サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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今回から新連載する宇宙刑事編もまたこれまでとは違う雰囲気にしていきたいと考えています。
また、ギャバン・キングのみの特殊能力に関しては、せっかくならと書かせて貰いました。
また、家臣の募集を行っていますので、皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=337030&uid=45956


その宇宙刑事は自称王

 鏡の前でネクタイを締める。きつい。喉元が落ち着かない。

 肩を回すと、生地がわずかに軋んだ。

 

「……やっぱ慣れねぇな」

 

 袖を引き、ジャケットの裾を整える。学生服のほうが動きやすい。だが今日は違う。ここは金でできた巣だ。金の匂いを纏って入るしかない。

 

 エレベーターが地下へ沈む。

 数字が減るたび、空気が重くなる。

 

 扉が開いた瞬間、光と音が押し寄せた。

 

 チップの乾いた音。

 ルーレットの回転。

 笑い声。拍手。

 その奥に、負けた人間の浅い呼吸。

 

 床は黒く磨かれ、天井は低い。視線が絡む。値踏みする目、泳ぐ目、濁った目。

 

 場違いだな。

 

 だが、嫌いじゃない。

 

「到着。内部はどうだ」

 

 耳の奥で通信が震える。落ち着いた声が返る。

 

『中央卓に異常偏差。勝率が固定されています。地球技術では解析不能です』

 

「説明不能、か」

 

 視線を滑らせる。

 

 ディーラーの指先が、ほんの一瞬止まった。

 勝った男の笑いが固い。

 負けた女の肩が、わずかに震える。

 

『感情波形が減衰しています。回収反応を検知』

 

「やってるな」

 

 革靴が床を打つ。

 中央へ向かう。

 

 誰も止めない。スーツは嘘をつかない。金の匂いを纏っている限り、疑われない。

 

「俺、似合ってるか?」

 

『違和感は軽微です』

 

 口の端が上がる。

 

「優しいな」

 

 卓の縁に指を置く。冷たい。

 ルーレットが回る。針が跳ねる。数字が止まる。

 

 止まり方が、綺麗すぎる。

 

「この星でイカサマは高くつくぞ」

 

 顔を上げる。

 

 ディーラーが、ゆっくりと笑った。

 

 卓の前に立つと、ディーラーが静かに一礼した。動きが滑らかすぎる。無駄がない。

 

「おや、初めてのお客様ですね。珍しい」

 

 声は柔らかい。だが目が笑っていない。

 

「まぁな」

 

 チップを指で弾く。軽い音が鳴る。

 

「それより、結構儲かってるようだな」

 

 周囲の歓声が一段上がる。勝者が肩を叩かれている。負けた男は俯いたまま、動かない。

 

「さぁ、時の運ですから」

 

 ディーラーの指先が、ルーレットへ伸びる。

 

 運、か。

 

 鼻を掠める香水の匂い。その奥に、焦げたような熱。場の空気が、ほんの少し歪んでいる。

 

「俺、運は悪くねぇ」

 

 チップを置く。

 

 赤でも黒でもない。数字。

 

 ディーラーの目が、わずかに細まった。

 

「では、ご武運を」

 

 ルーレットが回る。

 

 回転は滑らかだ。針の音が一定すぎる。客の鼓動が揃っていく。妙に静かだ。

 

 おかしいな。

 

 針が跳ねる。止まる。

 

 周囲がどよめく。

 

 当たりだ。

 

 だが、手応えがない。

 

「……へぇ」

 

 チップが押し出される。積み上がる。周囲の視線が集まる。

 

 ディーラーが微笑む。

 

「お強いですね」

 

 違う。

 

 これは、強さじゃない。

 

 仕組まれている。

 

 卓の縁を指でなぞる。冷たいはずなのに、奥で何かが脈打っている。

 

 「もう一回だ」

 

 視線を上げる。

 

 針が跳ねた。

 

 音が止まる。視線が一点に集まる。

 

 外れだ。

 

 置いた数字から、わずかにずれた場所で止まっている。ほんの一目。届かない距離。

 

 周囲が小さく息を吐く。誰かが笑った。

 

