サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
森に足を踏み入れた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。頭上には木々が分厚い天蓋みたいに覆いかぶさり、陽の光は葉の隙間から細い槍みたいに差し込んでくる。風が吹くたび、枝葉がざわめいて、まるで誰かが遠くで囁いているみたいだ。
苔に覆われた巨木の根が地面をしっかりと締め上げていて、ところどころに出来た水たまりが空を映して静かに揺れている。足元は柔らかい落ち葉で覆われていて、踏むたびにサクッと乾いた音が響く。
鳥の鳴き声があちこちから飛んできては消え、森の奥からは何かの気配がじんわりと漂っていた。静かなようで、生き物の息づかいが濃い。まるで森そのものがこれから始まる戦いを見ているかのように、重々しく、堂々とそこに構えている──そんな感じだった。
木の幹に手をかけた瞬間、指先に伝わる湿り気で、この森がただの舞台じゃないことを改めて思い知らされた。俺はそのまま一気に枝へと身を運び、筋肉の流れに任せて跳ね上がる。視界が急に開け、天蓋を抜けた俺は、木のてっぺんに身を落ち着けた。
冷たい風が頬をかすめ、そこから見える光景に、思わず眉をひそめる。
空だ。空が、黒い羽音を伴ってうごめいている。
ディオドラの眷属たちだ。
あいつらは悪魔特有の黒い翼を広げ、まるで鷹が獲物を探すみたいに上空を旋回している。金色の魔法陣がいくつも浮かび、その輝きが夜の虫みたいに規則的に瞬いていた。魔力の圧が風に混じって降りてくる。殲滅戦の布陣──上から叩き潰す気、満々ってわけだ。
「空から攻める……こっちは翼すらねぇってのに。随分と分かりやすい戦い方じゃねぇか」
思わず独りごちる。
森の地形を利用するつもりだったが、このままじゃ頭上から一方的に焼かれる可能性が高い。あいつらは高みから俺たちを見下ろして、そのまま魔法で掃討するつもりだ。ディオドラはアヴィ先輩の“盾”の特性を否定していたが……その言葉を証明するように、まずは上から封殺しようとしている。
上空の連中を見ながら、胸の内に熱がひとつ、静かに灯った。
「……上から来るなら、こっちもやりようはある。覚悟しとけよ、ディオドラ」
奴らの攻め筋が丸見えな分、対策は立てやすい。ここからが俺の仕事だ。
風を切る翼の音を聞きながら、俺は次の一手は。
上空でディオドラ達が旋回し、魔法陣が光を強めていく。森の影に隠れていても、いずれ焼かれる。悠長に構えてる暇はない。
「……しゃあねぇ。こっちも準備するか」
俺は木から軽やかに地面へ降り立つと、腰に下げた妖怪ウォッチを手に取った。横でトムニャンが、しっぽを揺らしながら不安そうにこちらを見る。
「トムニャン、上から来る連中を迎え撃つ。力、借りるぞ」
「任せるにゃ! 太郎なら大丈夫にゃ!」
その声を聞いて、腹の底が決まった。
俺は妖怪ウォッチを掲げる。
「行くぞ……ワイルドに暴れる!」
ウォッチが光を放つ。
『Y!チェンジフォーム! 妖怪HERO! ワイルドボーイ!』
風が巻き上がり、視界が金色のエネルギーに包まれた。身体が軋むような衝撃とともに、筋肉が一気に密度を増していく。野性の力が血の奥から湧き上がり、全身を駆け巡る。
地面に影が伸び、俺は一歩、前へ踏み出した。
「ワイルドボーイ、ワイルドに見参!」
その瞬間、空気が変わった。森の匂いも、敵の魔力の揺れも、すべてが鋭く、はっきりと感じ取れる。
「さあ──空から来るなら、全部まとめてぶっ倒してやるよ」
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王