サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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邂逅 Case8

 路地に落ちた街灯の光が、石畳のひびを白く浮かび上がらせている。

 俺の前で、堕天使の翼がゆっくりと揺れた。羽根が擦れ合う音が、やけに大きく聞こえる。

 背中越しに、兵藤の荒い呼吸が伝わってきた。

 膝が石に当たる鈍い音も、はっきり分かる。

 

「な、なんで……俺を?」

 

 震えた声が背後から届く。

 驚きと恐怖が混ざった、情けないような、それでいて必死な響き。

 

 俺は振り向かない。

 装甲の内側で、肩をわずかに動かす。軽く息を吐く。

 

「一般人が危険人物に襲われてるんだったら、警察として守る」

 

 石畳を一歩踏む。

 靴底が擦れ、乾いた音が夜に広がる。

 

「何を当たり前の事を聞くんだ」

 

 自分で言っておきながら、少しだけ苦笑いが浮かぶ。

 王だの宇宙刑事だの、肩書きは色々あるが、結局はそれだけだ。

 

 目の前の堕天使が、翼を広げる。

 黒い羽根が空気を押し、冷たい風が頬を打つ。

 魔力の圧がじわりと押し寄せるが、俺の内側は静かだ。

 

「……魔力が、ない?」

 

 低い声が響く。

 

 そうだろうな。

 神器の煌めきも、悪魔の紋章も、何も見えないはずだ。

 

 だが堕天使の視線は揺れている。

 俺の装甲を測るように、警戒を強めている。

 

「だが、この圧は何だ」

 

 魔法陣は展開されない。

 それでも、距離は詰めない。

 

 俺はゆっくりとギャバリオントリガーを持ち上げる。

 銃口を向けるまでの動きは、あえて静かに。

 夜の空気が、刃物のように張りつめる。

 

「名を名乗れ」

 

 挑むような声。だが奥に混じる微かな緊張を、俺は聞き逃さない。

 

 名乗れない。

 ここで本当の名を出せば、日常が壊れる。

 

「名乗るほどのもんじゃない」

 

 装甲の奥で視線を細める。

 

「ギャバンだ」

 

 その言葉が落ちた瞬間、路地の空気が重く沈む。

 兵藤の息遣いが一段と荒くなり、堕天使の翼がぴたりと止まる。

 

 堕天使の目が決まった。

 

 迷いが消える。

 次の瞬間、翼が大きく広がり、魔法陣が足元に展開する。赤黒い光が石畳を這い、路地の影が揺らぐ。

 

「ならば、力で量る」

 

 空気が裂けた。

 

 矢のように圧縮された魔力が、一直線に俺へ飛ぶ。

 熱を帯びた衝撃が胸部装甲に直撃した。

 

 鈍い衝突音。

 

 だが、俺の視界は揺れない。

 

 衝撃は確かに伝わる。

 胸の内側で一瞬だけ重さが走る。だがそれだけだ。

 

 装甲表面を走った魔力が、火花のように散って消える。

 まるで硬い岩壁に叩きつけられた水滴のように、弾かれて終わる。

 

 足は一歩も動いていない。

 

 堕天使の目が見開かれる。

 

「……なに?」

 

 再び魔法陣が重なる。

 今度は数を増やす。槍の形を成した光が、連続で撃ち込まれる。

 

 衝撃が連続で装甲を打つ。

 

 金属音が夜に響く。

 だが貫かれない。削れない。焦げ跡すら浅い。

 

 胸部に手を当てる。

 

 装甲は熱を帯びているが、傷はない。

 このスーツは、ただの金属じゃない。

 

 エモルギーを臨界まで圧縮し、ギャバリオン粒子で投射形成されたコンバットスーツ。

 物理衝撃も魔力干渉も、構造ごと受け止める。

 

 堕天使が一歩、後退する。

 

「馬鹿な……悪魔の魔力だぞ」

 

 俺はゆっくりと首を鳴らす。

 

「悪いな」

 

