サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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復讐者の刀 Ⅴ

火黒の話を聞き終えたあと、俺は自然と考えを巡らせていた。

エクスカリバー、堕天使コカビエル、そしてこの街で起き始めている異変。

どれも断片的だが、確実に同じ方向を向いている。

 

「……調べるしかないな」

 

そう口にすると、脹相が静かに頷いた。

弟を守るという意思が、その背中からはっきり伝わってくる。

 

その様子を見て、火黒は楽しそうに鼻で笑った。

 

「真面目だねぇ。動きが早いのは嫌いじゃねぇ」

 

そして、軽く伸びをすると、屋台から一歩離れる。

 

「俺は別行動だ」

 

「何か掴んでるのか?」

 

俺が聞くと、火黒は振り返り、意味深な笑みを浮かべた。

 

「面白い奴がいてな。

ちょっと観察しとく価値がある」

 

それだけ言い残し、火黒は夜の闇へ歩き出す。

敵か味方か、相変わらず分からない。

火黒の背中が闇に溶けていくのを見送りながら、脹相は一歩も動かなかった。

その視線は鋭く、明確な警戒を帯びている。

 

「……信用ならん」

 

低く吐き捨てるような声だった。

 

「弟。あの男は危険だ。

敵でも味方でもない者ほど、最も予測がつかない」

 

「だからって、放っておくわけにもいかないだろ」

 

俺が言うと、脹相は一瞬だけ黙り込み、すぐに結論を出した。

 

「二人きりで行動させるのは危険だ」

 

そう言って、彼は静かに手を上げる。

 

「来い」

 

次の瞬間、空気が歪み、屋台の影から巨躯が姿を現した。

黒い法衣に身を包んだ男――黒田坊だ。

 

「お呼びでしょうか、若」

 

「ああ」

 

脹相は火黒が去った方向を顎で示す。

 

「今から、あの男と行動を共にしろ。

目を離すな。だが、無理に止めるな」

 

黒田坊は一礼し、短く答える。

 

「御意」

 

そうして、音もなく夜の闇へ消えていった。

 

俺はその背中を見送りながら、胸の奥に小さな緊張を覚える。

信頼と警戒が、同時に動き始めた――そんな感覚だった。

黒田坊が闇へ踏み出そうとした、その直前だった。

脹相が低く声をかける。

 

「待て、黒田坊」

 

足を止めた黒田坊は、静かに振り返り、脹相の顔を見る。

その目はいつも通り無表情だが、問いを受け取る準備はできていた。

 

「……一つ、聞いておきたい」

 

脹相は一拍置き、言葉を選ぶように続ける。

 

「万が一だ。

あの男が弟に牙を剥く兆しを見せた場合――どうする」

 

空気が、わずかに張り詰めた。

屋台の灯りが揺れ、夜風が二人の間を抜ける。

 

黒田坊はすぐには答えなかった。

だが迷っている様子でもない。

 

「若の命が最優先です」

 

それは、即答だった。

 

「若が止めよと仰れば止め、

排せよと仰れば、その時は迷いません」

 

淡々とした声。

しかし、その中に揺るぎはない。

 

脹相はそれでも視線を外さず、さらに問いを重ねる。

 

「もし……若が決断を躊躇した場合は?」

 

黒田坊は、ほんのわずかに首を傾けた。

 

「その時は」

 

一拍。

 

「脹相殿のご判断にも、私は同意します」

 

その言葉に、脹相の眉がわずかに動く。

 

「若は、信じると決めた者を簡単には切り捨てません。

それが美徳であり、同時に危うさでもある」

 

黒田坊は一礼する。

 

「故に、若の傍には我らが必要なのです」

 

脹相は静かに息を吐いた。

 

「……分かっている」

 

短くそう答え、脹相は道を譲る。

 

「行け。

だが決して、目を離すな」

 

黒田坊は深く一礼し、影の中へ溶けていった。

残された俺は、そのやり取りを黙って聞きながら、胸の奥で小さく覚悟を固めていた。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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