サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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嘘つきと暴走 Ⅴ

オカルト研究部の部室は、いつもより少しだけ空気が張り詰めていた。

机の上に広げられた資料。ホワイトボードに書かれた陣形案。誰もが口には出さないが、次に控えるディオドラとのレーティング・ゲームが「絶対に落とせない一戦」だという共通認識が、部屋全体を支配していた。

 

「部長! 絶対に勝ちましょう!」

兵藤が、やや力みすぎた声で宣言する。

 

「ええ、勿論よ」

リアスは即答したが、その声音には覚悟と同時に慎重さも滲んでいた。

勝つつもりで挑む。だが、慢心はしない。

そんな部長らしい態度に、皆が小さく頷く。

 

そうやって互いを鼓舞し合っていた、その最中だった。

 

「へぇ……えらい気合入っとるやん。青春やなぁ」

 

場違いに軽い、しかも関西訛りのある声。

兵藤は反射的に顔を上げた。

 

「その声は――っ!」

 

天井近く。正確には、天井に足を引っ掛けるようにして、逆さまのままこちらを覗き込んでいる男がいた。

 

「お前は……転校生の平子!? なんでここに!」

 

「なんでって言われてもなぁ」

平子はぶらぶらと揺れながら、楽しそうに笑う。

「この前も言うたやろ。俺、王様の遣いみたいなもんやって」

 

「それは……紅丸のことね」

 

リアスが視線を鋭くする。

未だに掴めない相手。信用するには軽すぎて、疑うには情報が足りない。

 

「せやせや。まぁ今回はな、紅丸そのものの話っちゅうより、ちょっとした“提案”や」

 

「……提案?」

 

リアスが問い返す。

平子はその反応を待っていたかのように、わざとらしく間を置いた。

 

「あんたらのレーティング・ゲームやけどな。もしもの時は、こっちの勢力が力貸したるで」

 

「……はぁ?」

 

間の抜けた声が、誰のものとも分からないまま部室に落ちた。

リアスだけでなく、そこにいた全員が一斉に固まる。

 

「いきなり何を言っているの、あなたは」

 

「いやいや、戸惑うのは分かるで?」

平子は肩をすくめる。

「せやけどなぁ、実はちょっと前に、うちの王様とディオドラが軽〜くトラブル起こしてもうてな」

 

「トラブルって……」

 

その言葉で、空気が変わった。

全員の脳裏に浮かぶのは、少し前のディオドラの態度。

アーシアを命の恩人だと持ち上げながら、兵藤を露骨に見下していたあの視線。

好意的に思える要素は、正直ひとつもなかった。

 

「……どうやら察してくれたみたいやな」

平子は、皆の表情を見て満足そうに頷く。

「そういうことや」

 

「確かに、それを聞けば少しは分かるけど……だからと言って、あなた達を」

 

「信頼できへん、やろ?」

被せるように平子が言う。

「まぁ、その気持ちは分かるわ。分かるけどなぁ」

 

リアスは腕を組んだまま言い切る。

 

「当たり前でしょう。紅丸本人が姿を見せず、あなたの言葉だけで信用しろなんて」

 

「うわぁ、手厳しいなぁ」

平子は苦笑しつつも、どこか楽しそうだった。

「せやったら、一つだけ。秘密、教えたろか」

 

「秘密?」

 

部室の全員が、ほぼ同時に首を傾げる。

 

「実はな。この中に一人だけおるんや」

平子は指を一本立てる。

「うちの王様と“素顔で”会ったことある奴。大ヒントやで」

 

「えっ!? それって、どういう……」

 

「ヒントはここまでや」

平子はひらひらと手を振る。

「それが信頼の証、っちゅうことで。今度、主と一緒に顔出させてもらうわ」

 

「えっ、ちょっ――!」

 

その声を最後まで聞くことなく、平子の姿はふっと消えた。

まるで最初から存在していなかったかのように。

 

沈黙。

 

「……部長。本当に、信用できるんですか?」

 

小猫が、控えめに尋ねる。

 

「分からないわ」

リアスは即答した。

「でも、どちらにしても様子見は必要ね。敵でも、味方でも」

 

その言葉に、部員達は静かに頷いた。

知らないままでは、戦えない。

それだけは、全員が理解していた。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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