サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
それを俺が知ったのは、少し後のことだ。
直接見たわけじゃない。火黒と行動を共にしていた黒田坊から、淡々とした報告として聞かされた。
その夜、学園のどこかで――
火黒は自らを「復讐の協力者」だと名乗り、木場の前に姿を現したらしい。
理由は単純だ。
同じ神器を持ち、同じように過去に縛られているから。
復讐の先で、人がどう壊れるのか――それを見届けたいだけだと。
当然、兵藤たちは警戒した。
突然現れた素性不明の男が、あまりにも軽い口調で「手を貸す」と言ったのだから無理もない。
「信用できない」「怪しすぎる」
そんな視線が向けられる中で、火黒は気にも留めず、ただ面白そうに笑っていたという。
その横で、黒田坊は一歩引いた位置から、終始様子を見ていた。
剣に手を掛けることはない。だが、火黒の一挙手一投足を逃さない。
兵藤たちから見れば、
一人は不敵な協力者。
もう一人は無言の監視者。
違和感しかない組み合わせだったはずだ。
「火黒殿は、木場殿を利用しているようで……同時に、本気で見極めようともしていました」
黒田坊はそう締めくくった。
コカビエルが姿を現し、学園は一気に戦場と化した。
悪魔、堕天使、教会――それぞれの思惑がぶつかり合う中で、火黒は最後まで変わらなかったらしい。
焦りも、動揺もない。
誰かを守ろうと前に出ることもなければ、戦局を動かそうとすることもない。
ただ、少し離れた場所から、すべてを“見ていた”。
そして、決定的な局面。
バルパー・ガリレイが持っていた木場と共にいた仲間たちの因子
それを、木場が拾い、木場は新たなエクスカリバーをその手に掴み取る。
復讐のためだけに振るわれるはずだった剣が、
仲間の想いを背負った剣へと変わった瞬間だった。
その結末を見届けた火黒は、ただ一言も発さず――
口元に、静かな笑みを浮かべていたという。
失望でもなく、落胆でもない。
ましてや怒りでもない。
「……そう来たか」
そう言わんばかりの、楽しげな笑みだったと。
復讐の先で人がどうなるのか。
火黒が知りたかった答えは、どうやら“破滅”だけじゃなかったらしい。
だが、木場が答えを掴んでも、戦況そのものは変わらなかった。
コカビエルは空に浮かび、嗤いながら告げたという。
――聖書の神は、すでに死んでいる。
その言葉が落ちた瞬間、場にいた者たちの間に混乱が走った。
信仰、秩序、拠り所。根幹を揺さぶる一言だった。
その混沌の只中で、コカビエルはふと視線を逸らし、戦場の端に立つ火黒を見た。
「そこにいるお前もどうだ?」
愉快そうな声だった。
「お前もまた、戦闘を求めるだろう?」
火黒は即座に剣を構えることはしなかった。
ただ、口元を歪め、楽しげに笑ったという。
「確かに、魅力的な誘いだ」
一拍。
「けどな。今の俺はどうも――
お前より、ずっと魅力的な奴を見つけちまっててな」
その言葉の意味を、コカビエルは深く考えなかった。
興味を失ったように肩をすくめる。
「ふん……ならば、そこで見ていろ」
次の瞬間、コカビエルは光を凝縮し、一本の槍を形作った。
絶望に沈み、膝をついていた青髪の少女――ゼノヴィアへ向けて。
躊躇はなかった。
それは、神の名を嘲る者が放つ、純粋な破壊の一撃だった。
光の槍が放たれ、夜空を裂く。
その軌道の先にあるのが、何も知らず、何も守れず、立ち尽くす彼女だとしても――
コカビエルにとっては、ただの“演出”に過ぎなかった。
光の槍が放たれた、その刹那だった。
夜空を裂いて飛翔するはずのそれは――途中で、真っ二つに断たれる。
乾いた金属音。
火花と共に、光が霧散した。
「――なに?」
コカビエルが眉をひそめる。
そして、全員の視線が一点に集まった。
俺は、刀を肩に担いだまま一歩前へ出る。
絶望に沈んでいた青髪の少女――ゼノヴィアの前に、完全に立ち塞がる形で。
「……間に合ったな」
静まり返る戦場。
悪魔も、堕天使も、教会の者たちも、ただその姿を見つめていた。
俺は刀を構え直し、空に浮かぶ堕天使を真っ直ぐ睨み据える。
「――紅く染まったこの体、
お主の血で更に紅くなる……の巻!」
宣言と同時に、刀身がわずかに鳴いた。
次の瞬間、三人は自然と動いていた。
言葉も合図もいらない。
剣豪紅丸の――
俺の後ろへ。
戦場の主導権は、静かに、だが確実に移った。
次回の王は
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妖怪王
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機械王
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怪獣王
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幻想王