サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
校舎裏で足を止めた瞬間、俺よりも先に絶花が気配に反応した。
「……あ」
短く、しかし確信を持った声。
白い影がひょい、と壁の上から姿を現す。
「やっほー。相変わらず剣の気配が重いね、絶花」
「……白織」
名前を呼ばれた瞬間、絶花の肩から明らかに力が抜けた。
警戒ではなく、呆れに近い反応だ。
「久し振り。……生きてたんだ」
「それ挨拶としてどうなの」
「そっちが先に言いそうだったから」
「ひどっ」
白織はそう言いながらも、どこか嬉しそうに笑う。
俺は二人を見比べる。
「……知り合いか?」
「知り合いっていうか」
「腐れ縁っていうか」
二人同時に言って、同時に顔をしかめた。
「言い方」
「そっちこそ」
テンポよく噛み合うやり取りに、俺は内心で納得する。
なるほど、気質が似ている。
白織はひらりと地面に降り、絶花の剣をちらりと見る。
「相変わらず、無茶な力してるね。その剣。まだ振り回されてる?」
「……前よりはマシ」
「前より、ね。死なない程度?」
「死なない程度」
即答だった。
白織は満足そうに頷く。
「うん、それでいい。それ以上は贅沢」
「白織基準は極端すぎると思う」
「生存第一主義だから」
さらっと言い切る辺り、やはりこいつはこいつだ。
絶花は小さく苦笑いしながらも、白織を見る目は柔らかい。
「久し振りに会ったのに、相変わらずだね」
「絶花も。真面目で、危なっかしくて、放っておけない」
「それ褒めてる?」
「半分くらい」
俺は咳払いを一つ。
「久し振りなんだろ。もう少し感動的な再会はないのか」
二人は一瞬俺を見て、次の瞬間には同時に言った。
「ない」
「ないね」
即答だった。
白織が肩をすくめる。
「だってさ。生きてたらまた会うでしょ」
絶花はそれに小さく頷く。
「……うん。そうだね」
短いやり取り。
だがそこには、言葉以上の信頼があった。
俺はその様子を見て、少しだけ安心する。
この二人が並ぶなら、少なくとも背中は預けられる。
たとえ、性格が似すぎて面倒でも。
そのまま、 放課後の帰り道。
夕焼けに染まる通学路を、俺、絶花、白織の三人で並んで歩いていた。
他愛もない会話が続いていた、その時だった。
「おーい、ちょっといいか?」
やけに軽い声が、横合いから割り込んでくる。
俺が足を止めるより先に、白織がぴたりと動きを止めた。
次の瞬間、彼女は露骨に嫌そうな顔をする。
「……あー。はいはい。来た来た」
「え、なに? 知り合い?」
困惑する絶花をよそに、白織は相手をじっと観察する。
白衣にサングラス、どう見ても怪しい男だが、本人は気にした様子もなく手を振った。
「やあやあ、放課後を満喫中の学生諸君。邪魔して悪いな」
「……誰だ」
俺が聞くと、男はにやっと笑う。
「俺? アザゼルだ。まぁ、堕天使代表って思ってくれりゃ分かりやすい」
「……堕天使!?」
絶花が分かりやすく固まった。
「白織、どういうこと!?」
「そのまんまの意味。たぶん、この人はガチ」
白織は肩をすくめる。
「空気が人間じゃないし。あと、図々しさが上位存在特有」
「ひでぇな」
アザゼルは笑いながらも否定しない。
「で、本題だ。俺はな、君に用がある」
そう言って、真っ直ぐ俺を見る。
「コカビエルを倒したのは、お前だろ?」
その瞬間、絶花が息を呑み、白織が「やっぱりね」と呟いた。
「……どこでそれを」
「独自調査ってやつだ。結構派手だったしな」
アザゼルは楽しそうだ。
「正直言って、面白すぎる。人間が妖怪と混じって、あそこまでやるとは思わなかった」
「観察対象か?」
「いや、もっと前向きな話だ」
アザゼルは親指で自分を指す。
「近いうちに三大勢力会議がある。悪魔、天使、堕天使が集まるやつだ」
「……そんな場所に俺を?」
絶花が不安そうに俺を見る。
「太郎、大丈夫なの?」
「安心しろ、無理やり連れてく気はない」
アザゼルが即答する。
「ただな、コカビエルを倒した存在を呼ばない理由がない。むしろ呼ばないと問題になる」
「つまり、招待という名の強制?」
白織が皮肉っぽく言う。
「まぁ、そういう側面もある」
アザゼルは悪びれず笑った。
「でもよ、悪い話じゃない。お前の考え――全種族を含めた平和。かなり興味ある」
俺は少し黙り、答える。
「……話を聞くだけなら、いい」
「即答しないのがいいねぇ」
アザゼルは満足そうに頷いた。
「決まりだ。詳細はまた連絡する」
そう言って、彼は軽く手を振る。
「じゃ、またな。次はもっと真面目な場で会おうぜ」
次の瞬間、アザゼルの姿はふっと消えた。
沈黙。
「……太郎」
絶花が不安そうに呼ぶ。
「なんか、どんどん大事になってない?」
「今さらだろ」
白織がため息混じりに言う。
「でもまあ、面白くなってきた」
俺は前を向いて歩き出す。
「俺は俺のやり方でやる。それだけだ」
二人は顔を見合わせ、そして黙って俺の後を追ってきた。
次回の王は
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