サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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妖と宙のレーティング・ゲーム Ⅸ

黒江は、ゆっくりとこちらを見る。

宇宙人が作り出した空間の光が、彼の輪郭の縁だけを薄く撫でる。

ディープシャドウギャラクシーの闇は“揺らぎ”ではなく“密度”としてそこにあって、立っているだけで圧が掛かる。

俺の周囲に吐き出し続けている力の膜が、じわりと反応した。

ぶつかれば火花が散る、そんな予感だけが先に走る。

 

「アースウォーカー、無限に湧き上がる力のコントロール。それを先程のラザボーの戦闘方法を見て、考えたな」

 

声は淡々としているのに、針の先みたいに鋭い。

黒江は“答え”を欲しがっているんじゃない。

俺の反応から、どこまで確信しているかを確かめに来ている。

その視線を受けて、俺は肩をすくめるように息を吐いた。

 

「さぁな、どうだろうねぇ」

 

既にこちらが参考にした力の正体を理解した。

けれど、俺はあえて、はぐらかす。

隠すためじゃない。

ここで全部を“言葉”にした瞬間、戦いが説明に引きずられる気がしたからだ。

戦いは、先に身体で語る。

 

「確かに脅威ではあるが、そのコントロールは未だに不完全だろう。そして、その力のコントロールを行いやすくする為に使用しているのが、そのヨーヨーだろう」

 

指摘の精度が高すぎて、思わず笑いそうになる。

黒江の言葉は冷静なのに、俺の背中にはじわりと汗が滲んだ。

不完全――その通りだ。

完全なら、こんな“吐き出し続ける”みたいな綱渡りはしていない。

それでも、今は崩れていない。

崩れていないなら、踏み続ける。

 

「まぁ、見ていたら、分かるか」

 

そうしながらも、俺はヨーヨーを動かしながら、既に全てがバレている事も考えて告げる。

指先で糸の張りを確かめ、手首を小さく返す。

ヨーヨーは小さな円を描き、静かに戻ってくる。

その“戻り”の感触が、今の俺の生命線だ。

 

「簡単に吸い寄せる力を蒼、吹き飛ばす力を赫。まぁこんな感じかな。切り替えは俺の手元になければ、出来ないけどな。さっきの防御も同じく」

 

言い終えた瞬間、空気が張り詰めた。

自分で弱点を口にするのは、刃を握った手を相手に見せるのと同じだ。

なのに口が止まらない。

止める必要がない、とも思っている。

知られた上で勝てるなら、それが“制御した力”の証明になる。

 

「・・・そのような事を言っても良いのか」

 

黒江の目が細くなる。

警戒というより、試すような睨み。

踏み込めば踏み込むほど危険になると分かっていても、踏み込まずにはいられない目だ。

俺は笑う。

挑発ではなく、覚悟の形として。

 

「さぁね、むしろ、知ったからヤバい事もあるんじゃないのか?」

 

そうして、不敵な笑みを浮かべる。

言葉の裏で、ヨーヨーの重心をわずかに整える。

“手元にないと切り替えできない”――だからこそ、手元から離す瞬間は短く、正確に。

その一点に集中するだけで、視界が研ぎ澄まされていく。

 

「・・・確かにな、その情報を聞けば、そのヨーヨーだけに意識を向ける。普通ならば、そうだが」

 

黒江は構える。

闇が凝縮し、脚に、腕に、肩に、じわりと力が集まっていく。

動き出す前から“圧”が来る。

俺の周囲の膜が波立ち、足元の見えない床が微かに軋むように感じた。

 

「お前がそれを想定していない訳がない!」

 

その叫びと同時に、黒江の身体が弾けた。

一直線――なのに、途中で角度が変わる。

ただ速いだけじゃない。

次の一手を“見せない”踏み込みだ。

それを見た瞬間、俺の腕が先に動いた。

 

同時に俺はヨーヨーを真っ直ぐと黒江に向けて、投げる。

糸が鳴るように張り、ヨーヨーが鋭く飛ぶ。

ヨーヨーの色は蒼。

蒼い光が尾を引き、空間の暗さに細い線を刻んだ。

 

