サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
夜の帳に沈む教会は、外見だけなら静謐そのものだった。尖塔の影が月光を受けて長く伸び、色褪せたステンドグラスが淡く光を弾いている。その奥に潜む歪みを知っているのは、ここに集った俺たちだけだ。
「・・・さて、フェイト。情報としてはここで合っているか?」
耳元の通信に、落ち着いた声が返る。
「そのはずよ、目的は分かっているよね、太郎」
視線を正面に据えたまま、深く息を吸う。夜風が頬を撫で、潮の匂いが微かに混じる。
「教会に潜入し、エモルギアの回収。もしくは神器所有者の保護だよな」
「私もすぐに行くけど、先攻はお願い出来る」
わずかに口角を上げる。
「まぁ、先陣を切るのも、俺の役割だからな」
そうして、ドアを開く。
扉の向こうに広がったのは、石造りの床でも礼拝堂でもなかった。吹き抜ける強風が体を包み込み、視界が一気に開ける。俺は今、コスモギャバリオンに搭乗し、上空へと展開していた。機体は光学迷彩を展開し、夜空と同化している。地上の生命体はもちろん、通常の魔力探知でも捕捉は不可能だ。
「さて、それじゃ行くぜ!」
そのまま一歩踏み出す。足場を失った瞬間、重力が全身を引き込む。遥か上空から一直線に、教会の屋根へと落下する。
落下の風圧が耳を打つ中、腰からギャバリオントリガーを引き抜く。
「蒸着!」
光が身体を包み込み、瞬時に鋼の装甲が形成される。衝撃を受け止める重厚な感触と共に、視界が戦闘用に切り替わる。
だが、今回は正面突破ではない。
「ブルースワットさん!力、借ります!投影!」
《ショウ・データ!オーバーレイ!》
音声と共に、装甲の上へ別の戦術装備が重ねられる。ディクテイターが手に馴染み、センサー群が視界に展開する。魔力波形とエモルギー反応が色分けされ、地下へ続くラインが淡く浮かび上がった。
空中でパラシュートを展開し、落下速度を制御する。布が風を受け、衝撃を吸収する。屋根の影へと滑り込むように着地し、そのまま足音を殺して内部へ侵入する。
「よっと、さて」
石造りの廊下は静まり返り、蝋燭の炎が不自然に揺れている。バイザーに表示されるデータを確認しながら、足取りを速める。教会内部は偽装だ。地下から明確なエモルギア反応が上がっている。
「・・・地下か。さて」
呟いた直後、背後の空気が裂ける気配が走る。
「よっと」
「うわっと!?」
振り向きざまにディクテイターを構え、引き金を引く。スタン弾が背後の影を撃ち抜き、鈍い光が弾ける。
「おいおい、いきなり乱暴じゃないですか、お客さんよぉ」
黒い法衣を纏った男が、口元を歪めて立っている。手には光を凝縮したレーザーブレード。堕天使の光を加工した武器らしい。
「下品な神父には用はないんだよ」
「おいおい、釣れない事を言うんじゃねぇよ!!」
ブレードが唸りを上げて迫る。だが俺は一歩退き、時間を測る。投影の残り時間が静かに減っている。
「お前の相手をしている場合じゃないんだよ」
プラグローダを素早く展開する。
「おいおい、今、どこから取り出したんだよ」
「秘密だよ」
引き金を引くと、銃口から照明弾が弾け、狭い廊下を白光が満たす。続けざまに煙幕弾と音響弾を放つ。濃煙が視界を奪い、爆音が鼓膜を揺らす。
「きしゃぁぁぁ!?」
男の悲鳴が煙の中に消える。
「さて、先に進むか」
バイザーに映る地下へのルートを確認し、階段へと滑り込む。任務は排除ではない。回収と保護。それだけだ。
次回の王は
-
妖怪王
-
機械王
-
怪獣王
-
幻想王