サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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嘘つきと暴走 Ⅶ

観客席に走ったざわめきは、歓声ではなかった。

それは、違和感に気づいた者たちの、遅れて噴き出したざわめきだった。

 

「……おい」

 

平子が、声を落として言う。

その視線の先、ディオドラ陣営の背後に――一つ、また一つと、淡紫色の魔方陣が浮かび上がっていく。

 

「多すぎやろ。あれ」

 

「……ああ」

 

拙者も、思わず立ち上がりかけていた。

 

魔方陣の形は、ディオドラの使う系統とは微妙に違う。

文様が古い。刻印が荒い。

そして何より――“開き方”が、明らかに強引だった。

 

「旧魔王派の陣やな」

 

平子が、笑わずに言った。

 

「しかも、結構本気のやつや。

 あれ、試合の演出ちゃうで。

 結界そのものを“戦場”に変えるつもりや」

 

次の瞬間。

魔方陣の中心から、異形の影が一体、二体と姿を現した。

観客席が一気に騒然となる。

リアス陣営の布陣が、即座に戦闘配置へと切り替わるのが、遠目にも分かった。

 

「……なるほどな」

 

平子が、低く呟く。

 

「ディオドラは“駒”や。

 本命は、あの陣を投げ込んだ連中やな」

 

「禍の団か」

 

「ほぼ確定やろ」

 

平子は帽子の縁を指で押さえ、目を細めた。

 

「旧魔王派の術式を借りて、レーティング・ゲームの中に戦場を仕込む。

 勝敗の裏で、勢力の実験。

 あいつ、思ったよりずっと深いとこまで踏み込んどるで」

 

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で、何かが静かに決まった。

 

拙者は、もう一度フィールドを見つめる。

リアスの指示が飛び、兵藤たちが必死に陣形を整えている。

だが、突然割り込んだ異物に、完全に対応しきれてはいない。

 

「……ここまでだな」

 

「お?」

 

平子が、ちらりとこちらを見る。

 

拙者は、紅丸の仮面の奥で、静かに息を整えた。

 

「これ以上、見ているだけでは済まない。

 あれは“試合”ではない。

 街を巻き込む前に、止める」

 

「ほう。

 観測者やめて、介入者に戻るんか」

 

「一時的にな」

 

拙者は、観客席の縁に手をかけた。

 

「ディオドラではない。

 狙うべきは、陣を開いた側だ」

 

平子は、少しだけ目を細め――すぐに、いつもの軽い調子に戻った。

 

「ええやん。

 ほな、役割分担やな」

 

そのときだった。

 

背後から、軽やかな拍手の音。

 

「やれやれ。観客席で戦争会議とは、なかなか大胆だね」

 

振り返ると、そこにいたのは――アザゼルだった。

いつもの白衣姿で、にやにやと笑いながら立っている。

 

「状況は見た。

 旧魔王派の術式だ。結界の管理権限も、少し弄られてる」

 

「転移できるか」

 

拙者が即座に問う。

 

「できるとも。ただし――」

 

アザゼルは、平子と拙者を交互に見て、にやりと笑った。

 

「二人一緒は無理だ。

 干渉が多すぎてね。別々に飛ばす」

 

平子が、すぐに口を開く。

 

「なら、俺を敵陣の真ん中に放り込んでや」

 

「ほう?」

 

「陣を開いとる連中、内側からひっくり返したる。

 あいつら、後ろに回り込まれるの一番嫌いやからな」

 

拙者は頷いた。

 

「なら、拙者はリアス陣営へ合流する。

 前線を立て直す」

 

アザゼルは、満足そうに手を打つ。

 

「決まりだな。

 じゃあ――行くぜ、二人とも」

 

平子が、こちらを振り返り、にっと笑う。

 

「紅丸。

 先に派手に荒らしとくから、そっちは安心して守りに専念し」

 

「無茶はするな」

 

「それ、俺の台詞やで」

 

次の瞬間、足元の空間が歪んだ。

 

光が弾け、視界が一瞬で反転する。

 

平子の姿が、闇に溶けるように消え――

同時に、拙者の身体は、別の座標へと引きずり込まれていった。

 

――戦場の只中へ。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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