サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
黒江は、ゆっくりとこちらを見る。
宇宙人が作り出した空間の光が、彼の輪郭の縁だけを薄く撫でる。
ディープシャドウギャラクシーの闇は“揺らぎ”ではなく“密度”としてそこにあって、立っているだけで圧が掛かる。
俺の周囲に吐き出し続けている力の膜が、じわりと反応した。
ぶつかれば火花が散る、そんな予感だけが先に走る。
「アースウォーカー、無限に湧き上がる力のコントロール。それを先程のラザボーの戦闘方法を見て、考えたな」
声は淡々としているのに、針の先みたいに鋭い。
黒江は“答え”を欲しがっているんじゃない。
俺の反応から、どこまで確信しているかを確かめに来ている。
その視線を受けて、俺は肩をすくめるように息を吐いた。
「さぁな、どうだろうねぇ」
既にこちらが参考にした力の正体を理解した。
けれど、俺はあえて、はぐらかす。
隠すためじゃない。
ここで全部を“言葉”にした瞬間、戦いが説明に引きずられる気がしたからだ。
戦いは、先に身体で語る。
「確かに脅威ではあるが、そのコントロールは未だに不完全だろう。そして、その力のコントロールを行いやすくする為に使用しているのが、そのヨーヨーだろう」
指摘の精度が高すぎて、思わず笑いそうになる。
黒江の言葉は冷静なのに、俺の背中にはじわりと汗が滲んだ。
不完全――その通りだ。
完全なら、こんな“吐き出し続ける”みたいな綱渡りはしていない。
それでも、今は崩れていない。
崩れていないなら、踏み続ける。
「まぁ、見ていたら、分かるか」
そうしながらも、俺はヨーヨーを動かしながら、既に全てがバレている事も考えて告げる。
指先で糸の張りを確かめ、手首を小さく返す。
ヨーヨーは小さな円を描き、静かに戻ってくる。
その“戻り”の感触が、今の俺の生命線だ。
「簡単に吸い寄せる力を蒼、吹き飛ばす力を赫。まぁこんな感じかな。切り替えは俺の手元になければ、出来ないけどな。さっきの防御も同じく」
言い終えた瞬間、空気が張り詰めた。
自分で弱点を口にするのは、刃を握った手を相手に見せるのと同じだ。
なのに口が止まらない。
止める必要がない、とも思っている。
知られた上で勝てるなら、それが“制御した力”の証明になる。
「・・・そのような事を言っても良いのか」
黒江の目が細くなる。
警戒というより、試すような睨み。
踏み込めば踏み込むほど危険になると分かっていても、踏み込まずにはいられない目だ。
俺は笑う。
挑発ではなく、覚悟の形として。
「さぁね、むしろ、知ったからヤバい事もあるんじゃないのか?」
そうして、不敵な笑みを浮かべる。
言葉の裏で、ヨーヨーの重心をわずかに整える。
“手元にないと切り替えできない”――だからこそ、手元から離す瞬間は短く、正確に。
その一点に集中するだけで、視界が研ぎ澄まされていく。
「・・・確かにな、その情報を聞けば、そのヨーヨーだけに意識を向ける。普通ならば、そうだが」
黒江は構える。
闇が凝縮し、脚に、腕に、肩に、じわりと力が集まっていく。
動き出す前から“圧”が来る。
俺の周囲の膜が波立ち、足元の見えない床が微かに軋むように感じた。
「お前がそれを想定していない訳がない!」
その叫びと同時に、黒江の身体が弾けた。
一直線――なのに、途中で角度が変わる。
ただ速いだけじゃない。
次の一手を“見せない”踏み込みだ。
それを見た瞬間、俺の腕が先に動いた。
同時に俺はヨーヨーを真っ直ぐと黒江に向けて、投げる。
糸が鳴るように張り、ヨーヨーが鋭く飛ぶ。
ヨーヨーの色は蒼。
蒼い光が尾を引き、空間の暗さに細い線を刻んだ。
すぐに黒江は、その攻撃から逃れるように逃げる。