すぐに黒江は、その攻撃から逃れるように逃げる。

跳ねる。捻る。滑る。

“蒼”の軌道を避ける動きは完璧で、まるで最初から読んでいたみたいだった。

しかし、これは攻撃ではない。

ヨーヨーから発する引き寄せる力を起点にする場所に投げる為。

 

俺は、それに引き寄せられ、こちらに迫る黒江に向かって、蹴る。

踏み込む足に力を集め、腰を回し、蹴りを叩き込む。

衝突の瞬間、膜が弾けるように震え、足裏から腕まで痺れが走った。

当たった感触はある。

だが黒江の体勢は簡単には崩れない。

 

「ぐっ!」

 

その短い呻きが、逆に怖かった。

痛みがあるのに、動きが止まらない。

黒江は後退しながらも、次の踏み込みの準備をもう終えている。

俺は一息で距離をずらす。

同時に後ろに下がりながら、ヨーヨーを手元に戻して、赫へと切り替えて、それを足下へ投げる。

 

赫の色がぱっと燃えるように変わる。

落とした瞬間、床が突き返すみたいな反発が来た。

そのまま、ヨーヨーから発する吹き飛ばす力で俺は跳ぶ。

空間を蹴る。

身体が軽くなるというより、押し上げられる。

反動の勢いが、背中から風みたいに抜けていった。

 

真っ直ぐと、黒江は後ろに吹き飛ばされながらも、こちらを見る。

飛ばされたはずなのに、視線は切れない。

睨みじゃない。

“分析”の目。

次の一歩のための目だ。

 

「磁力のような使い方か」

 

「まぁ、そう言う事。単純だけど良いでしょ」

 

言いながら、息を整える。

胸の奥の熱はまだ増えている。

吐き出し続ける膜が、わずかに厚くなった気がした。

厚くなるほど守りは硬くなる。

同時に、扱い損ねた時の破裂も大きくなる。

だからこそ、雑には振れない。

 

そうしながらも、ヨーヨーを構える。

糸の感触を指先で確かめ、腕の角度を微調整する。

次は、黒江が“ヨーヨーだけを狙う”のか。

それとも“ヨーヨーを狙わせる”俺の意識をひっくり返しに来るのか。

「本当に厄介だな、君という存在は。だが、私も負けるつもりはない」

黒江の声は低く、静かだった。けれど、静かなほど怖い。ディープシャドウギャラクシーの闇が薄く脈打ち、周囲の“空間”そのものが引き絞られていく感覚がある。さっきまでの攻防が小手調べだったと言わんばかりに、黒江の重心がわずかに沈んだ。その一瞬で分かる。次は、当てに来る。こちらの“仕組み”ごと折りに来る。

 

「まぁ、俺もまだまだこの力には不慣れだし、一緒にいるジバニャン達もかなり負担があるからな。だからこそ」

口にしながら、喉の奥がわずかに乾く。力の膜は吐き出せている。だが吐き出せているだけで、綱渡りの上を走っているのは変わらない。呼吸が乱れた瞬間、集中が揺れた瞬間、その揺れが“爆ぜる”未来だけがやけに具体的に見える。だからこそ、細かい駆け引きは終わらせる。迷いを削るために、終わらせる。

 

それと共に、俺はメダルを構える。

指先が確かに熱い。メダルの縁が掌に食い込む。手の内側で、何かが“回転”を求めているみたいにざわつく。黒江の視線がメダルへ一瞬だけ落ち、次の瞬間には俺の肩、肘、手首の角度まで見抜くように戻ってくる。読まれている。なら、読ませた上で踏み抜く。

 

「一発で決まる」『アルティメット!レボリューション!エクスキューション!』

音声が鳴った瞬間、空気が裂けたように感じた。実際に裂けたのは“気配”だ。周囲に漂っていた重圧が、一度すべて剥がれて、次の形に張り直される。俺の体内から外へ吐き出している力が、一点に集まろうとする衝動を押し留め、ヨーヨーにだけ意識を落とす。手元。ここが切り替えの中枢だ。

 

「っ!」

メダルを装填すると共に、俺はそのままヨーヨーを瞬時に構える。

糸が張る。指先が震えるほどの張り。ここで遅れたら負ける。黒江の一歩は、こちらの“決め技の起点”を踏み潰すための一歩だ。だから、先に作る。蒼と赫を、ひたすら、交互に。握り、切り替え、投げ、戻し、また握る。高速で交互に切り替えるたびに、引き寄せる力と吹き飛ばす力が互いを噛み合わせ、反発し、反発のまま次の反発を呼ぶ。爆発の直前だけを、ずっと掴んでいるような感覚だった。

