サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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兵器と僧侶の戦争 Ⅸ

森の上空が一瞬で戦場に変わった。

黒い翼を広げたディオドラの眷属たちが、まるでファンキーな不良エンジェルみたいに旋回しながら魔方陣を展開してる。

 

「おっと……派手な花火大会の始まりかい?」

 

紫色の魔力弾が雨みたいに降り注ぎ、森の木々がボンボン焦げる。

だが――遅いねぇ!

 

俺はすでに木の幹を蹴り上げ、枝から枝へと“ワイルドジャンプ”。

二丁拳銃をクルッと回しながら構えた。

 

「さぁて、ダンスパーティでも始めるとしますか!」

 

パンッ!!

 

放った弾丸は魔力弾より速く、上空の悪魔の翼をかすめて飛ぶ。

 

「くっ……どこから撃ってきている!?」

 

「ハァイ、こっちだよ!」

 

だけどすぐに別の枝に移動。

位置を悟らせる暇なんて与えない。

 

パンッ! パンッ!

 

二発撃てば、眷属たちのフォーメーションが乱れ始める。

 

「右だ! いや左か!?」「くそ、位置が分からん!」

 

「オ〜ウ、ご苦労さん! 森は俺のワンダーランドなんだぜ!」

 

木々の影をすり抜けるように移動しながら、俺は軽快に笑う。

枝から枝へ、足音ひとつ立てずに飛び回る俺のスピードは――

 

まさに猫。

アメリカの荒野を駆けるワイルドキャットだ。

 

ディオドラだけが落ち着いた声を保とうとしていた。

 

「地上だ……位置さえ分かれば狙い撃てる。落ち着け!」

 

「じゃあ当ててみなよ! ほらッ!」

 

俺は真上に向けて、二丁拳銃をクロスさせるように連射した。

 

バババババッ!!

 

弾丸は木々の隙間を縫って四方へ散り、眷属たちの顔面の横をかすめる。

 

「うわっ!?」「ひっ……!?」

 

「どうした〜? 空のフライングモンキーズ!

そんな距離じゃ俺は捕まらないぜぇ!」

 

眷属の一部がキレて森へ突っ込んでくる。

 

「もういい! 下へ降りろ!!」

 

「追い詰めるぞ!!」

 

「ヘイヘイ、ノリが良いじゃないか! カモーン、ベイビー!」

 

ディオドラの焦り声が聞こえる。

 

「馬鹿者! それは相手の誘導だ!!」

 

遅いっての。

俺はニヤリと笑って、木の影に姿を消す。

 

「さぁ、ディオドラ軍団……

ワイルドボーイのジャングルへようこそ!」

 

二丁拳銃が月光を反射し、森の奥へと消えていく。

 

「森の中で迷子になった悪魔どもを、

ワイルドに狩り尽くすとしようか!」

 

――ここからが、本当のショータイムだ。

 

森の奥へ誘い込まれたディオドラの眷属たちが、羽音を立てて降下してくる。

空気がざわつき、木々が揺れた。

 

その中心に――黒田坊がいた。

 

闇に紛れるように立つ巨体。

呼吸ひとつ乱さず、ただ静かに獲物を待つ狩人の姿。

 

「……来たな」

 

黒田坊の声は低く、重い。

その一言に、森の空気が変わった。

 

眷属の一人が警戒して叫ぶ。

 

「なんだこいつ……? ただの僧兵か――」

 

その瞬間――黒田坊の法衣が大きく広がった。

 

バサッ!!

