サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
戦いを見届けた後だった。
「話がある、こっちに来い、紅丸」
「・・・話だと」
その言葉に対して、拙者は疑問に思う。
だが、断る訳にはいかない様子。
拙者は、そのまま会議室に出た。
瞬間、空気が変わった。
いや、正確には――変えられた。
背後で、静かに結界が閉じる気配。
音はない。
だが、外界との繋がりが断ち切られたのが、肌で分かった。
「随分と用意がいいな」
拙者がそう言うと、黒江残月は振り返りもせずに答えた。
「ここから行う会話は、他の奴らに聞かれたくないからな。既に人に及ぼす被害がなければ良いだろう」
「否定はしない。だが――」
拙者は一歩前に出る。
「ここまでして話す内容か?」
黒江は、ようやくこちらを見た。
その目には、迷いがない。
「話で済むなら、ここまではしない」
短い沈黙。
白織が背後で微かに空気を張るのが分かる。
だが、口は挟まない。
黒江は淡々と続けた。
「禍の団は危険だ。だが、あれは氷山の一角だ」
「……三大勢力の事を言っているな」
拙者がそう言うと、黒江はわずかに目を細めた。
「察しがいいな、さすがは“王”を名乗るだけはある」
その言葉には、皮肉が混じっていた。
「悪魔も、天使も、堕天使も、口では秩序を語る。
だが、決定権を持っているのは、いつも人外だ」
拙者は言い返す。
「だからこそ、話し合う場が必要なんだ。力を持つ者が、力を使わずに済むようにな」
「甘い」
即答だった。
「力を持つ者は、必ず使う。使わずに済んでいるのは、ただの順番待ちだ」
黒江の声が、僅かに低くなる。
「禍の団も、三大勢力も、本質は同じだ。人間の上に立ち、選ぶ側に回っている」
拙者は、静かに刀の柄に手を置いた。
「だから、全て斬ると?」
「必要ならな」
「それは、守る事じゃない」
拙者は真っ直ぐに告げる。
「恐怖で縛るのは、管理だ、排除は、解決じゃない」
黒江の眉が、僅かに動いた。
「じゃあ聞く」
彼は一歩、こちらに踏み出す。
「お前は、人外を守るために、人間が犠牲になる事を、許せるか?」
「許さない」
即答だった。
「なら、逆だ」
黒江の視線が鋭くなる。
「人間を守るために、人外を斬れるか?」
拙者は、言葉に詰まった。
白織の気配が、ほんの少しだけ強まる。
「どちらもだ、それだけで態度を変えるのは王ではないからな」
それが、拙者の答えだった。
黒江は、ゆっくりと首を振る。
「その“未来”の間に、何人死ぬ?」
「それでも、可能性を捨てない」
「可能性に賭けて、家族を失った人間を、俺は何人も見てきた」
空気が、張り詰める。
「……だから、お前を確認する必要があった」
黒江は、静かに告げた。
「お前は、人類の味方か、それとも、人外の王か」
「どちらでもない」
拙者は、はっきりと言った。
「全てを含めた未来の王を選ぶ」
その瞬間、黒江は目を閉じた。
そして――覚悟を決めた顔で、告げる。
「ならば、止める、お前が人類の敵になる前に」
黒江の影が、歪む。
異質な気配が、結界の内側に満ちていく。
「出てこい、阿伏兎」
影の中から現れたのは、戦場を知り尽くした宇宙の戦士。
白織が、無言で拙者の横に立つ。
拙者は刀を抜いた。
会議は終わった。
ここからは――
思想と信念を賭けた、決戦だ。
次回の王は
-
妖怪王
-
機械王
-
怪獣王
-
幻想王