サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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兵器と僧侶の戦争 Ⅳ

淡い光が差し込む廊下の先から、静かに足音が近づいてきた。

 

まるで舞踏会にでも向かうかのような気品をまとい、男が現れる。

彼は軽く胸に手を当てると、芝居じみた優雅さで一礼した。

 

「初めまして。ディオドラ・アスタロトと申します。以後、お見知り置きを」

 

その声音には柔らかさがあるのに、どこか湿った底知れなさが混じっている。

 

絶花は一歩だけ後ろに重心を引いた。

 

(……誰? こんなタイプ、今まで会ったことないんだけど)

微笑んでいるのに目の奥が笑っていないように見えて、胸の奥に小さな警戒心が灯る。

 

一方、太郎は腕を組んだまま、ディオドラを頭からつま先までジロッと値踏みした。

 

「……なんだよ、やたら丁寧なヤツだな。胡散臭ぇ」

 

彼の正面切った一言にも、ディオドラは微笑みを崩さない。

むしろ楽しんでいるような気配すら漂わせた。

 

「ふふ、誤解なさらず。私はただ、あなた方に敬意を示したいだけですよ。

 ――もちろん、これから長く良い関係を築くためにも」

 

その言い回しがまた絶妙に怪しい。

 

絶花は心の中で呟く。

 

(……うん、やっぱりこの人、何か裏がありそう)

 

太郎も鼻で笑い、

 

「言っとくが、俺はそういう“丁寧なだけの野郎”は信用しねぇからな」

 

と釘を刺した。

 

だが、ディオドラは深い笑みを浮かべたまま、まるでその反応さえ計算済みのように言った。

 

「それでも構いませんよ。いずれ、私という人間を知っていただければ――

 必ず、評価は変わりますから」

 

その言葉は、丁寧でありながら、どこか底冷えする響きを含んでいた。

 

絶花の首筋に、ぞわりとした感覚が走った。

 

 絶花の肩がほんのわずかに強張ったのを見て、俺は自然に前へ踏み出していた。

 まるで自分の影が勝手に動いたみたいに、絶花の前に立って――盾になるように。

 

 ディオドラの視線が俺に向く。

 相変わらず上品ぶった微笑みだが、あの目は冷たい。ぞくりとするぐらい。

 

「……ふむ。ずいぶんと積極的に出られますね、太郎さん」

 

「当然だろ。アヴィ先輩に相応しくねぇ男を、黙って通すわけにはいかねぇ」

 

 真正面から言ってやった。

 こういう時だけは妙に口が回る。桃井タロウ並みに。

 

 ディオドラの微笑みがわずかにひび割れた。

 その手で触れた仮面――ただの飾りか、素顔の一部を覆うためのものか――がカチャリと音を立てる。

 

「……アヴィさんに相応しくない、ですか。それはまた手厳しいご意見だ」

 

 声は穏やかだが、仮面の奥の瞳が一瞬だけ三日月のように細くなった。

 

 次の瞬間、ディオドラはゆっくりと首を傾け、まるで教会で祈りを捧げる神父のような静けさで言った。

 

「ですが――あなた、人間ですよね?」

 

 その言い方には、砂を吐くほどの軽蔑が、甘い香水のように隠されていた。

 

「人間風情が、何を語るというのです?」

 

 絶花の肩がビクッと跳ねる。

 黒田坊ですら、空気の変化に気づいて息を呑んだ。

 

 俺はと言えば――むしろスッと腹の底が冷えた。

 

「あぁ、そういうタイプか。

 仮面だけ立派で、中身は安い優越感でできてるってやつだな」

 

 ディオドラの目がわずかに見開かれた。

 人間にここまで言い返されたことなんて、きっと一度もないのだろう。

 

「……あなたは、自分が何と口をきいているか理解していますか?」

 

「理解してるよ。媚びへつらうつもりもねぇ。

 アヴィ先輩を利用しようとする奴なら、なおさらだ」

 

「・・・そうですか」

 

そうして、奴は離れた。

 

「・・・悪いな、俺、あいつ嫌いだわ」

 

「・・・うぅん、今回は私も太郎と同意見だよ」

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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