サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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妖怪と宇宙人と三大勢力会議 Ⅸ

張り巡らされた蜘蛛の糸が、夜の校庭を静かに縫い止めていた。

白い照明に照らされた砂地には、踏み荒らされた跡と、見えない線の影が幾重にも重なっている。

拙者は霊鎌を下げ、間合いを保ったまま二人を視界に収めていた。

 

「……ここまで、か」

 

阿伏兎が一歩、前へ出かけて止まる。

踏み込めば届く。

だが、その一歩の先に、見えない“空白”があることを、彼は理解していた。

 

「行ける。だが、その瞬間に背後が空く」

 

阿伏兎の声は低く、冷静だった。

勝てる可能性を否定していない。

それでも、選ばない。

 

「このまま続けりゃ、俺は勝てるかもしれねぇ。だがな……」

 

彼は視線をずらし、背後を意識する。

そこにいるのは、ミストシャドウ――黒江残月だ。

 

「その間に“守るもん”を失う。それだけは、やっちゃならねぇ」

 

拙者は鎌を構えたまま、動かない。

追い詰める必要はない。

この言葉が出た時点で、勝負は決している。

 

「若いの。ここまでだ」

 

阿伏兎が一歩下がり、黒江の前に立つ。

盾となる位置だ。

同時に、彼の戦意がはっきりと引いていくのを感じる。

 

「判断が早いでござるな」

 

「遅れりゃ、護衛じゃねぇ」

 

短い応酬。

それで十分だった。

 

ミストシャドウが、こちらを見る。

影の奥で、目だけが細く笑っている。

 

「やっぱり、君は面白いな」

 

その声は、拙者たちにだけ届く距離だった。

外にいる者たちには、夜風が吹いた程度にしか感じられない。

 

「人外を守ろうとする人間。

排除を選ばない王……いや、王になろうとする者、か」

 

拙者は答えない。

答える必要がないからだ。

 

「この場で決着をつける気はない。君のやり方は……嫌いじゃない」

 

黒江は軽く肩をすくめる。

 

「だからこそ、また会おう。太郎」

 

名を呼ばれ、拙者は目を細める。

 

「次に会う時は、もっとはっきりした立場で、でござるな」

 

「そのつもりだよ」

 

黒江がそう言い、阿伏兎に目配せする。

阿伏兎は無言でうなずき、さらに一歩、前に出て完全に黒江を庇った。

 

「行くぞ」

 

その一言と同時に、結界が静かに解かれる。

張り詰めていた空気がほどけ、校庭の広さが元に戻る感覚が走った。

 

「……撤退、か」

 

拙者がそう呟くと、阿伏兎がちらりと振り返る。

 

「今回はな。次がなけりゃ、それでいい」

 

それだけ言い残し、二人の気配は夜に溶けていった。

 

戦いは終わった。

倒したわけではない。

だが、守るべきものを守り切った。

 

拙者は霊鎌を肩に担ぎ、息を吐く。

 

「次がある……そういう顔だったでござるな」

 

誰に言うでもなく、そう呟く。

その言葉だけが、静まり返った校庭に残っていた。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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