「惜しかったですね」

 

 ディーラーが微笑む。指先が滑らかにチップを回収する。

 

「もう一勝負しますか?」

 

 声は変わらない。柔らかい。だが、奥で何かが脈打っている。

 

 卓の上に残ったチップを指で弾く。音が軽い。さっきより、場の空気が重い。

 

「……やめとくか」

 

 そう言いながら、卓の縁を軽く叩く。

 

 ほんの一瞬、振動が走る。遅れて、盤面の奥で波が返る。

 

 やっぱりな。

 

 視線を上げる。ディーラーの瞳の奥、わずかな光の揺れ。

 

「時の運、って言ったな」

 

「ええ」

 

「便利だな。自分の都合で止められる運ってのは」

 

 周囲がざわつく。客の何人かが振り向く。

 

 ディーラーの笑みが、ほんの少しだけ薄くなった。

 

「何のことでしょう?」

 

 ルーレットに手を伸ばそうとする。

 

 その手首を、視線で止める。

 

「さっきの回転、二度とも同じ癖が出てた。針が止まる直前に、微妙に減速してる。盤面の下に仕込んだ何かが、タイミングを合わせてる」

 

 卓の下を指差す。

 

「地球製じゃねぇな。ここの電磁波、変な歪み方してる」

 

 コーギー参謀の声が、低く響く。

 

『波形一致。外部干渉装置を確認』

 

 静まり返る。

 

 ディーラーの指が止まる。瞬きが消える。

 

「……お詳しいですね」

 

「詳しいんじゃない。ムカつくだけだ」

 

 卓を叩く。強くはない。だが音が響く。

 

「この星で、勝手に運命をいじるな」

 

 周囲の照明が、わずかに明滅した。

 

 ディーラーの口角が、ゆっくりと上がる。

 

 空気が、冷える。

 

 ディーラーが指を鳴らす。

 

 音は小さい。だが、すぐに足音が重なる。黒服が卓の周囲を囲む。動きは揃っている。目は冷たい。

 

「お客様」

 

 さっきまでの柔らかい声色に、わずかな硬さが混じる。

 

「なかなかに鋭い方ですが……こういう場でそれを晒すのは、いかがなものでしょう」

 

 忠告の形をしている。脅しだ。

 

 周囲の客が視線を逸らす。椅子が引かれる音。出口へ向かう足取りが速い。

 

 肩をすくめる。

 

「別に、晒したいわけじゃねぇ」

 

 懐に手を入れる。黒服の視線が一斉に動く。

 

 拳銃を警戒している。

 

 取り出したのは、小さな手帳。

 

 銀の紋章が刻まれている。

 

 卓の上に置く。照明を受けて、静かに光る。

 

 「そりゃ、鋭いさ」

 

 視線を上げる。

 

 黒服の動きが止まる。

 

「宇宙警察。地球でただ一人のな」

 

 空気が、変わる。

 

 ディーラーの笑みが消える。わずかに目が細まる。

 

「……宇宙、警察?」

 

「極秘扱いだ。だが、お前は例外だ」

 

 指で手帳を押す。卓の中央へ滑らせる。

 

「各惑星で違法賭博。感情エモルギーの不正収集。銀河連邦警察より指名手配中」

 

 黒服の一人が、わずかに後ずさる。

 

 ディーラーの口角が、今度は違う角度で上がった。

 

「なるほど。なるほど……」

 

 照明が一瞬、落ちる。

 

 卓のルーレットが、ひとりでに回り始めた。

 

 「面白いお客様だ」

 

 その声が、少しだけ低くなる。

 

 ディーラーの笑みが、ゆっくりと裂けた。

 

 肌が波打つ。頬が歪む。目の奥が、黒く沈む。

 

 顔だけだ。

 

 首から下は、人間のまま。

 

「……宇宙警察、でしたか」

 

 声が二重に重なる。低い音が、喉の奥で擦れる。

 

 周囲の黒服たちも同じだ。

 顔の皮が裂け、異形の面が覗く。目が赤く光る。だがスーツはそのまま。

 

 銃が抜かれる。

 

 金属音が連なる。

 

