のお弁当、誰が作ったの?」
「俺だが?」
「違うでしょ! 絶花ちゃんでしょ! いいなぁ〜幼馴染みって特権すぎない?」
「別に特権じゃないし……太郎が作ると味覚が壊滅するだけよ」
「俺の料理は“味”ではなく“魂”を味わうものだからな」
「食えるかそんなもん!!」
絶花の怒号が校門にこだまする。
アヴィ先輩はというと、俺と絶花を交互に見ながら楽しそうに笑っている。
本当にこの人、観察してるだけで幸せそうだ。
「とりあえず公園まで歩こっか。話したいことがあってね」
アヴィ先輩がそう言うので、俺たちは近くの公園へ移動することにした。
ベンチに腰かけた瞬間、茂みの影からぬるっと黒田坊が現れた。
「若、姫、遅れました」
「く、黒田坊!? なんで公園に!?」
絶花が素で驚いた声を上げる。
黒田坊は袖を揺らして、どこか気まずげに視線をそらした。
「……散歩していたら、たまたま着いてきてしまいました」
「散歩で“たまたま”着いて来られる距離じゃないだろ」
俺がツッコむと、黒田坊は深々と頭を下げた。
「若の護衛でございますので!」
「いや、俺は散歩ですら護衛いらないぞ」
「いります!!」
黒田坊と絶花が同時にツッコむ。
……おかしい。俺の周り、ツッコミが増殖してないか?
アヴィ先輩はそんな空気を微笑ましそうに眺めていたが、やがて姿勢を正した。
「……実はね、相談があるの」
夕風に揺れる長い髪。
いつもの明るさとは少し違う、真剣な色が瞳に宿る。
「私……婚約させられそうなの」
絶花が目を見開き、黒田坊が「ほう……これは一大事」と腕を組む。
俺?
俺は当然――胸を張った。
「安心しろ、アヴィ先輩。必要なら俺がその“婚約者”とやらを片づけてくる」
「物騒な言い方やめなさい!!」
絶花が頭を抱える。
アヴィ先輩は困ったように笑って言う。
「うん……助けてほしいの。太郎くんなら、きっとなんとかしてくれるって思ったんだ」
「任せろ。俺は若だからな」
「自称でしょ!? 誰もそんな称号与えてないからね!?」
絶花のツッコミが響き渡るなか、アヴィ先輩はほっと安堵したように笑った。
――こうして俺たちは、先輩の“婚約騒動”に巻き込まれることになった。
どう考えても面倒な未来しか見えないが……まあ、困ってる人を放っておくほど薄情じゃない。
それに――
「太郎くん、お願いね」
そう言われてしまったら、断れるわけがないだろう。
なんだかんだ、俺はこういう厄介事に巻き込まれる運命らしい。
次回の王は
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