サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
脹相が一歩踏み込んだ瞬間、空気が裂けた。
血の気配が走り、次の一撃が来る――そう思った俺は、反射的に叫んでいた。
「やめろ、脹相!」
声に力を込めて、二人の間に割って入る。
脹相は動きを止めたが、その目に宿る怒りは消えていない。
「弟……分かっているのか」
低い声だった。
「この街で起きようとしていることを知りながら、
それを黙って見ている存在がどれだけ危険か」
「傍観者は、いつ敵になるか分からない。
放っておけば、必ず刃が弟に向く」
その言葉に、火黒は肩をすくめるだけだった。
「買い被りすぎだな」
刀を下ろし、興味なさそうに言う。
「俺はただ、見たことを話しただけだ。
戦争を止めるとも、煽るとも言ってねぇ」
「無責任だな」
脹相が吐き捨てる。
「そうかもな」
火黒は否定しない。
ただ、薄く笑った。
「だがな……選ぶのは大将だろ?」
その視線が、俺に向けられた。
重く、試すような目だった。
俺は息を吸い、脹相を見る。
「……今は、ここまでだ」
脹相は一瞬だけ歯を食いしばり、やがて静かに一歩下がった。
脹相が一歩下がったあとも、火黒はその場を動かなかった。
夜風に提灯が揺れ、屋台の親父が気まずそうに目を逸らしている。
俺は一度、深く息を吐いてから火黒を見る。
「……立ち去らないってことはさ」
火黒は眉を上げる。
「俺に聞かせる気があるってことだろ」
その言葉に、火黒は小さく笑った。
「察しがいいな、大将」
脹相が一瞬、睨みを強めるが、俺は手で制した。
「掴んでることを言え。
さっきの話――聖剣と戦争屋。全部、繋がってるんだろ」
火黒はしばらく黙り込み、やがて箸で空になった丼を軽く叩いた。
「エクスカリバーだ」
その一言で、空気が張り詰める。
「この街で起きてる聖剣絡みの騒ぎ。
裏で糸を引いてるのが、さっき言った堕天使――コカビエルだ」
「……あいつが?」
「そうだ。
聖剣を集めて、昔みたいな戦争を再現する気らしい」
火黒は淡々と続ける。
「暴れるための舞台装置だな。
教会も、堕天使も、悪魔も……全部巻き込む」
脹相が低く唸る。
「弟を戦場に立たせるつもりか」
「さあな」
火黒は曖昧に笑った。
「だが、もう動き出してる。
エクスカリバーの件は、その第一幕だ」
俺は拳を握りしめる。
「……つまり、知らないで済む話じゃないってことか」
火黒は俺を見て、楽しそうに目を細めた。
「ようやく同じ景色が見えてきたな、大将」
その笑みが、やけに不吉に見えた。
「はぁ、まぁ、こういう時のお前が話す内容は間違いはないだろうな。そういう事で、良いか脹相」
「・・・お前が言うのならば、今は従おう。だが、こいつが怪しい動きをした時は」
「その時は、ぜひともなぁ」
次回の王は
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