 客はすでにいない。出口は閉じられている。

 

 「化けの皮、薄いな」

 

 ネクタイを緩める。息が楽になる。

 

「地球人の顔、もう少し練習したほうがいい」

 

 銃口が一斉にこちらを向く。

 

「この場で消えていただきましょう」

 

 ディーラー――いや、犯罪者の指が動く。

 

 引き金。

 

 火花が散る。

 

 弾丸が空気を裂く。

 

 それでも、動かない。

 

 片手でジャケットの裾を払う。

 

「ここで撃つのは感心しねぇな」

 

 弾丸がすれ違う。卓の縁が砕ける。チップが宙に舞う。

 

「客商売だろ?」

 

 口の端が上がる。

 

「俺の星で好き勝手するのは、もっと感心しねぇ」

 

 足を一歩、前に出す。

 

 床が、わずかに軋む。

 

 囲まれている。

 

 卓の上に転がっていたコインをつまむ。

 

 軽い。

 

「最後にもう一勝負、ってのはどうだ」

 

 そう言って、親指で弾いた。

 

 金属音が鳴る。

 

 コインが宙に跳ねる。

 

 全員の視線が、ほんの一瞬だけ上を向く。

 

 その瞬間。

 

 懐に手を滑らせる。

 

 冷たい感触。

 

 キズナエモルギアを押し込む。

 

『キズナ! チャージ!』

 

 装填音が胸の奥で響く。

 

 コインが頂点に達する。

 

 引き金に指をかける。

 

「蒸着」

 

 引いた。

 

 光が爆ぜる。

 

 銃声より速い。

 

 弾丸より速い。

 

 蒼い粒子が空間を埋める。スーツが形成される。腕、脚、胸部。王環が脈打つ。

 

『キズナ!』

 

『アクティベート!』

 

 コインが落ちる。

 

 床に当たる前に、片手で受け止めた。

 

 装甲の指先が、金属を弾く。

 

 照明が反射する。

 

 犯罪者たちの銃口が揺れている。

 

「……なに、を」

 

 顔だけが歪んだ怪物が、息を詰まらせる。

 

 蒼いバイザー越しに視線を返す。

 

 ゆっくりと、ギャバリオントリガーを構えた。

 

「運は、もう終わりだ」

 

 《蒸着! それはギャバンシステム発動のコマンドだ。では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!》

 

  粒子が収束する。腕を包み、脚を覆い、胸部へ流れ込む。

 

  《蒸着コマンドを受けて臨界点を越えたエモルギーがトリガー内に凝縮されたギャバリオン粒子と融合。僅か1ミリ秒でコンバットスーツへと投射形成され、蒸着を完了するのだ!》

 

  光が刃のように収束する。

 

  『キズナ!アクティベート!』

 

  王環が脈打つ。

 

 蒼が静まり、照明が戻る。

 

 コインが落ちてくる。

 

 装甲の指で受け止める。

 

 銃口が揺れている。

 

 バイザー越しに視線を向ける。

 

「――続き、やるか?」

 

 銃口が揺れている。

 

 引き金にかかった指が、わずかに震える。

 

 ゆっくりと息を吐く。

 

「さて――」

 

 トリガーを持ち上げる。

 

「王として、お前達を全員、逮捕だ!」

 

 言い終わる前に撃つ。

 

 閃光。

 

 蒼い光弾が一直線に走る。

 

 最前列の警備員の銃身を撃ち抜く。火花が散る。爆ぜた金属片が床を滑る。

 

 続けざまに二発。

 

 肩。膝。武器だけを正確に撃ち抜く。

 

 倒れる。

 

 悲鳴。

 

 残りが引き金を引く。

 

 銃声が重なる。

 

 火花が飛ぶ。

 

 弾丸が迫る。

 

 トリガーを横に振る。

 

 蒼い閃光が弾丸を弾く。床に金属音が跳ねる。

 

「遅い」

 

 一歩踏み込む。

 

 至近距離。

 

 撃つ。

 

 銃を持つ手が吹き飛び、怪物の顔が歪む。

 

 照明が揺れる。ルーレットが勝手に回る。

 