 

それは、蒼と赫。

それを高速で交互に切り替える事によって、生み出される膨大なエネルギーの塊。

蒼が空間を“寄せ”、赫が空間を“弾き”、その継ぎ目で熱が生まれる。見た目は球体に近いのに、内側では荒れた潮流みたいに渦を巻き、今にも掌から抜け落ちて暴発しそうだ。踏み込む黒江の影が、その塊の縁に触れる前に、こちらから押しつける。

 

「ダイナミック猫エンド」

言い切った瞬間、塊が前へ跳ねた。跳ねたというより“落ちた”。前方へ向けて、重さのある落下。空間を引きずり、空間の温度を変えながら、黒江へと迫る。あの闇が、受け止めるのか、逸らすのか、あるいは相殺するのか――判断の時間すら削る速度だ。

 

「っ!彗星ランス!」

俺の攻撃を前にして、瞬時に黒江はすぐにその手には彗星を思わせる槍を構え、こちらに放つ。

闇の中から引き抜かれたような槍は、先端だけが白く燃えている。投擲の動作は小さい。なのに、放たれた瞬間には“彗星”そのものの勢いで迫ってきた。空間を裂き、一直線にこちらの塊へ。衝突すれば、どちらが先に壊れるか分からない。黒江はそれを狙っている。こちらの制御の綱を、衝撃で切る気だ。

 

しかし。

「さっき引力の話をしただろ。これは究極の引力、つまりは」

口にするほど、塊の中心が静かになる。暴発寸前の暴風が、急に一点へ向かって吸い込まれるような静けさ。怖い静けさだ。静けさは、破壊の前触れでもある。俺は手元の感覚だけを信じて、最後の切り替えを握りしめた。

 

「まさかっ」

黒江の声がわずかに揺れる。見えたのだろう。彗星ランスが、こちらの塊へ“突き刺さる”はずの軌道を、途中で変えられていくのが。近づくほどに、槍の速度が狂い、重さが増し、進むはずの力が奪われていく。

 

「ブラックホール、これもまた無限だろ」

それと共に迫る彗星ランスを飲み込むと共に黒江の前で止まり。

止まった、というのが異様だった。あの勢いの槍が、黒江の眼前で“静止”する。静止しているのに、周囲の闇が引き寄せられている。闇が吸われ、光が歪み、距離の感覚が一瞬ほどける。黒江の足元の影が、ほんの少しだけ前に引かれたのが見えた。

 

「バン」

一言告げると共に、猫の鳴き声と共に、爆発する。

炸裂は派手ではない。派手でないのに、強い。空間が一拍遅れて震え、衝撃が輪になって広がる。闇の膜が裂け、裂け目から火花のような光が散り、黒江の身体が大きく押し戻される。踏ん張る力ごと持っていかれたみたいに、膝が僅かに沈み、次の一歩が出ない。戦意の糸が、ぷつりと切れる音が聞こえた気がした。

 

それと共に告げられたのは。

『勝者、アースウォーカー、よって、唯我太郎陣営の勝利』

音声が淡々としているほど、今の一瞬が“決着”だった事を突きつけてくる。俺は息を吐く。吐いた瞬間、全身が急に重くなる。切り替えを握り続けていた掌がじんじんと痛み、指先が熱を覚えている。黒江は倒れない。だが、構えが戻らない。視線だけがこちらを捉え、悔しさと納得が同居したような静かな沈黙が残った。

黒江の靴底が、宇宙空間の床――正確には“床のふりをしている何か”を軽く擦った。

さっきまでの殺気は引いた。けれど、緊張が消えたわけじゃない。勝敗が決まっても、距離は残る。むしろ、決まったからこそ残る。

 

「……見事だ、太郎」

黒江はゆっくり息を吐き、こちらの足元から視線を上げてくる。

「その力、制御できるのだな。まだ粗いが……粗いまま、折れない。そこが厄介だ」

 