 

袖、裾、背の裂け目から、無数の刃が飛び出す。

 

日本刀、両刃剣、槍、鎌、鎖分銅、手裏剣。

種類も形状もバラバラな暗器が、“全方位”へ一斉に射出された。

 

「ぐあッ!?」「避け――!」

 

夜の森が金属音に染まり、悪魔たちは悲鳴を上げながら地へ落ちていく。

 

黒田坊は微動だにしない。

腕を振るうことすらせず、ただ淡々と武器を放つだけ。

 

だが――敵は近づけない。

 

「な、なんだこの攻撃密度……!」

 

「闇の中から……どこから来るかわからない!!」

 

黒田坊が低く呟いた。

 

「俺は、若と姫を護るために刃を振るう……

その覚悟が、貴様らごとき悪魔に劣ると思うなよ」

 

怒気を含んだ声とともに、第二波が放たれた。

 

鎖分銅が木々を切り裂き、槍が闇を貫き、手裏剣が雨のように飛ぶ。

逃げ道など存在しない。

眷属は抵抗する間もなく次々と倒れていった。

 

その様子を木の影から見ていた俺は、思わず呟いた。

 

「……さすがだな、黒田坊」

 

黒田坊は振り返らず、ただ一言だけ返す。

 

「当然でござる、若。俺は若の“影”よ。

護る時は、何千、何万の刃を振るうだけだ」

 

その言葉とともに、森の闇が完全に黒田坊の支配下に置かれた。

 

地上戦は――ほぼ黒田坊が制圧した。

 

黒田坊が次々と眷属を沈めていくその頃──

上空では異様な焦りが漂い始めていた。

 

「……何だ、この数の減りは……ありえない」

 

ディオドラの声が震えている。

さっきまで優雅ぶっていた仮面の下に、焦りが隠しきれていないのが分かった。

 

レーティング・ゲーム。

人数差は絶対的なアドバンテージのはずだった。

 

それが崩れている。

 

「……忌々しい僧兵め……予想外の戦力を……!」

 

ディオドラの視線が森の奥を鋭く探り始めた。

森全体が、静かに、わずかに震えているように感じられたその時──

 

「……いた」

 

ディオドラの声が低く、湿り気を帯びる。

 

森の奥、木々の隙間から──アヴィ先輩の姿が見えた。

 

ディオドラの目が、ぎらりと光った。

 

「勝利条件は“キングの撃破”……つまり──

アヴィ様を倒せば、私の勝ちだ」

 

その声音は、完全に“紳士”ではなかった。

恋慕でも、婚約者への気遣いでもない。

 

欲望と支配欲と、勝利への歪んだ執念。

 

「あぁ……アヴィ様。あなたさえ倒せば、すべて終わるのですよ」

 

ディオドラの背後に、巨大な魔法陣が展開される。

毒々しい紫の光が森全体を照らし始めた。

 

「アヴィ先輩……!」

 

俺の喉が勝手に叫ぶ。

 

その瞬間、ディオドラが手を突き出した。

 

「“王”を落とす……!

終わりだ、アヴィ・アモン!!」

 

魔力の奔流が森を焼くように走る。

方向は一直線。

完全にアヴィ先輩を狙い撃ちだ。

 

アヴィ先輩は一瞬、息を呑み、身体が固まっていた。

眷属を持たない“王”が最も脆い瞬間。

 

森が悲鳴を上げるように光が迫る。

 

「アヴィ先輩ッ!!」

 

俺は躊躇なく地を蹴った。

 

ディオドラの魔力弾がアヴィ先輩へ一直線に迫る。

しかしアヴィ先輩は――怯まなかった。

 

彼女は静かに一歩前に進み、ホルスターから小さなナイフを抜き取る。

武器としては貧弱。それでも、その手の震えは一切ない。

 

ディオドラが鼻で笑う。

 

「そんな刃で何をするつもりですか?

“才能がない”あなたが、私に抗うなど滑稽ですよ」

 

紫の魔法陣が輝き、森を焼く光が放たれる。

 

だがアヴィ先輩は落ち着いていた。

 

魔力弾が迫る瞬間、身体を低く沈め、

地面の根を蹴り、滑り込むように回避する。

 

「なっ……!?」

 

ディオドラの驚愕が森に響く。

 

アヴィ先輩は、呼吸を乱しながらもはっきりと言った。

 

「そうですよ、ディオドラ様。私は……才能なんてありません。

 “盾”の血も、魔力の操作も、人よりずっと弱いです」

 

ナイフを構えたまま、彼女は続けた。

 

「でも……だからこそ、鍛錬だけは欠かしませんでした。

 才能の代わりに、毎日走って、避けて、何度も転んで……

 あなたに笑われても続けたんです」

 