跳ねる。捻る。滑る。
“蒼”の軌道を避ける動きは完璧で、まるで最初から読んでいたみたいだった。
しかし、これは攻撃ではない。
ヨーヨーから発する引き寄せる力を起点にする場所に投げる為。
俺は、それに引き寄せられ、こちらに迫る黒江に向かって、蹴る。
踏み込む足に力を集め、腰を回し、蹴りを叩き込む。
衝突の瞬間、膜が弾けるように震え、足裏から腕まで痺れが走った。
当たった感触はある。
だが黒江の体勢は簡単には崩れない。
「ぐっ!」
その短い呻きが、逆に怖かった。
痛みがあるのに、動きが止まらない。
黒江は後退しながらも、次の踏み込みの準備をもう終えている。
俺は一息で距離をずらす。
同時に後ろに下がりながら、ヨーヨーを手元に戻して、赫へと切り替えて、それを足下へ投げる。
赫の色がぱっと燃えるように変わる。
落とした瞬間、床が突き返すみたいな反発が来た。
そのまま、ヨーヨーから発する吹き飛ばす力で俺は跳ぶ。
空間を蹴る。
身体が軽くなるというより、押し上げられる。
反動の勢いが、背中から風みたいに抜けていった。
真っ直ぐと、黒江は後ろに吹き飛ばされながらも、こちらを見る。
飛ばされたはずなのに、視線は切れない。
睨みじゃない。
“分析”の目。
次の一歩のための目だ。
「磁力のような使い方か」
「まぁ、そう言う事。単純だけど良いでしょ」
言いながら、息を整える。
胸の奥の熱はまだ増えている。
吐き出し続ける膜が、わずかに厚くなった気がした。
厚くなるほど守りは硬くなる。
同時に、扱い損ねた時の破裂も大きくなる。
だからこそ、雑には振れない。
そうしながらも、ヨーヨーを構える。
糸の感触を指先で確かめ、腕の角度を微調整する。
次は、黒江が“ヨーヨーだけを狙う”のか。
それとも“ヨーヨーを狙わせる”俺の意識をひっくり返しに来るのか。
「本当に厄介だな、君という存在は。だが、私も負けるつもりはない」
黒江の声は低く、静かだった。けれど、静かなほど怖い。ディープシャドウギャラクシーの闇が薄く脈打ち、周囲の“空間”そのものが引き絞られていく感覚がある。さっきまでの攻防が小手調べだったと言わんばかりに、黒江の重心がわずかに沈んだ。その一瞬で分かる。次は、当てに来る。こちらの“仕組み”ごと折りに来る。
「まぁ、俺もまだまだこの力には不慣れだし、一緒にいるジバニャン達もかなり負担があるからな。だからこそ」
口にしながら、喉の奥がわずかに乾く。力の膜は吐き出せている。だが吐き出せているだけで、綱渡りの上を走っているのは変わらない。呼吸が乱れた瞬間、集中が揺れた瞬間、その揺れが“爆ぜる”未来だけがやけに具体的に見える。だからこそ、細かい駆け引きは終わらせる。迷いを削るために、終わらせる。
それと共に、俺はメダルを構える。
指先が確かに熱い。メダルの縁が掌に食い込む。手の内側で、何かが“回転”を求めているみたいにざわつく。黒江の視線がメダルへ一瞬だけ落ち、次の瞬間には俺の肩、肘、手首の角度まで見抜くように戻ってくる。読まれている。なら、読ませた上で踏み抜く。
「一発で決まる」『アルティメット!レボリューション!エクスキューション!』
音声が鳴った瞬間、空気が裂けたように感じた。実際に裂けたのは“気配”だ。周囲に漂っていた重圧が、一度すべて剥がれて、次の形に張り直される。俺の体内から外へ吐き出している力が、一点に集まろうとする衝動を押し留め、ヨーヨーにだけ意識を落とす。手元。ここが切り替えの中枢だ。
「っ!」
メダルを装填すると共に、俺はそのままヨーヨーを瞬時に構える。
