サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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邂逅 Case9

焦げた魔力の匂いがまだ漂う中、赤い髪が夜風に揺れた。

 

堕天使の気配を辿るように現れた少女は、倒れ伏した影と兵藤、そして銀の装甲をまとう俺を静かに見渡す。その視線は鋭いが、無闇に踏み込むことはせず、空間ごと測るような間合いを保っていた。

 

「……イッセー、大丈夫?」

 

低く抑えた声が、張り詰めた空気をわずかに緩める。

 

兵藤がかすれた声で応じると、彼女は小さく息を吐き、次にこちらへと真っ直ぐ視線を向けた。紅い瞳の奥で魔力が淡く揺れ、いつでも展開できる構えを崩さないまま、それでも礼節を忘れない立ち姿で言葉を選ぶ。

 

「あなたが、どのような目的で動いたのかは分からないわ。けれど、うちのイッセーを助けたのは事実。そこは感謝するわ」

 

「律儀だな」

 

短く返すと、装甲越しに自分の声がわずかに反響した。

 

互いの立場はまだ曖昧だ。

 

礼の言葉と警戒の気配が同じ空気に混ざり、夜の静寂を薄く震わせていた。

瞳が細められる。

 

「宇宙刑事……そう言ったわね。それは何かしら。悪魔でも堕天使でもない、別の勢力の名?」

 

問いは穏やかだが、探るように空気を撫でる。魔力がわずかに揺れ、場の主導権を握ろうとする気配がにじんだ。

 

肩越しに堕天使を一瞥し、軽く首を鳴らす。

「さあな。ただの肩書きだ。治安を乱す奴を取り締まる、それだけだよ」

 

装甲の奥で苦笑を押し殺す。詳しく語れば波紋が広がる。宇宙刑事という存在は、まだこの星の表舞台に出すには早い。拘束済みの堕天使を床に滑らせ、リアスの足元へと静かに押し出す。

 

「そっちの管轄だろ。引き取ってくれ」

 

「待ちなさい――」

 

その声が届く前に、床を蹴る。

影の濃い梁へと跳び、鉄骨を踏み替え、壁を蹴って屋外へ抜ける。魔力の追跡を感じながらも、視線を交わさずに夜へ溶けた。

 

屋根の上に着地し、装甲の内部で短く息を吐く。

背後では赤い魔力が一瞬だけ閃いたが、追撃は来ない。リアスは堕天使を優先したのだろう。判断が早い。

 

「……借りは作らない主義でな」

呟き、蒸着解除の光が静かに散る。

 

制服姿に戻った手を見下ろす。

わずかに残る放電の感触が、さっきの対峙を思い出させる。あの紅い瞳は、ただの感謝では終わらない。いずれ必ず、真実を探りに来る。

 

それでも今は、距離を保つ。

宇宙刑事としての立場と、駒王学園の一生徒としての生活。その境界線は、まだ誰にも踏ませない。

 

スマホが震えた。

レオルドからの短い通知だ。

 

『派手にやったな、王様。後始末は任せとけ』

 

思わず小さく笑う。

夜風が頬を撫で、遠くで救急車の音が鳴った。

 

「さて……帰るか」

 

屋根から跳び降り、街灯の下へ。

影は、いつもの高校生のものに戻っていた。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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