「褒めてんのか、それ」

俺はヨーヨーを握った手を開き、指を一度だけ振る。熱が残っている。

視界の端で、影の粒子が落ち着くみたいに沈んでいった。ディープシャドウギャラクシーの名残が、黒江の肩から静かに剥がれ落ちる。

 

「褒めている」

黒江は即答した。

「私は“勝った者”より、“越えていく者”を評価する。君は、その方向を向いている」

 

その言い方が、妙に引っかかった。

勝ち負けの話じゃない。未来の話をしている。

 

「俺は、そんな立派なもんじゃない」

言いながら、心臓の奥が小さく反応する。

さっきまで暴れ回っていた“無限の圧”が、今は静かな熱になって残っている。

消えたわけじゃない。眠っただけだ。

 

黒江は、その沈黙の意味まで読み取ったように、少しだけ目を細めた。

 

「君は、自分を過小評価する癖がある」

「そうか?」

「そうだ。君は“背負っている”のに、“背負っていないふり”をする」

 

俺は笑いかけて、途中でやめた。

笑いで逃げると、黒江は余計に刺してくる。

 

「……言っておくけど、俺は黒江を信用してないからな」

「知っている」

黒江は肩をすくめる。

「そして私も、君を信用していなかった。今日までは」

 

その言い方が、まっすぐだった。

挑発でもない。勝者に媚びるでもない。

“変化”を認める声だ。

 

「じゃあ、今日からは?」

俺が言うと、黒江はほんの一瞬だけ口角を上げた。

 

「信じる」

短い。

短いのに、重い。

 

「……なんで」

聞き返すと、黒江は視線をそらさずに答える。

 

「可能性だ」

「可能性?」

「君は、自分の力を“誰かを踏み潰すため”に使っていない。君が勝つほど、私は怖くなるはずなのに……怖くならない。そこが異常だ」

 

俺は、反射的に言い返したくなる。

でも、喉に言葉が詰まる。

それは、否定できない。

 

黒江は続ける。

「君は危うい。危ういからこそ、君が折れれば多くが巻き添えになる。だから私は――君を敵として潰すより、君が折れないように見る方を選ぶ」

 

「……それ、監視って言わね?」

「監視だ」

黒江はあっさり認めた。

「同時に、賭けでもある。君が“人外は敵だ”と言わなかった。その一点に、私は賭ける」

 

胸の奥が、じわりと熱くなる。

嬉しいとかじゃない。

背中に杭を打たれたみたいな感覚だ。逃げ道を減らされた。

 

「俺は、調停者にはならない」

俺は言う。

「誰かの代表にもならない。観測して、集めて、必要なら止める。それだけだ」

 

黒江は頷いた。

「それでいい。君が“正義”を名乗れば、君は壊れる。君はそういう器ではない」

 

言い方はきつい。

でも、不思議と腹は立たなかった。

黒江は俺を持ち上げない。

だから、信用できる。

 

「……じゃあ、俺も一個だけ言う」

俺は視線を上げる。

「黒江、お前も変われる。さっきの戦いで、分かった」

 

黒江の瞳が一瞬だけ揺れた。

揺れたのに、すぐ元に戻る。

 

「……私は、越えたい」

「何を」

「自分を」

黒江は静かに言った。

「憎しみで走ってきた。走れた。だが、走るだけでは届かない場所がある。君はそこに触れている。だから――君を信じる」

 

言い終わると、黒江は踵を返した。

去る歩き方は、勝者にも敗者にも見えない。

ただ、次へ向かう者の足取りだった。

 

「また会おう、太郎」

「……ああ」

 

黒江が距離を取るにつれて、空間の緊張もほどけていく。

残るのは、勝利の実感ではなく、奇妙な予感だった。

 

“勝った”のに終わっていない。

“終わった”のに、始まっている。

 

俺はヨーヨーを握り直し、手の熱を確かめる。

無限はまだ、ここにいる。

俺の中じゃなく、俺の周囲に。

 