糸が張る。指先が震えるほどの張り。ここで遅れたら負ける。黒江の一歩は、こちらの“決め技の起点”を踏み潰すための一歩だ。だから、先に作る。蒼と赫を、ひたすら、交互に。握り、切り替え、投げ、戻し、また握る。高速で交互に切り替えるたびに、引き寄せる力と吹き飛ばす力が互いを噛み合わせ、反発し、反発のまま次の反発を呼ぶ。爆発の直前だけを、ずっと掴んでいるような感覚だった。
それは、蒼と赫。
それを高速で交互に切り替える事によって、生み出される膨大なエネルギーの塊。
蒼が空間を“寄せ”、赫が空間を“弾き”、その継ぎ目で熱が生まれる。見た目は球体に近いのに、内側では荒れた潮流みたいに渦を巻き、今にも掌から抜け落ちて暴発しそうだ。踏み込む黒江の影が、その塊の縁に触れる前に、こちらから押しつける。
「ダイナミック猫エンド」
言い切った瞬間、塊が前へ跳ねた。跳ねたというより“落ちた”。前方へ向けて、重さのある落下。空間を引きずり、空間の温度を変えながら、黒江へと迫る。あの闇が、受け止めるのか、逸らすのか、あるいは相殺するのか――判断の時間すら削る速度だ。
「っ!彗星ランス!」
俺の攻撃を前にして、瞬時に黒江はすぐにその手には彗星を思わせる槍を構え、こちらに放つ。
闇の中から引き抜かれたような槍は、先端だけが白く燃えている。投擲の動作は小さい。なのに、放たれた瞬間には“彗星”そのものの勢いで迫ってきた。空間を裂き、一直線にこちらの塊へ。衝突すれば、どちらが先に壊れるか分からない。黒江はそれを狙っている。こちらの制御の綱を、衝撃で切る気だ。
しかし。
「さっき引力の話をしただろ。これは究極の引力、つまりは」
口にするほど、塊の中心が静かになる。暴発寸前の暴風が、急に一点へ向かって吸い込まれるような静けさ。怖い静けさだ。静けさは、破壊の前触れでもある。俺は手元の感覚だけを信じて、最後の切り替えを握りしめた。
「まさかっ」
黒江の声がわずかに揺れる。見えたのだろう。彗星ランスが、こちらの塊へ“突き刺さる”はずの軌道を、途中で変えられていくのが。近づくほどに、槍の速度が狂い、重さが増し、進むはずの力が奪われていく。
「ブラックホール、これもまた無限だろ」
それと共に迫る彗星ランスを飲み込むと共に黒江の前で止まり。
止まった、というのが異様だった。あの勢いの槍が、黒江の眼前で“静止”する。静止しているのに、周囲の闇が引き寄せられている。闇が吸われ、光が歪み、距離の感覚が一瞬ほどける。黒江の足元の影が、ほんの少しだけ前に引かれたのが見えた。
「バン」
一言告げると共に、猫の鳴き声と共に、爆発する。
炸裂は派手ではない。派手でないのに、強い。空間が一拍遅れて震え、衝撃が輪になって広がる。闇の膜が裂け、裂け目から火花のような光が散り、黒江の身体が大きく押し戻される。踏ん張る力ごと持っていかれたみたいに、膝が僅かに沈み、次の一歩が出ない。戦意の糸が、ぷつりと切れる音が聞こえた気がした。
それと共に告げられたのは。
『勝者、アースウォーカー、よって、唯我太郎陣営の勝利』
音声が淡々としているほど、今の一瞬が“決着”だった事を突きつけてくる。俺は息を吐く。吐いた瞬間、全身が急に重くなる。切り替えを握り続けていた掌がじんじんと痛み、指先が熱を覚えている。黒江は倒れない。だが、構えが戻らない。視線だけがこちらを捉え、悔しさと納得が同居したような静かな沈黙が残った。
黒江の靴底が、宇宙空間の床――正確には“床のふりをしている何か”を軽く擦った。
さっきまでの殺気は引いた。けれど、緊張が消えたわけじゃない。勝敗が決まっても、距離は残る。むしろ、決まったからこそ残る。
「……見事だ、太郎」
黒江はゆっくり息を吐き、こちらの足元から視線を上げてくる。
「その力、制御できるのだな。まだ粗いが……粗いまま、折れない。そこが厄介だ」
「褒めてんのか、それ」
俺はヨーヨーを握った手を開き、指を一度だけ振る。熱が残っている。
