サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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北欧で共同戦線 Ⅵ

「次に狙われる可能性が高い場所があります」

そう言って彼女が示したのは、駒王町のビル。

 

「……ここ?」

絶花が小さく眉を寄せる。

「ええ。結界の“縫い目”が薄い。襲撃者は、強い扉じゃなくて弱い継ぎ目を選びます」

ロスヴァイセの口調は丁寧なのに、言っていることは戦場の判断そのものだ。

 

俺は頷いた。

「行くぞ。黒江も呼ぶ」

 

少し歩いた先、空気が変わった。

視界の端に“霧のような影”が滲み、次の瞬間には黒江残月が立っていた。隣には相変わらず無表情のゾヴァラス。

黒江は俺を見て、声を低くする。

 

「……北欧は、まだ諦めてない」

「諦める理由がないからな」

俺が返すと、黒江は一瞬だけ目を細めた。褒めているのか睨んでいるのか分からない、いつもの顔だ。

 

ロスヴァイセが小さく会釈した。

「黒江残月さん。協力、感謝します」

黒江は返事の代わりに、視線だけで肯定した。

 

沈黙のまま進みかけて、黒江がぽつりと吐いた。

「……人外は敵だ」

 

言葉が落ちた瞬間、絶花の肩がこわばった。

ロスヴァイセは顔色を変えない。ただ、呼吸が一拍だけ浅くなる。護衛としての警戒だ。

 

俺は歩みを止めた。

「極端だな」

黒江は立ち止まり、夜の方を見て言う。

「極端でいい。人間を惑わす存在は排除する。それが正しい」

 

「じゃあ聞く」

俺は黒江の横顔に向けて言葉を投げた。

「お前の相棒の“宇宙人”は何だ。あれも人外だろ」

 

黒江の眉が微かに動いた。

「……ゾヴァラスは違う。あいつは人を守るために戦う」

 

「守るために戦うなら、人外でも味方になる」

俺は淡々と言う。

「それ、悪魔にも天使にも当てはまる。妖怪にも当てはまる。つまり――“種族”じゃなくて“意志”の話だ」

 

黒江が、初めて真正面から俺を見る。

「……お前は、人外に優しすぎる」

 

「優しいんじゃない。分類が雑なのが嫌いなだけだ」

俺は肩をすくめる。

「人外って箱を作った瞬間、便利になる。殴っていい理由が手に入る。で、殴る側は気持ちよくなる。危険だ」

 

黒江の口が、わずかに開いたまま止まった。

言い返そうとして、言葉が見つからない顔だ。

 

ロスヴァイセが慎重に割って入る。

「……差し出がましいですが。北欧でも、味方と敵を“種族”だけで決めることはありません」

 

絶花が小さく頷いた。

「太郎の言い方は偉そうだけど、言ってることは……筋は通ってる」

「偉そうは余計だ」

「事実だよ」

 

黒江はゆっくりと息を吐いた。

「……俺は」

その声が、少しだけ揺れた。

「俺は、人外に家族を奪われた。だから“人外は敵”だと決めた」

 

俺は何も言わない。ここは口を挟む場面じゃない。

黒江自身に言わせた方が、ずっと効く。

 

黒江は続ける。

「……でも、ゾヴァラスは例外にした。守るから、味方にした」

指先が、無意識に握られている。

「……それって」

 

黒江の視線が落ちた。

自分の言葉に、自分で刺されたみたいに。

 

「……俺も、差別してたのか」

 

その一言は、弱さじゃない。

むしろ、今の黒江にとって一番痛い“理解”だ。誇り高い奴ほど、自分の矛盾を認めるのは難しい。

 

俺は一歩だけ近づいて、低く言った。

「気づけたなら上等だ。矛盾を抱えたまま戦え。世界は綺麗に割れない」

 

黒江は目を閉じる。

「……まだ納得はしていない」

「それでいい」

「だが、今はロキを止める」

「利害一致だな」

「ああ」

 

ゾヴァラスは無言のまま、影のように立っている。

ロスヴァイセは安堵と緊張が混ざった顔で、歩き出す合図を出した。

「急ぎましょう。次の襲来は、こちらです」

 

俺たちは再び歩き出した。

目的地は同じでも、地図の読み方は違う。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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