サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
駒王学園高等部、普段は封鎖されている会議室。
その扉をくぐった瞬間、拙者は肌で理解した。――ここは戦場だ、と。
拙者は今、剣豪紅丸。
和風の装束に身を包み、猫の顔を模した仮面を被る侍の姿。人の世の理から外れた存在として、この場に立っている。
視線が集中する。
悪意ではない。だが、好奇、警戒、計測――ありとあらゆる意図が混ざった視線だ。
それらを受け止めながら、拙者は会議室の中を静かに見渡した。
まず目に留まったのは、既に席についている黒江残月。
中等部の生徒会長。
だが、その立ち姿は生徒のそれではない。周囲を見渡す視線、微動だにしない姿勢。守るべきものを背負っている者の気配だ。
「……来たか。そっちが、例の“剣豪紅丸”か」
「拙者が紅丸。貴殿は?」
「黒江残月だ。中等部生徒会長……という立場で、この場に呼ばれている」
あくまでも、この場では初対面という事にしている。
「中等部よりの参加とは、異例よな」
「この街で起きている事象に、無関係ではいられなかった。それだけだ」
「人々を守る為、か」
「そうだ。立場上、それが俺の役目だ」
その言葉に、偽りは感じなかった。
少なくとも“今”は。
「……なるほど。志は近しい」
「同じとは言わない。ただ、放置は出来ない」
「同感よ」
会話を交わしながら、拙者は周囲へと意識を巡らせる。
悪魔側の席。
中央に座る紅髪の少女――自然と中心に立つ器だ。隣の少年は未熟だが真っ直ぐで、視線に迷いがない。黒髪の女性は余裕を纏い、こちらを試すように眺めている。
……間違いない。全員、悪魔だ。
天使側には穏やかな男。柔らかい雰囲気の裏に、鋭い理性を感じる。
堕天使側では、白衣にサングラスの男――アザゼルが、愉快そうにこちらを見ていた。拙者を呼び寄せた張本人。全て承知の上だろう。
そして、拙者の半歩後ろ。
白織が無言で立っている。
何も語らず、何も主張しない。ただ静かにそこに在る。
だが、この場の者たちは気づいている。あれが“影”であり、“刃”であることを。
「ところで」
「なんだ」
「この場の視線、随分と集まっておるが」
「当然だ。三大勢力の会議室に、正体不明の存在が二人もいる」
「二人、とは」
白織が一歩、拙者の背後に寄る。
何も言わない。ただ、それだけで十分だった。
「……その同行者か」
「左様。拙者の家臣にして、補佐役」
「随分と……静かな者だな」
「必要以上に口を開かぬだけよ」
「……なるほど」
黒江は小さく頷いた。
「覚悟の無い者は、この場に立てぬ」
「……確かに」
「貴殿も、その覚悟を背負っていると見た」
「人々を守る立場にある以上、当然だ」
「良い答えよ」
だが、拙者はそこで一度、言葉を区切る。
「ただし」
「?」
「守るという言葉は、立つ位置によって意味が変わる」
「……否定はしない」
「拙者は、その違いを見極めに来た」
「俺もだ」
「ならば」
「?」
「この場では、刃は納めよう」
「同意する」
「時が来れば、また話そう」
「その時は、互いに曇りなき言葉で」
「約束しよう、紅丸」
「うむ、黒江殿」
会話が途切れ、再び静寂が戻る。
拙者は改めて理解した。
この会議室にいる者たちは、皆“人ではない側”だ。
だが同時に、それぞれが異なる正義を背負っている。
敵ではない。
だが、味方とも限らぬ。
だからこそ、目を逸らさない。
刃ではなく、覚悟で斬るために。
拙者は猫侍の仮面の下で静かに息を整え、三大勢力会議の行方を見据えていた。
次回の王は
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