視界の端で、影の粒子が落ち着くみたいに沈んでいった。ディープシャドウギャラクシーの名残が、黒江の肩から静かに剥がれ落ちる。
「褒めている」
黒江は即答した。
「私は“勝った者”より、“越えていく者”を評価する。君は、その方向を向いている」
その言い方が、妙に引っかかった。
勝ち負けの話じゃない。未来の話をしている。
「俺は、そんな立派なもんじゃない」
言いながら、心臓の奥が小さく反応する。
さっきまで暴れ回っていた“無限の圧”が、今は静かな熱になって残っている。
消えたわけじゃない。眠っただけだ。
黒江は、その沈黙の意味まで読み取ったように、少しだけ目を細めた。
「君は、自分を過小評価する癖がある」
「そうか?」
「そうだ。君は“背負っている”のに、“背負っていないふり”をする」
俺は笑いかけて、途中でやめた。
笑いで逃げると、黒江は余計に刺してくる。
「……言っておくけど、俺は黒江を信用してないからな」
「知っている」
黒江は肩をすくめる。
「そして私も、君を信用していなかった。今日までは」
その言い方が、まっすぐだった。
挑発でもない。勝者に媚びるでもない。
“変化”を認める声だ。
「じゃあ、今日からは?」
俺が言うと、黒江はほんの一瞬だけ口角を上げた。
「信じる」
短い。
短いのに、重い。
「……なんで」
聞き返すと、黒江は視線をそらさずに答える。
「可能性だ」
「可能性?」
「君は、自分の力を“誰かを踏み潰すため”に使っていない。君が勝つほど、私は怖くなるはずなのに……怖くならない。そこが異常だ」
俺は、反射的に言い返したくなる。
でも、喉に言葉が詰まる。
それは、否定できない。
黒江は続ける。
「君は危うい。危ういからこそ、君が折れれば多くが巻き添えになる。だから私は――君を敵として潰すより、君が折れないように見る方を選ぶ」
「……それ、監視って言わね?」
「監視だ」
黒江はあっさり認めた。
「同時に、賭けでもある。君が“人外は敵だ”と言わなかった。その一点に、私は賭ける」
胸の奥が、じわりと熱くなる。
嬉しいとかじゃない。
背中に杭を打たれたみたいな感覚だ。逃げ道を減らされた。
「俺は、調停者にはならない」
俺は言う。
「誰かの代表にもならない。観測して、集めて、必要なら止める。それだけだ」
黒江は頷いた。
「それでいい。君が“正義”を名乗れば、君は壊れる。君はそういう器ではない」
言い方はきつい。
でも、不思議と腹は立たなかった。
黒江は俺を持ち上げない。
だから、信用できる。
「……じゃあ、俺も一個だけ言う」
俺は視線を上げる。
「黒江、お前も変われる。さっきの戦いで、分かった」
黒江の瞳が一瞬だけ揺れた。
揺れたのに、すぐ元に戻る。
「……私は、越えたい」
「何を」
「自分を」
黒江は静かに言った。
「憎しみで走ってきた。走れた。だが、走るだけでは届かない場所がある。君はそこに触れている。だから――君を信じる」
言い終わると、黒江は踵を返した。
去る歩き方は、勝者にも敗者にも見えない。
ただ、次へ向かう者の足取りだった。
「また会おう、太郎」
「……ああ」
黒江が距離を取るにつれて、空間の緊張もほどけていく。
残るのは、勝利の実感ではなく、奇妙な予感だった。
“勝った”のに終わっていない。
“終わった”のに、始まっている。
俺はヨーヨーを握り直し、手の熱を確かめる。
無限はまだ、ここにいる。
俺の中じゃなく、俺の周囲に。
この先、信じると言った男の視線が、ずっと背中に刺さるのだろう。
それが嫌じゃないのが、一番厄介だった。
次章予告
足音が、ない。
踏み出したはずなのに、砂も石も鳴らない。見下ろせば、そこは地面ではなく、星の光が滲む虚空だった。
