サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
ディオドラが去ったあと、空気がやけに静かだった。
さっきまでの嫌な圧だけが、まだ校庭のどこかに貼りついているような感じがする。
そんな中で、真っ先に口を開いたのは俺だった。
「……悪い。アヴィ先輩、絶花、黒田坊。勝手に出しゃばった。
だけど――後悔はしてない」
言いながらも、胸の奥で妙な熱がまだくすぶっている。
あんな奴にアヴィ先輩が押し込まれるなんて、絶対に許せなかった。
アヴィ先輩はきょとんとしたまま俺を見上げ、それからふっと表情を緩めた。
「太郎くん……いえ、太郎。私のために怒ってくれたのは、嬉しい……その、ありがとう。でも……ちょっと怖かった」
「だよね!?」
絶花がすぐさま食いついてきた。
「太郎、あんた本気で殴りかかる一歩手前だったじゃない! 心臓止まるかと思ったんだけど!」
黒田坊も袖を直しながら、呆れたように俺を見た。
「若、短気すぎる。悪魔相手にあの啖呵は普通、寿命を削るやつでござるぞ……」
三人に一斉に言われるとさすがに胸がチクリとする。
……が、後悔はない。
「けどよ」
俺は言い返す。
「あんな奴を“アヴィ先輩の婚約者”扱いするなんて無理なんだよ。
黙って見てろって方が無理だろ」
絶花はため息をつき、肩を落とした。
「……いや、それはそうなんだけどさ。
言いたいこと言ってくれたのはスッキリしたよ、私。うん。でも心臓には悪いの!」
アヴィ先輩は胸に手を当て、小さく笑った。
「私も……太郎と絶花が庇ってくれた時、救われたわ。
怖かったけど……嬉しかったの。私、断れないって……ずっと思ってたから」
黒田坊が腕を組んで、しみじみ頷いた。
「姫があれだけ追い詰められてたの、拙者にはわかっていたでござる。若の行動、やりすぎではあるが……筋は通っていた」
「お前はいつも味方すぎるだろ……」
思わずツッコむが、黒田坊は真顔だ。
絶花は笑いながら俺の肩を叩いてくる。
「まぁ、結果としてアヴィ先輩を助けたんだから……今回は許す。ほんと今回はね」
「お、おい絶花、強調すんなよ……」
アヴィ先輩はそのやり取りを眺めながら、小さく息をついた。
さっきまで曇っていた瞳に、少しだけ光が戻っている。
「太郎、絶花、黒田坊……ありがとう。
でも……これで終わりじゃないわ。ディオドラ様はきっと、また来る。私……逃げられないと思うの」
その言葉に、絶花も黒田坊も息を呑んだ。
俺はアヴィ先輩を正面から見据え、まっすぐ言った。
「逃げなくていい。俺たちが全部ぶっ壊すから」
アヴィ先輩の目が、ほんの少し潤んだように見えた。
こうして俺たちは、妙にしんみりした空気を抱えつつも、どこか笑える雰囲気のまま校庭を後にした。
心臓に悪い一日ではあったけど――
守るべき“先輩”がいる限り、後悔なんてしてる暇はない。
次回の王は
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