 ディーラーが後退る。

 

 囲んでいたはずの陣形が崩れる。

 

「地球で暴れるなら、もっと腕を上げてこい」

 

 銃口を中央へ向ける。

 

 撃つ。

 

 蒼い閃光が一直線に走る。

 

 だが、当たらない。

 

 ディーラーの顔が歪んだまま、わずかに首を傾ける。弾丸が頬をかすめるはずだった軌道が、寸前で逸れた。

 

「確率は、私のものです」

 

 指先でコインを弾く。

 

 金属音。

 

 その一枚が、空気を裂いた。

 

 速い。

 

 銃弾以上だ。

 

 トリガーを横に振る。蒼光で弾く。火花が散る。

 

 だが、二枚、三枚。

 

 連射。

 

 軌道が正確すぎる。逸れない。迷わない。

 

 装甲に衝撃が走る。

 

 胸部に火花。肩に火花。膝に火花。

 

 後ろへ下がる。

 

 床が削れる。靴底が焦げる。

 

「必ず、当たる」

 

 ディーラーの声が低く響く。

 

「賭けは成立しました。あなたに命中する、という賭けが」

 

 銃を撃つ。

 

 今度は直撃するはずの一発。

 

 当たる。

 

 だが、こちらに。

 

 衝撃。

 

 腹部装甲に衝突。火花が弾ける。視界が揺れる。

 

 ありえない。

 

 弾道が、書き換わっている。

 

 コインが弾丸のように迫る。

 

 受ける。弾く。だが軌道が曲がる。追いかけてくる。

 

 床を蹴る。

 

 後退。

 

 火花を散らしながら、距離を取る。

 

 呼吸は乱れていない。

 

 だが、理解する。

 

 これは“技術”じゃない。

 

 固定されている。

 

「……なるほど」

 

 トリガーを構え直す。

 

 コインが迫る。

 

 弾丸の軌道。逸れない。迷いもない。

 空気を裂く音が、耳の奥に刺さる。

 

 撃ち落とす。火花が散る。

 

 だが、次が来る。

 

 二枚。三枚。連射。

 胸部装甲に直撃。金属が震え、蒼い火花が弾けた。

 

 衝撃が走る。

 

 それでも、足は止まらない。

 

「……固定、か」

 

 腹部にもう一撃。装甲が軋む。

 後退しかけた足を、強く踏み締める。

 

「当たるってんなら――」

 

 もう一枚が肩を打つ。火花が流れ落ちる。

 

「当たれ」

 

 一歩、前へ。

 

 床が沈む。

 

 王環が脈打つ。蒼が揺らぐ。

 だが、崩れない。

 

「お前の確率が、どれだけ当たっても」

 

 懐へ手を伸ばす。

 

 エモルギアを握る。熱を帯びている。

 

 ディーラーの目がわずかに開く。

 

「倒れるかよ」

 

 エモルギアを掲げる。

 

 一瞬、視線を落とす。

 

 思い浮かぶのは、戦い抜いた青い背中。

 

「ブルービートさん――」

 

 呼吸を整える。

 

「力、借ります!」

 

 トリガーへ装填。

 

「投影!」

 

 《ブルービート・データ! オーバーレイ!》

 

 蒼い装甲の上に、さらに深い青が重なる。

 甲殻がせり上がる。肩が厚みを帯びる。拳が重く沈む。

 

 迫るコイン。

 

 今度は、避けない。

 

 正面から受ける。

 

 衝撃。

 

 金属と金属がぶつかる鈍い音。

 握る。

 

 指が軋む。

 コインが歪む。

 

 砕ける。

 

 破片が床に散る。

 

 もう一枚が胸に当たる。火花が散る。

 それでも、止まらない。

 

 距離が詰まる。

 

 ディーラーの顔が引きつる。

 

「固定されてるのは、命中だけだろ」

 

 一歩。

 

「俺が倒れるかどうかまでは」

 

 さらに一歩。

 

「固定してねぇ」

 

 拳を握る。

 

 空気が重く沈む。

 

 《投影、それは平行世界で戦う鋼の戦士達の力を重ねる事で擬似的に再現する能力である。では、投影プロセスをもう1度見てみよう》

 