次の魔力弾が来る。

だがアヴィ先輩は枝を蹴って跳ね、回避しながら間合いを詰めた。

 

「才能はなくても、努力することは誰にも邪魔できません!」

 

ナイフの切っ先がディオドラの仮面の横をかすめる。

 

その一撃に、ディオドラは本気で目を見開いた。

 

「……ま、待て……貴女が……私に触れた……?」

 

アヴィ先輩は肩で息をしながらも、しっかりとディオドラを見据えて言う。

 

「努力を嘲笑うあなたなんかのために……諦めてあげる理由はありません!」

 

その瞬間、ディオドラの表情にひびが入った。

 

怒りとも焦りともつかない、醜い感情が顔を歪ませる。

 

完全なる“隙”が生まれた。

 

俺は木の上で銃を構えながら、思わず笑みが漏れた。

 

「……やるじゃねぇか、アヴィ先輩。

 才能がなくても、あんた……強ぇよ」

 

枝がしなる。

俺は次の一手を放つため、さらに加速した。

 

アヴィ先輩が決定的な隙を作ったその瞬間、

俺の身体はもう空へ跳んでいた。

 

木の幹を二つ蹴って反動を得た俺は、上空へ大きく跳躍する。

空気が切り裂かれ、ディオドラと視線が交差した。

 

『エクゼキュート!』

 

二丁拳銃を天に掲げると、銃身から黄金の光が吹き上がった。

弾倉が回転し、エネルギーが収束していく。

 

「なっ……ッ!? どこから湧いた……!」

 

ディオドラが動揺して声を上げるが、もう遅い。

 

俺は銃を向けて叫ぶ。

 

「これが俺のとっておき――

黄昏乱れ撃ち!!」

 

バシュゥゥッ!!

 

空に広がるように、光弾が一斉に乱れ飛ぶ。

無数の弾丸が流星群みたいに舞い、ディオドラ目がけて降り注ぐ。

 

ディオドラの表情が一変した。

 

「……防御魔方陣展開ッ!! 私を侮るなァ!!」

 

巨大な紫の魔法陣が盾のように前に出現する。

複数の層を重ねた、悪魔の防御術式。

 

たしかに防御は固い。

 

だが――

 

「ヘイヘイ! ワイルドボーイを甘く見るなよ!」

 

俺の黄昏乱れ撃ちは、単発の威力じゃねぇ。

“量”が――ケタ違いだ。

 

ババババババババババババッ!!!

 

弾丸が防御魔方陣にぶつかるたび、紫の膜が激しく揺れる。

 

「ぐっ……これだけの弾数を……!?

 ありえ、な……ッ!!」

 

「アメリカンスタイルってのはなぁ!

 細けぇ理屈より“勢い”と“ノリ”だッ!!」

 

俺はさらに撃つ。

森全体が光に染まり、魔法陣がきしむ音が響く。

 

そして――

 

バキィィィィィン!!

 

魔方陣が、割れた。

 

「ば、馬鹿な……! 私の防御が……この世界の人間風情に……!」

 

悲鳴を上げたディオドラに、最後の光弾が直撃する。

 

眩い閃光。

ディオドラの身体が弾き飛ばされ、翼が砕け、森の地面へ叩きつけられる。

 

地面がめくれ上がり、土煙が舞い上がった。

 

俺は軽やかに着地し、銃をクルッと回して腰に収める。

 

「ワイルドボーイ、ワイルドに勝利ってね」

 

煙の中で倒れ伏すディオドラは、信じられないという顔のままだ。

 

「……なぜ……なぜ私が……この私が……ッ!」

 

俺はニッと笑った。

 

「理由は簡単だぜ、ディオドラ。

 あんたは“上から見てるだけ”だった。

 でも俺たちは違う。

 大切な仲間がいるから、全力で地面を蹴って戦えるんだ」

 

アヴィ先輩が胸に手を当てて、小さく息をついていた。

恐怖じゃない。

安堵と、誇りに満ちた顔。

 

勝負は――決まった。

 

レーティング・ゲーム、勝者は俺たちだ。

 

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
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