学生服のまま、俺はゆっくりと歩いている。裾が重力を忘れたように揺れ、黒髪がわずかに浮く。息を吸う。冷たさも熱もない。代わりに、胸の奥だけが静かに脈打つ。
腰に下げた異形の銃が、わずかに光を帯びる。地球では見たことのない造形。直線と曲線が絡み合い、金属とも鉱石ともつかない質感が宇宙の光を反射している。まだ名はない。ただ、そこに在る。
視線を巡らせる。遠く、瞬く恒星。流れる星屑。その奥に、かすかな歪み。
「……どこだ」
低く呟く。
獲物を探すのではない。守るべき何かを探している目だ。
一歩、また一歩。
荒波を進む獅子のように、迷いなく、静かに。
星々の中で、少年は探している。
盤面の、次の一手を。
視線の先、星屑の影が揺れる。
歪みの奥に、黒い輪郭。複数。
人型だが、顔は闇に沈んでいる。輪郭だけが浮かぶ。
俺は足を止めた。
腰の異形の銃が、微かに低く唸る。
「あぁ、いたいた」
軽く首を鳴らす。
「お前らだな。勝手に不法侵入してきたのは。本当に」
影たちがざわめく。
無言のまま、武器を引き抜く。刃か、銃口か、判然としない光が瞬く。
空気が張り詰める。
だが、俺は崩れない。
一歩、踏み出す。
「この星が誰の国か、分かって来たんだろ」
目が細まる。
鋭い光が、宇宙の闇を裂く。
「だったら――覚悟は出来ているんだろ」
口元だけが上がる。
挑発ではない。宣告だ。
影たちが一斉に構える。
星々の静寂が震える。
俺は肩を回す。
それでも、退く気配はない。
「ここは、俺の盤面だ」
静かに、腰へ手を伸ばす。
影たちの腕が一斉に振り上がる。
閃光。
銃声とも爆音ともつかない衝撃が宇宙を裂いた。
無数の光弾が太郎を呑み込み、視界が白に塗り潰される。
星々が掻き消える。
静寂。
その中心で、声が落ちる。
「……蒸着」
次の瞬間、光が収束する。
白の奔流を切り裂いて立っていたのは、もう学生服の少年ではなかった。
深い蒼を帯びた装甲。夜の海を思わせる重厚なネイビー。
その縁をなぞるように走る、冷たいブルーシルバーのフレーム。
胸部中央には円環状のコアが淡く脈打ち、蒼光が静かに流れている。
バイザーが煌めく。
鋭い光が闇を貫く。
装甲の表面を流れる細い発光ラインが、呼吸と同期するように明滅した。
影たちの放った光弾は、装甲に触れた瞬間、霧のように消えていく。
一歩、踏み出す。
宇宙に、確かな足跡が刻まれるかのような存在感。
右手に握られた異形の銃が蒼く輝く。
地球では決して見られない造形。直線と曲線が融合し、銃口の奥に光が渦巻く。
ゆっくりと構える。
その動きに無駄はない。
余裕も、焦りもない。
ただ、確信だけがある。
蒼の装甲が、静かに星を映していた。
銃口をゆるく持ち上げる。
構えは自然体。肩の力は抜けている。
ため息ひとつ。
「あぁ……宇宙警察でただ一人、地球所属の宇宙刑事だ」
気怠そうに言う。
まるで名乗るのも面倒だと言わんばかりに。
だが、その足は一歩も退いていない。
バイザーの奥、両眼が鋭く光る。
蒼い閃光が走り、宇宙の闇を切り裂く。
影たちがわずかに後ずさる。
銃口が正面を捉える。
照準は揺れない。
「つまりは――この星は俺の王国だ」
胸部の円環が、深く脈打つ。
蒼光が装甲を走る。
「俺の星で勝手はさせないぞ、侵略者」
最後の言葉は低い。
怒鳴らない。叫ばない。
宣告。
宇宙が静まる。
次の瞬間、銃口の奥に光が収束する。
「俺は宇宙刑事ギャバンキングだ」
【新章・宇宙刑事編・絶賛設定製作中】
次回の王は
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妖怪王
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機械王
-
怪獣王
-
幻想王