サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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邂逅 Case2

 放課後の校舎裏は、人通りが少ない。

 

 自販機の脇、古びたダンボール箱が一つ置かれている。

 

 その中から、ふさり、と尻尾が揺れた。

 

「……おい」

 

 箱の縁から、短い足がひょいと乗り出す。

 

 現れたのは、どこにでもいそうなコーギーだった。

 

 丸みを帯びた体つき。低い胴体。太い脚。

 毛並みは橙と白がくっきり分かれ、胸元はふわりと豊かだ。

 黒く湿った鼻がわずかに動き、耳は大きく、ぴんと立っている。

 

 瞳は濃い琥珀色。

 

 陽の光を受けて、やけに澄んでいる。

 

 ——見た目はかなり可愛らしいコーギーだが、中身はかなりの駄目駄目叔父さん刑事。時々、ダンボールの中に入っておりなぜか妙に似合っている。

 

 今も箱の中で丸まったまま、こちらを見上げている。

 

『遅いぞ、王様』

 

 頭の奥に低い声が響く。

 

 渋い。重い。完全に見た目と一致しない。

 

「第一声が文句かよ」

 

 レオルドは前足を伸ばし、箱からゆっくり出てくる。

 

 足取りはのそのそとしているが、無駄がない。

 

 首輪は赤革。小さな銀のプレートが揺れる。

 それは宇宙警察の識別コードを内蔵した通信装置だ。

 

 尻尾がゆっくり揺れる。

 

『学生生活は満喫しているようだな』

 

「お前こそ、その姿で威厳あると思ってるのか」

 

『威厳は声で保っている』

 

 確かに、その声だけ聞けばベテラン刑事だ。

 

 だが目の前には、段ボールが妙に似合う犬がいる。

 

 レオルドは小さく鼻を鳴らした。

 

『任務だ。今回の標的は、惑星間違法エモルギー取引の中継役。地球に潜伏している』

 

「場所は」

 

『駒王市内。擬態は人間型。確率操作系の補助能力を持つ可能性あり』

 

 瞳が細くなる。

 

 さっきまでのだらけた空気が、消える。

 

 ——これだ。

 

 酒と女に弱く、給料の大半を遊びに使う駄目叔父さん。

 

 だが、罪の匂いを嗅ぐと目が変わる。

 

『逃がすな。今回は背後に本部が絡んでいる』

 

「珍しく真面目だな」

 

『私は常に真面目だ』

 

 その足元には、ダンボールがまだある。

 

 どう見ても、似合っている。

 

 俺は小さく息を吐く。

 

「行くぞ、レオルド」

 

『言われずともだ、太郎』

 

 可愛らしい外見と、渋い声。

 

 このアンバランスが、妙に頼もしい。

 

 レオルドは自販機の影に腰を落ち着けたまま、前足で地面を軽く掻いた。

 

『さっさと動くぞ、太郎』

 

「まだ詳細も聞いてないだろ」

 

『詳細は動きながらでも話せる』

 

 わずかに耳が揺れる。

 

『……そろそろ、金が入らないと酒も飲めないんだよ』

 

 一瞬、無言になる。

 

「駄目犬が」

 

『言うな。胸に刺さる』

 

「給料どこに消えてるんだよ」

 

『必要経費だ』

 

「どの辺が」

 

『交際費だ』

 

「女絡みか」

 

『否定はしない』

 

 尻尾が一度だけ揺れる。

 

 本当にどうしようもない。

 

 ——見た目は愛嬌の塊だが、中身は酒と女に弱い駄目叔父さん刑事。

 

 だが、その瞳が細くなる瞬間がある。

 

『今回の標的は“バイサー”』

 

 空気が変わる。

 

「原作データにあったあの宇宙人か」

 

『ああ。本来は流浪の戦闘種族だ』

 

 レオルドは地面に視線を落とし、静かに続ける。

 

『地球に漂着後、悪魔勢力に接触。転生悪魔として眷属化した』

 

「宇宙人が悪魔に?」

 

『この星なら珍しくない』

 

 淡々とした声だが、低く重い。

 

『問題はそこからだ。制御が効かなくなった』

 

「暴走か」

 

『エモルギー反応が異常値だ。眷属悪魔としての力と宇宙由来の因子が干渉している』

 

 琥珀色の瞳がこちらを射抜く。

 

『地球の悪魔側も手を焼いている。だが、宇宙由来の部分は我々の管轄だ』

 

「つまり共同案件ってわけか」

 

『そういうことだ、王様』

 

 軽口の調子は消えている。

 

『放置すれば、被害は広がる。罪は罪だ。事情があってもな』

 

「……自分のも含めてか」

 

 一瞬だけ、レオルドの耳が動いた。

 

『当然だ』

 

 短く、断言する。

 

『不正は見逃さない。それが警察だ』

 

 その声は、冗談を挟む余地がない。

 

 俺は小さく笑う。

 

「やっぱり真面目じゃねぇか」

 

『私は常に真面目だ』

 

 言いながら、ダンボールに後ろ足を引っ掛ける。

 

「駄目犬だろ」

 

『黙れ』

 

 だが瞳は鋭い。

 

『バイサーは既に二件の暴走を起こしている。次は抑えきれない可能性が高い』

 

「場所は」

 

『駒王市郊外。結界反応あり』

 

 俺は深く息を吸う。

 

「行くぞ、レオルド」

 

『ああ。金と正義、両方取り戻す』

 

「前者は知らん」

 

『冷たいな』

 

 尻尾が揺れる。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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