サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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妖怪と宇宙人と三大勢力会議 Ⅳ

会議室に流れ込んだ気配は、疑いようもなく悪魔だった。

魔力の質が、人のそれじゃない。

禍の団――人外。

その瞬間、空気が一段冷えた。

 

「……来たか」

 

黒江残月が、低く呟いた。

次の瞬間、彼の影が濃く沈み、床を這う霧が一気に広がる。

ミストシャドウ。

変身は合図じゃない。

処刑開始の宣告だ。

 

最初に動いた悪魔が、嘲るように笑った。

「人間が、何を――」

 

言葉は最後まで続かなかった。

影が跳ね上がり、悪魔の口を内側から貫いた。

喉笛を裂く音。

血が噴き出す前に、霧がそれを包み込み、床に一滴も落とさせない。

 

「――人の言葉を使うな」

 

ミストシャドウの声は、冷えていた。

だが、その奥に、はっきりとした怒りが滲んでいる。

 

「奪う側が、人を名乗るな」

 

二体目の悪魔が魔方陣を展開する。

光が走る。

だが、影が先に動いた。

床の影が悪魔の足を縫い止め、天井の影が首へと落ちる。

 

「俺は見てきた」

 

影の刃が、ためらいなく振り下ろされる。

首が落ちる。

再生する暇すら与えない。

 

「家族が殺されるところも」

「街が壊れるところも」

「泣き叫ぶ声も、全部だ」

 

怒号を上げて突進してきた悪魔を、ミストシャドウは正面から迎えた。

回避しない。

受け止める。

その拳を影で包み込み、肘から先をねじ切る。

 

「お前たちは、いつもそうだ」

 

影が伸び、背後からもう一体を貫く。

同時に、霧が視界を奪う。

完全な分断。

完全な殲滅。

 

「強い方が正しい」

「生き残った方が勝ちだと、そう言って――」

 

最後の悪魔が、命乞いをした。

人の言葉で。

人の顔で。

 

ミストシャドウは、初めて足を止めた。

そして、静かに告げる。

 

「だから、俺が否定する」

 

影が悪魔の心臓を貫いた。

一瞬。

それで終わりだ。

 

「人類の世界に、居場所はない」

 

会議室に残ったのは、血の匂いと沈黙だけだった。

建物は無傷。

一般人への被害、ゼロ。

徹底しすぎるほどの制圧。

 

拙者は、刀を握ったまま息を吐いた。

強い。

だが、それ以上に――重い。

 

「……それがお前の正義か」

 

ミストシャドウは振り返らない。

影の中から、怒りを押し殺したような声が返ってくる。

 

「正義じゃない」

「これは、決別だ」

 

その背中を見て、はっきり分かった。

この男は、怒りを燃料にして立っている。

人外すべてを憎みながら、それでも人類を守るために刃を振るう。

 

――同じ戦場に立っている。

だが、進む道は、決して同じじゃない。

影が悪魔の胴を断ち割った瞬間、ミストシャドウの動きがほんの一拍だけ止まった。

霧の中で、彼は低く吐き捨てるように言った。

 

「……泣き声が、嫌いだ」

 

悪魔の断末魔が途切れる。

続けて、まるで独り言のように。

 

「夜中に響くんだ」

「助けを呼ぶ声は」

 

影が床を這い、次の標的を捕らえる。

逃げようとした悪魔の足が、影に縫い止められた。

 

「守れると思ってた」

「鍵をかけて、電気を消して、じっとしていれば……」

 

言葉が、そこで一瞬詰まる。

だが、刃は止まらない。

 

「――甘かった」

 

影が喉を裂く。

血が霧に溶ける。

 

「人じゃないものは、約束を守らない」

「理屈も、情けも、通じない」

 

ミストシャドウの声が、ほんの僅かに震えた。

怒りではない。

抑え込んだ記憶の、軋む音だ。

 

「だから俺は」

「先に斬る」

 

最後の一体を影が貫いた後、彼はしばらくその場から動かなかった。

霧の向こうで、拳がわずかに握り締められる。

 

「もう二度と――」

「家族の席が、空くのは見たくない」

 

その一言で、全てが分かった気がした。

拙者は、それ以上、何も聞かなかった。

 

この男は、守れなかった過去を背負っている。

だからこそ、守るために躊躇しない。

人外を、排除する。

 

――それが、黒江残月という人間の在り方だ。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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