この先、信じると言った男の視線が、ずっと背中に刺さるのだろう。

それが嫌じゃないのが、一番厄介だった。




次章予告
 足音が、ない。
 踏み出したはずなのに、砂も石も鳴らない。見下ろせば、そこは地面ではなく、星の光が滲む虚空だった。

 学生服のまま、俺はゆっくりと歩いている。裾が重力を忘れたように揺れ、黒髪がわずかに浮く。息を吸う。冷たさも熱もない。代わりに、胸の奥だけが静かに脈打つ。

 腰に下げた異形の銃が、わずかに光を帯びる。地球では見たことのない造形。直線と曲線が絡み合い、金属とも鉱石ともつかない質感が宇宙の光を反射している。まだ名はない。ただ、そこに在る。

 視線を巡らせる。遠く、瞬く恒星。流れる星屑。その奥に、かすかな歪み。

 「……どこだ」

 低く呟く。
 獲物を探すのではない。守るべき何かを探している目だ。

 一歩、また一歩。
 荒波を進む獅子のように、迷いなく、静かに。

 星々の中で、少年は探している。
 盤面の、次の一手を。
視線の先、星屑の影が揺れる。

 歪みの奥に、黒い輪郭。複数。
 人型だが、顔は闇に沈んでいる。輪郭だけが浮かぶ。

 俺は足を止めた。
 腰の異形の銃が、微かに低く唸る。

 「あぁ、いたいた」

 軽く首を鳴らす。

 「お前らだな。勝手に不法侵入してきたのは。本当に」

 影たちがざわめく。
 無言のまま、武器を引き抜く。刃か、銃口か、判然としない光が瞬く。

 空気が張り詰める。

 だが、俺は崩れない。
 一歩、踏み出す。

 「この星が誰の国か、分かって来たんだろ」

 目が細まる。
 鋭い光が、宇宙の闇を裂く。

 「だったら――覚悟は出来ているんだろ」

 口元だけが上がる。
 挑発ではない。宣告だ。

 影たちが一斉に構える。
 星々の静寂が震える。

 俺は肩を回す。

 それでも、退く気配はない。

 「ここは、俺の盤面だ」

 静かに、腰へ手を伸ばす。

 影たちの腕が一斉に振り上がる。

 閃光。

 銃声とも爆音ともつかない衝撃が宇宙を裂いた。
 無数の光弾が太郎を呑み込み、視界が白に塗り潰される。

 星々が掻き消える。

 静寂。

 その中心で、声が落ちる。

 「……蒸着」

 次の瞬間、光が収束する。

 白の奔流を切り裂いて立っていたのは、もう学生服の少年ではなかった。

 深い蒼を帯びた装甲。夜の海を思わせる重厚なネイビー。
 その縁をなぞるように走る、冷たいブルーシルバーのフレーム。
 胸部中央には円環状のコアが淡く脈打ち、蒼光が静かに流れている。

 バイザーが煌めく。
 鋭い光が闇を貫く。

 装甲の表面を流れる細い発光ラインが、呼吸と同期するように明滅した。

 影たちの放った光弾は、装甲に触れた瞬間、霧のように消えていく。

 一歩、踏み出す。
 宇宙に、確かな足跡が刻まれるかのような存在感。

 右手に握られた異形の銃が蒼く輝く。
 地球では決して見られない造形。直線と曲線が融合し、銃口の奥に光が渦巻く。

 ゆっくりと構える。

 その動きに無駄はない。
 余裕も、焦りもない。

 ただ、確信だけがある。

 蒼の装甲が、静かに星を映していた。

 銃口をゆるく持ち上げる。
 構えは自然体。肩の力は抜けている。

 ため息ひとつ。

 「あぁ……宇宙警察でただ一人、地球所属の宇宙刑事だ」

 気怠そうに言う。
 まるで名乗るのも面倒だと言わんばかりに。

 だが、その足は一歩も退いていない。

 バイザーの奥、両眼が鋭く光る。

 蒼い閃光が走り、宇宙の闇を切り裂く。

 影たちがわずかに後ずさる。

 銃口が正面を捉える。
 照準は揺れない。

 「つまりは――この星は俺の王国だ」

 胸部の円環が、深く脈打つ。

 蒼光が装甲を走る。

 「俺の星で勝手はさせないぞ、侵略者」

 最後の言葉は低い。
 怒鳴らない。叫ばない。

 宣告。

 宇宙が静まる。

 次の瞬間、銃口の奥に光が収束する。

「俺は宇宙刑事ギャバンキングだ」

【新章・宇宙刑事編・絶賛設定製作中】

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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