サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
エクスカリバーという言葉を軸に、俺たちは動き始めていた。
と言っても、その夜は俺一人だった。
学園を出て、少し遠回りして帰ろうとした時だ。
夜の空気の中に、微かな違和感を感じた。
(……いるな)
視線を向けた先、街灯の陰。
そこに立っていたのは――以前、道端で行き倒れていた、あの青髪の少女だった。
「……またか」
声には出さず、そう思う。
彼女は誰かを待っている様子でもなく、ただ一人で、どこか落ち着かない様子だった。
そして、しばらく周囲を確認したあと、意を決したように歩き出す。
向かう先は、暗い路地の奥。
人通りの少ない、夜の街だ。
(……目的地があるって顔だな)
前に会った時とは違う。
迷子でも、行き倒れでもない。
何かを探している。
あるいは、何かに向かっている。
俺は少し迷ってから、足を動かした。
――見過ごすには、嫌な予感が強すぎた。
路地へ向かう彼女の背中を追おうとした、その時だった。
すぐ傍で、低い声が落ちる。
「弟」
脹相は、いつの間にか俺の隣に立っていた。
その視線は、俺ではなく――前を行く青髪の少女に向けられている。
「……彼女を助けるつもりか」
問いは静かだったが、重みがあった。
俺は足を止めず、短く答える。
「当然だろ」
脹相がわずかに目を細める。
「理由は?」
「困ってる奴を見て、放っておく王はいない」
それだけだ。
理屈でも計算でもない。
一拍の沈黙の後、脹相は小さく息を吐き、口元を緩めた。
「……さすがは、俺の弟だ」
その声には、誇りと確信が混じっていた。
『カモン!ゴースト!――Y!チェンジフォーム!妖怪HERO!剣豪紅丸!!』
その音声が夜に響いた瞬間、俺の足元から赤い光が噴き上がった。
空気が震え、周囲の闇が一瞬だけ引き裂かれる。
胸元のウォッチが熱を帯び、次の瞬間、背後から聞き慣れた声が重なる。
――ニャッ!? 来たニャ! 合体だニャ!
ジバニャンの気配が、炎のように俺の背へと重なった。
軽さと熱さ、そしてやたらとうるさい存在感。それでも、不思議と嫌じゃない。
赤い光が身体を包み込み、制服の感触が消えていく。
代わりに、重みのある鎧が形を成し、腕には確かな質量が宿った。
足を踏みしめると、地面がわずかに鳴る。
視界が研ぎ澄まされ、呼吸が整う。
腰に差された刀を、自然と握っていた。
考えるより先に、身体が「戦う形」を理解している。
俺は一歩前に出て、刀を構える。
「――剣豪紅丸、推して参る!」
その声は、俺のものだ。
だが同時に、剣士としての覚悟を帯びた、もう一つの声でもあった。
夜の街に、赤き剣豪が立つ。
守るために。
迷わず斬るために。
「さて、行くぞ!脹相殿!」
「お兄ちゃんと呼んでくれ!」
「・・・行くぞ、兄上」
「うむ!」
次回の王は
-
妖怪王
-
機械王
-
怪獣王
-
幻想王