 一歩踏み出す。

 石畳がひび割れ、衝撃が地面に落ちる。

 

「それ、効かねぇ」

 

 複眼の光がわずかに強まる。

 

 俺自身が硬いわけじゃない。

 守るために作られた鎧が、すべてを受け止めている。

 

 堕天使の翼がわずかに震える。

 

 魔力があるのに、届かない。

 

 その事実が、恐怖に変わる瞬間だった。 堕天使の目が決まった。

 

 迷いが消える。

 次の瞬間、翼が大きく広がり、魔法陣が足元に展開する。赤黒い光が石畳を這い、路地の影が揺らぐ。

 

「ならば、力で量る」

 

 空気が裂けた。

 

 矢のように圧縮された魔力が、一直線に俺へ飛ぶ。

 熱を帯びた衝撃が胸部装甲に直撃した。

 

 鈍い衝突音。

 

 だが、俺の視界は揺れない。

 

 衝撃は確かに伝わる。

 胸の内側で一瞬だけ重さが走る。だがそれだけだ。

 

 装甲表面を走った魔力が、火花のように散って消える。

 まるで硬い岩壁に叩きつけられた水滴のように、弾かれて終わる。

 

 足は一歩も動いていない。

 

 堕天使の目が見開かれる。

 

「……なに?」

 

 再び魔法陣が重なる。

 今度は数を増やす。槍の形を成した光が、連続で撃ち込まれる。

 

 衝撃が連続で装甲を打つ。

 

 金属音が夜に響く。

 だが貫かれない。削れない。焦げ跡すら浅い。

 

 胸部に手を当てる。

 

 装甲は熱を帯びているが、傷はない。

 このスーツは、ただの金属じゃない。

 

 エモルギーを臨界まで圧縮し、ギャバリオン粒子で投射形成されたコンバットスーツ。

 物理衝撃も魔力干渉も、構造ごと受け止める。

 

 堕天使が一歩、後退する。

 

「馬鹿な……悪魔の魔力だぞ」

 

 俺はゆっくりと首を鳴らす。

 

「悪いな」

 

 一歩踏み出す。

 石畳がひび割れ、衝撃が地面に落ちる。

 

「それ、効かねぇ」

 

 複眼の光がわずかに強まる。

 

 俺自身が硬いわけじゃない。

 守るために作られた鎧が、すべてを受け止めている。

 

 堕天使の翼がわずかに震える。

 

 魔力があるのに、届かない。

 

空気が張り詰める。

堕天使の羽が震え、黒い魔力が廃工場の鉄骨を軋ませた。

 

その気配より早く、腰部ユニットから青白い光が走る。

 

掌に落ちる感触。

冷たいはずの金属が、鼓動のように微かに震えていた。

 

ギャバリオンライトニング。

 

コンバットスーツと同質の粒子で再構成されたそれは、

触れた瞬間、装甲と一体化するように接続音を鳴らす。

 

「悪いな」

 

足元が砕ける。

 

地面を蹴った、というより、空間を滑った。

視界が線になる。

鉄骨の影が流れ、堕天使の瞳孔が開く。

 

次の瞬間には、もう目の前だ。

 

ライトニングの刃が展開。

青白い稲光が刃縁を走り、弧を描く。

 

斬撃。

 

金属と魔力がぶつかる音は、雷鳴より短い。

装甲を通じて伝わる衝撃は、硬い壁を殴った感触。

 

だが刃は止まらない。

 

「遅い」

 

電磁衝撃が爆ぜる。

稲光が堕天使の身体を貫き、翼を焼き、空間を焦がす。

 

白い閃光が廃工場を満たした。

 

光が引いた時、

堕天使は膝をつき、翼から煙を上げている。

 

装甲越しに、焦げた匂いがわずかに届く。

 

ライトニングは静かに放電を終え、青い残光だけを残した。

 

「雷ってのはな、避けられないんだよ」

 

一歩踏み出す。

床に残った焦げ跡が、稲妻の形を描いていた。

 

 

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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