 胸部の王環が強く脈打つ。

 

 トリガーが唸る。

 

 《投影コマンドを受けて、臨界点を超えたエモルギーがトリガー内に凝縮したギャバリオン粒子と融合。僅か1ミリ秒でコンバットスーツに投影装着され、投影を完了するのだ!》

 

 蒼い装甲の表面に、鋭い甲殻のラインが浮かび上がる。

 肩がせり上がり、腕部が厚みを増す。

 

 衝撃が伝わる。

 

 重い。

 

 だが、頼もしい。

 

 《この投影は能力の擬似的再現だが、ギャバリオン粒子の消耗が激しく、投影維持は99.9秒しか保つ事が出来ない》

 

 胸部表示が一瞬だけ点滅する。

 

 99.9。

 

 短い。

 

 なら、その中で決める。

 

 拳を握る。

 

 コインが再び迫る。

 

 今度は、弾かない。

 

 真正面から受け止める。

 

 甲殻が軋む。火花が弾ける。

 

 だが、押し返す。

 

 距離を詰める。

 

 時間は、削れていく。

 

 拳を握り締めたまま、距離を詰める。

 

 火花が散る。

 

 装甲に当たったはずのコインが、砕け、床に転がる。

 

 ディーラーの視線が揺れた。

 

「……何を、した」

 

 足元に散った金属片。

 

 次の一枚を弾こうとして、手が止まる。

 

 指先に残るのは、薄く削れた数枚だけ。

 

 視線が横へ走る。

 

 床。

 

 テーブル。

 

 ポケット。

 

 もう、ない。

 

 俺は歩を止めない。

 

 投影装甲がきしむ。時間は削れている。

 

 だが、構わない。

 

「どうした」

 

 一歩。

 

 ディーラーが後ずさる。

 

 顔だけが歪んだまま、目が見開かれる。

 

「確率は固定されているはずだ……」

 

 視線が周囲を泳ぐ。

 

 コインが、ない。

 

 固定できる弾が、ない。

 

 俺は、肩を鳴らす。

 

「どうやら」

 

 拳をゆっくり持ち上げる。

 

「掛け金は無くなったようだな」

 

 王環が低く光る。

 

 ディーラーの喉が鳴る。

 

 固定できる未来が、消えた。

 

 装甲の青がゆっくりと剥がれていく。

 

 肩の厚みが沈み、拳の重さが軽くなる。

 

 視界の端に表示されていた数値が消える。

 

 投影、解除。

 

 胸部に残る蒼が、静かに脈打つ。

 

「ブルービートさん、ありがとうございます」

 

 息を整える。

 

 ディーラーは動けない。

 

 足元に散った金属片。賭け金は尽きている。

 

 俺はゆっくりと右手を伸ばす。

 

「さて」

 

 腰から引き抜く。

 

 蒼く長い刃が、空気を裂いて現れる。

 

「王の判決を下す」

 

 ギャバリオンブレードが、低く唸る。

 

 ディーラーの喉が鳴る。

 

「ギャバリオンブレード……!」

 

 一歩、踏み込む。

 

 床が弾ける。

 

「さぁ祭りだ、祭り!」

 

 刃が閃く。

 

「ド派手に!」

 

 縦に。

 

 横に。

 

 斜めに。

 

 残光が幾筋も空間を走る。

 

 音が遅れて追いかけてくる。

 

 ディーラーの視界が追いつかない。

 

 確率を固定する暇もない。

 

 蒼の軌跡が交差し、空間を切り裂く。

 

 止まる。

 

 俺は、すでに背後に立っている。

 

 ディーラーは、まだ立っている。

 

 ゆっくりと振り向こうとする。

 

 その瞬間。

 

 ギャバリオンブレードを一度、静かに振るう。

 

 空気が鳴る。

 

「これにて、1件落着」『じゃないわ、いくら非殺傷までにしているとはいえ、やり過ぎだ』

 

俺がそうしていると、相棒から声が聞こえる。

 

「まぁ良いじゃないか、まっ、俺はまだまだ怜慈先輩に届かないかな」

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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